第14話 喧嘩の末路

西の離れた教会の中で暴れまくる吸血鬼の双子と長身悪魔が戦闘を繰り広げられていた

レーアside

鎌の刃と長く尖り、赤く染る爪が強く重なりあう

よく顔を彼の顔を見れば狂ったように楽しそうな顔であった

「ほらほらぁぁ!!もっと力を見せろ!!」

ゼロが大きな声で言ってきた

我は彼を切り離す為、強く押し付けそのまま振り回し壁に突き落とす

柱が崩れゆく音が響き煙が立ち上る

大きな十字架の上で座りながらその様子を見ていたゼルが声をかける

「兄さん。僕の時間も残してよ?」

するとゼロは瓦礫の中で怒鳴る

「うるせぇ!!こいつは俺の獲物だつってんだろ!!」

聞く耳持たず

瓦礫を蹴飛ばしてどかし、壁キックをして一直線に飛び、鋭く長い爪を出して向かってくる

我は大鎌を構えて迎え撃つ

正直勝負はギリギリかもしれぬ

しかしだ

そもそもこやつらの連携がなっていない

これなら数分で終わるであろう

我が子には隠れてもらっている

見つからなければよいのだが──

「おらぁ!ぼさっとすんなぁ!!」

同時に長い爪と大鎌の刃が重なる

ガシャン!と強い音が鳴り響く

我は大鎌でやつを振り回しまた吹き飛ばそうとする

しかし背中から衝撃が走り我は少し離れたところまで吹き飛ばされた

もう1人のやつが我の背中に蹴りを入れたのか

「おい!邪魔すんじゃねぇぞ!ゼル!!」

そう怒鳴るゼロを見てゼルは呆れていた

「僕もやりたいんだよ。あと、兄さんは前に出すぎ」

そう言うとふたりが同時にこちらへと向かってきた

大きく赤い悪魔の羽を広げ飛んでくる

我は大鎌を素早く回し、我も突っ込む

お互い強くあたり飛んだまま膠着する

しかし2人分の力があってか押されそうだ

「さぁさぁ……どこまで持つのかねぇ」

ゼロはそう言ってニヤニヤとしながらこちらを見ていた

これは早く終わらせなければまずいな……

教会のせいで徐々に体力か削られる、どうにかして────


打開せねば


白狐side

教会の端っこにある正方形の木箱の後ろに隠れる

激しく戦闘が続き段々と増していく

相手にばれないよう…息を殺す

ちらりと木箱から顔を出すと、ははが押されているのが見えた

双子の吸血鬼が楽しそうにははを攻撃する

ははも反撃するけど、やはり場所が場所だ

息が切れて、足元も少しおぼつかない

怒りがこみ上げてくるが今は前に出てはならない

私が出れば戦闘の邪魔になる

どうにか力になれないだろうか…と思ったが

能力が付与されたところで使い道が一向にわからない

練習もなしに放り出されたからなぁ……


「いぐにすのばか……」


「見ぃ~つけたぁ~…」


後ろから声が聞こえ、背筋がゾッとする

先ほどまでははと戦っていたはずの吸血鬼の男が私の後ろに立っていた


──逃げなきゃ


そうは思っても体が動かず、言うことを聞かない

「我が子…!」

「よそ見しないでくれますか?」

もう1人の吸血鬼の男がそう言って容赦なくははを蹴り落とす

「かはッ…!」

壁に激突しその場に座り込むはは

目の前に居る吸血鬼が私に触れようとした


その瞬間


『触れるでない』

聞きなれた声

暖かい炎が私を囲う

「あっっっつ?!なんだこの炎。どっから出したんだお前」

炎が彼の手に当たり、熱がる

