成瀬浩介は青春を楽しむ


 残された成瀬と早田は最初、それなりにまじめに写真を撮っていた。


「心霊写真撮れてるのかなー」


 あちこちにカメラを向ける早田を、成瀬はしばらく無感情に眺めている。


「昼間だし、べつにそーいうの感じないし、なくね?」


「ナルっちは霊感ないじゃん」


「ばっか、オレだって、そーとーな修羅場体験済みよ? なあ、それより」


「もう、だめだって。やばいよ」


 露骨に性的な接触をしてくる成瀬に、早田の対応は形ばかりの拒絶。

 職員室だったこともある部屋の傾いた机に、男女の体重がかかってきしむ。


「最初からだったんだろ。……向井くんの趣味も、よーわからんけど」


 この男女2組を采配したのは向井だ。

 早田はやや侮蔑的に笑いながら、


「あいニャン? あはは、なんか想像できないよねー」


「桜木、女子人気、低そうだしな」


「うーん、なんかメンドーなんだよねー。……ちょっと、そこだめだって」


 ちちくりあう大学生たちの影に、黒いものが不自然にうごめく──。


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