「……まさか…この子……あの力を借りて…?いやいや…そんな訳が……」

ははの相手をしていた吸血鬼が困惑しながらこちらを見た

しかしその炎はすぐに消えてしまう

「……早く消した方がいいよ兄さん。またやられたら元も子も無い」

「仕方ねぇ……そうするか」

呆れながら吸血鬼の男は私の頭をガシッと片手で掴み持ち上げる

じたばたと動かし抵抗するが相手の力が半端じゃない

「暴れんなチビ。狙いが定まらねぇだろうが」

長く鋭い爪が私の首へ目掛けて構える

ははも胸元に向けられ、力が残っておらず抵抗ができない

ただただ俯く


──もうみんなと会えないのかな


「お前たちはよくやった方だな。今までのヤツらはすぐ逃げたり、瞬殺だったりしてつまらなかったが…案外楽しかったぜ」

目の前の吸血鬼とははの方にいる吸血鬼が同時に刺そうとした


その瞬間──吸血鬼の二人に電撃が走る

バチバチと音を立て彼らに襲い掛かる

私を掴んでいた吸血鬼の手が広がり、私は地面に尻もちを着く



「我が同士に触れるな」


入口にて電気で出来ている腕を伸ばしているフロアの姿があった

双子の吸血鬼は一度私たちから離れ怒りを露わにする

「おい…誰だァ?邪魔した野郎はよォ……」

吸血鬼の兄がフロアに敵意を向ける 

「…まだいくつか気配がするよ……兄さん。もっと面倒なことになりそう」

呆れながら言う吸血鬼の弟

コツコツと足音が三つ

ははの近くにコルニクスさんとラケルタさんが近づいた

「……レーア殿。大丈夫か?」

コルニクスさんがははの前でしゃがみ、体調を見る

「ははは…お恥ずかしいところを……大丈…っっい…!」

相当攻撃されたせいか、ははの体は傷だらけ

少し触れただけで痛みが走る

「白狐さん…!大丈夫ですか?」

そんな中、ダンティーが私のところに駆け寄る

「……わたしはだいじょうぶ…だよぉー…」

私は、にへらと笑顔になる

しかし安心したのか眠気が襲ってきた

ダンティーは私を抱き抱え、笑顔で言う

「大丈夫です。私たちが守りますから」

私はついに眠りについてしまった


「…コルニクス。治せるか?」

「魔力が少ないゆえ……これは数秒では治せません…早くて数分ってところでしょうか」

コルニクスがレーアを見ていると吸血鬼の兄は怒鳴りだした

「なんなんだよてめぇら!!どこから来やがった!邪魔者は退いてろ!!」

彼から発せられる赤く染ったオーラ

それは誰もが恐れるはずのもの

しかし彼の目の前にいる者たちは──

決して恐れることの無い者

「お前達は何をしたか、理解しておるのか?」

ラケルタが彼らに聞く

珍しく彼も怒っているようだ

「ごちゃごちゃごちゃごちゃと……うるせぇんだよ!!!さっさと失せろ!!!!」

そう言ってゼロは長い爪を出し、彼らを襲う

彼の視線の先にはラケルタの姿があった

金属同士が強く当たり高い音が教会中に響き渡る

「………我が魔王に触れるなど、幾年掛けても早いんですよ」

コルニクスの右腕がチェンソーに変形し、攻撃を防いだ

「…やられたのか」


ゼルはポツリと呟くのだった


ネオンダンテside

ただただ硬直している

お互いが睨み合い、互いに牙を剥く

金属がぶつかったまま、キリキリと音が響き渡った

ラケルタさんとコルニクスさんが2人の相手をするらしい

「……面白いね。兄さん」

黒髪の吸血鬼がそう言った

すると、白髪の吸血鬼は先程までの怒りは消え、ニヤリと笑う

「あぁ…そうだな」

白髪の吸血鬼がそういえば、1度その場から離れる

「…ダンディー、フロア。2人を頼む」

ラケルタさんが私とフロアさんに向かって、そう言った

「……かしこまりました」

私は返事して、レーアさんのそばに移動する

「さぁ……第2ラウンド開始だぁあああ!!」

白髪の吸血鬼は楽しそうにそう言った


ゼロside

楽しいことになった

さっきの獲物は、もう使い物にならないが、まさか"おかわり"がくるとは思いもしなかったな

俺は勢いよく飛びかかる

コルニクスとかいうやつにだ

何度も、何度も刺しに行く

だが、全て防がれる

腹立つなぁ


だが────


これはただのゲームだ

クエストのように、敵を潰すだけ

俺は、"力"で、ゼルは、"頭脳"で攻略する

やってやろうじゃねぇか

2人なら、五分で十分だ

「さぁ!!!俺を楽しませてみろ!」

俺はそう叫んで、やつに向かって突っ込んだ


左に一突き、右に一突き────


前へ詰めろ

壁に追いやったら、次だ


右腕に一突き、左腕に一突き────


奴は攻撃を受けるだけ

何もしてこない

ダンゴムシが転がって、カタカタと震えているように見えた

なぁんだ……

「つまんねぇ」

そう一言発した次の瞬間、俺はある違和感に気づく

さっき両腕に刃を刺したはずだ

しかし、その感触が一向に感じない

「へぇ…やるじゃねぇか」

俺は攻撃をやめて後ろを振り向く

そんでもって、俺は自身の手のひらを牙で切り傷を作り、その血を垂らしたまま、手のひらを見る

血を中心に集めるよう凝縮させたら────

"誰もいないはずの柱へ、血の刃を飛ばす"

柱が崩れ、目の前にいたやつは薄れて消えてゆき、"隠れていたやつが姿を現した"

「正々堂々戦えよ……誤魔化したって無駄だからな?」

俺がそういえば、やつは驚いているようだった

舐められちゃあ困る


さぁ、こいよ────


コルニクスside

これは、厄介なことになりました

正直な事を言えば、魔力は先程の戦いであまり残っていません

幻覚で相手を混乱させ、後ろから叩けると思いましたが……

気づかれてしまいました

次はどうしましょう

ワタクシは少しばかり考える


いや…やめましょう


拳を作り、彼に突っ込む

ワタクシらしくないでしょうが、魔力が少ない故のこと

右腕にあるチェンソーは、彼を吸い寄せるように動く

彼の動き、癖、攻撃

しかし、彼の攻撃は重く、鋭く、頑丈

全てを分析し、防ぎ、壊す


貴方が"力"でかかってくるのなら───


"頭脳"で応えましょう


ゼルside

兄さんはコルニクスさんと楽しそうに戦っている

正直羨ましかった

いつもいい所を横取りされる

本当についてない

そう思っていると、大きな図体がこちらに行き良いよく飛んでくる

僕はすぐさま避けて、僕自身の指に切り傷を作り、赤い刃を周りに浮かせた

そんなこともお構い無しに、彼は突っ込んでくる

拳で殴り掛かり、足で蹴りあげようとする


──簡単に避けられるのに、何してるんだろう


彼が"力"でゴリ押ししてくるのか

馬鹿だなぁ

それだけで勝てると思ってんの?

僕の赤い刃は彼を貫く


貫いた───はずだった


それでも彼はピンピンしている

は?

普通即死のはずだ

意味がわからない

「ぬるい。全力でかかってこい」

ラケルタさんがそう言いながら拳を作り、僕の顔面に向けて殴ってくる

僕は両手で寸止めした


───へぇ


楽しいじゃん

顔がにやける

なら受けて立とう


"力"で来るのなら、"頭脳"で応えてやる


フロアside

あやつらの長い戦いが続く

ラケルタ殿の方は、拳で押してゆくが、黒髪の吸血鬼もやる気に満ちている

コルニクス殿はまさかの物理攻撃

あやつらしくも無いと思っているが、何か作があるのだろうか

「……これは…長くなりますね」

ダンテ殿は白狐殿を抱えたままそう呟く

それもそうだろう

吸血鬼の双子もそうだが、ラケルタ殿、コルニクス殿の力も計り知れない

我は奴らが戦っている間、我らの周りに電気のバリアを作る

こちらに攻撃が来てしまっては困るからな

「……すまぬ…フロア………」

レーア殿がそう言った

「なーに。謝ることではない。お主が居なくなると思ってはいないが、今回ばかりはギリギリであったな」

まぁ、生きているのならそれでよしだ

さて……我らはこのまま、あやつらの行動を見届けるだけだが………


どちらが勝つのだろうな─────


「オラオラオラァ!!!どうしたぁ!!!」

白髪の吸血鬼、ゼロ殿がコルニクス殿を抑えている

左右からの攻撃が素早く、コルニクス殿が防ぐのもやっとと見た

「……ッ!!!」

コルニクス殿が珍しく苦戦している

しかし助太刀しようにも、我は邪魔になるだけであろう

そんな不安を抱きながら、ラケルタ殿の方に目をやる

あちらは無言で殴りあっていた

図体のでかいラケルタ殿だが、やつの力で直ぐに終わる…はずである

黒髪の吸血鬼、ゼル殿が勝っているのだ

これは、厄介な相手であろう

そんな様子を見ていると、白殿がゆっくりと口を開く

「……いぐ………にす…」

寝言であろうか

イグニス殿の名を口にした

瞬間、我らの周りに炎が包まれる

そして、その炎は吸血鬼の双子に襲いかかった

「……ッチ!!!」

黒髪の吸血鬼、ゼルは舌打ちをしてその場を離れる

「クソがッ……!」

白髪の吸血鬼、ゼロも同様である

驚いた

しかしこの炎を触れようとしても、痛みは感じぬ


────見覚えがある


懐かしく感じるのだ

「これは………イグニスさんの…」

ダンテ殿が呟く


そうか、そういう事だな


改めて感謝しよう、イグニス殿


あとは任せる


ラケルタside

我は死なぬ

そして、やつを潰す

───はずであった

こやつもなかなかの腕前

我がおされているのだ

どうする

これではしばらくの交戦状態は愚か、攻撃がレーア殿の方に向けられると不味い

全ての力が元に戻れば容易いのだが───

そうしていると、フロアが作っていた電気のバリアの外に炎が包まれ始めた

そして、炎は黒髪の吸血鬼に向き、襲う

双子の吸血鬼はお互いに暑がり、その場から離れた

「邪魔すんじゃ……ねぇ!!!!!」

ゼロが自らの腕を切りつけ、腕を振り、血を流す

その血から具現化された血の刃が、白狐殿の方向に向かってゆく

「……ッ!!」

守りきれん

我は急いで行こうとした

だが、心配は要らなかったらしい

炎を纏いし1人の少女

少女は炎の刃を生み出し、血の刃とぶつかり合い、爆破した

煙が立ち篭る

「……そんなことが…ありうるの?」

吸血鬼の弟は困惑し、彼女を見ていた

レーア殿も、彼女を見て唖然としている

「イグニス………?」

彼女はゆっくりと歩む

全身が炎と化している体を動かし、奴らに近づこうとした

「どいつもこいつも………うぜぇ!!!」

ゼロは怒鳴り、2人の吸血鬼は血の刃を大量に浮かせる

我らのことを無視し、彼女だけを攻撃した

また煙がたちこむ

だが────

コツ……コツ……

彼女の足音が響くだけであり、"無傷"

「おい!!!なんで死なねぇんだよ!!!」

双子の吸血鬼は慌て、怒り、無我夢中で攻撃する

奴らの前まで歩くと片手を伸ばす

左右から大きく、炎を纏った両手が出現し────


───潰した


それも、いとも簡単にだ

これは……イグニス殿に感謝しなければ


ゼロside

俺たちは双子だった

生まれた時から母親は居らず、1度も会ったことがない

両親は離婚し、親父一筋で俺たちは育てられた

親父はいつも笑うやつで俺たちを笑わせてくれる

俺は小さい頃から動くのが好きだった

親父の影響で柔道や剣道、サッカーにバスケ

色んなことを教えてもらった

勉強はつまんなくていつもサボってばかりだったが運動だけは得意だった

弟は頭が良くて優しいやつだ

運動は苦手だが頭の良さは俺の中で1番だと思っている

良い弟を持ったものだ

自信もって言える

そんな中、また奴らがやってくる

借金取りってやつだ

母親が大量の借金を抱えてきてそのまま逃げたらしい

だから俺はそいつを母親として認めてないし嫌いだ

いつもヤクザ達が物を壊してくる

俺らはまだ子供だ

弟を守るのに必死になる

ガタガタと震える毎日だった

これからどうすればいいんだとずっと思っていた

俺らことは邪魔者扱い

化け物と罵られる

高校の年になった頃

俺は喧嘩に強かった

裏路地で隠れながらムカつくやつを殴る

「……少ねぇなぁ…ほんのこれっぽっちかよ」

財布の中身を見ればたったの二千円

弟はくるりと後ろを振り向きながら言った

「いいんじゃない?それぐらいで…さっさと帰ろ兄さん」

そう言って俺らは帰る

金を取って生活する毎日

親父は病気になってそのまま天国に行った

借金はまだ返せていない

だから夜逃げもする

俺らは幸せになれるんだろうか

いつしかそんなことを考えるようになった

そもそも幸せってなんだろうな

──どうでもいいか

生きていればそれでいい

そんな中、クラクションの音が響き渡った

道路の真ん中には知らない子供が突っ立っている

俺は急いでそいつの所に走って向かった

「兄さん!!!」

弟の声が聞こえたがそんなことは無視して子供をその場から退かす

ふと横を見れば車の明かりが眩しく目の前にあった


『午後8時半頃、住宅近くの道路で交通事故が発生しました。死亡したのは双子の兄弟と見られ警察は事故の原因を調べ────』

ひとつのAIがそんなニュースを街中で聞く

「……ふふふ」

彼女は楽しそうに笑った


気がつくと、俺はベッドの上で横になっていた

ガバッと勢いよく起き上がり周りを見渡す

病院では無いただの個室

「なんだ……?ここ…」

「起きた?」

聞きなれた声が上から聞こえてきた

2段ベットから飛び降り、床に座り込む

「……は?…お前は誰だよ」

俺が困惑するのも無理は無い

声は弟そのものだが姿が違かったのだ

男としては長い黒髪に純白な白の瞳

黒色の和服を着て俺を見ている

「僕だよ。兄さん。なんでこの姿なのかは僕にも分からずじまい」

まさかの弟だった

驚きが隠せない

「それに、兄さんも似たような姿だよ。鏡で確認してみたら?」

そう言われ部屋の洗面所にある鏡を急いで見に行く

全く同じ顔

唯一違うとすれば髪色と瞳色だな

俺は白髪で黒の瞳

見た目年齢は大体20代と言ったところか

『あれれ?起きたァ?いい夢見れたかな?』

明るく楽しそうな女の声が聞こえてくる

「誰だ!てめぇ!」

『えぇ〜?!そんなに怒らないで欲しいなぁ……カルメ悲しくなるんだけどぉー?』

こうして俺たちはデスゲームに参加することとなった

最終まで上り詰め今では幹部とやらをしてる

確かにこのゲームは楽しい

毎日がゾクゾクと感じられる

こんな楽しいことは滅多にない

しかし、初めて負けた

これは笑うしかねぇな

俺とゼルは教会の柱に座り込む

もう疲れた

「……さっさと殺せよ」

俺はあいつらにそう言う

「…その前にひとつ聞きたい」

ラケルタが聞いてきた

「……なんですか」

ゼルは静かに言う

するとコルニクスがしゃがみ、俺たちの目線を合わせる

「この子を治す方法をご存知ですか?」

そう言いながらすぐそばで横になっている実験体を見て、聞いてきた

「なーんだ…死んでなかったのかよ……」

あいつは気絶しているだけだ

こいつら、バケモンだろ

そう思いながらゼルは聞かれた質問に答える

「………魂の欠片があります」

魂の欠片

それは死んだヤツらの魂が欠片となったもの

「魂の欠片……?」

ハサミ野郎がチビを持ったまま聞いてくる

「その子が持っているはずですよ。彼女の欠片」

ゼルはそう言って、チビを指さす

「白狐さんが……?」

ハサミ野郎は疑問しつつ、チビを見る

「……おい」

俺がそういえば、先程俺らを潰したやつが現れる

炎を纏ったまま、突っ立っていた

「戻れ」

たった一言

すると、炎を纏ったやつは実験体の体に入り込む

「これで、元に戻るはずだ」


レーアside

イグニスの体に、炎を纏った娘が入り込む

すると、イグニスの魂が少しだけ戻ってきていた

「これで、元に戻るはずだ」

双子の吸血鬼、ゼロが言う

少し経つとイグニスの目がゆっくりと開き始めた

「イグニス殿!!!起きたか!!」

フロアが大声で言う

「うるさいぞ……耳が痛む…」

横になったまま、呆れるイグニス

「立てますか?」

ダンディーが聞くとイグニスは失笑する

「はは……すまぬ…今は難しいのじゃ………未だに全身が痺れていての……」

「それはすまぬ」

すぐさまフロアが謝った

何があったかは後で聞くとして、我は少しだけなら動けるまで回復したようだ

「…僕たちを殺さないのですか?」

ゼルが聞いてきた

そうかと思い出したと同時に我が大鎌を持ち、刃を向ける

「待て、レーア殿」

イグニスが我を呼ぶ

「……なんだ」

「そやつらを殺すでない」

「何故だ。我は今すぐにでも殺したいというのに」

「いいから待つのじゃ。それに、もうそやつらは動けまいしな」

イグニスは何を考えているのか理解ができない

するとイグニスは奴らに聞いた

「お主らは、"本当に"死にたいのか?」

イグニスの言葉に対して2人は無言になる

「どちらでもねぇよ。楽しければそれでいい」

……っとゼロ

「僕も同意見……」

……っとゼル

「そうか、結構じゃ」

イグニスはそう言ったあと、自ら起き上がる

「まだ無理しない方がよろしいのでは…」

コルニクス殿がそう言うとイグニスは笑顔で返した

「大丈夫じゃ」

そのまま、2人のところまで歩き、しゃがむ

「なら、"現実でも生きるのじゃ"楽しいことがわんさかあるぞ?」

イグニスの言葉に、2人はハッとする

「……知ってんのかよ」

「これでも地獄の管理人じゃからな。当然じゃ。レーア殿。こやつらが死ねば、どうせ地獄へ来るであろう。それでおあいこにせぬか?それで白殿も安心するじゃろ?」

「…………好きにしろ」


イグニスside

「…………好きにしろ」

レーア殿は、渋々大鎌をしまう

相当怒っていたようじゃのぉ

とてつもなく声が低くてビビったわ

さて、体は元に戻れたことじゃし、現状を聞くかのぉ

どうせ、あの娘は潰しておかなければなるまいしな

「……おい。実験体」

ゼロが妾を呼ぶ

「二度とその言葉を発さぬようにさせるか???……はぁ…して?なんじゃ」

「…………あいつには気をつけろ。俺らでも手出しが出来ねぇんだから」

あの娘のことじゃな

「分かっておるわ。まぁ、忠告感謝する。行くぞ?まだ残っているのじゃろ?」

「イグニスさん…今までの経緯って……」

ダンテ殿が聞いてくる

「ある程度の状況は把握しておる。白殿の目線から全部見ていたからのぉ」

そう話していると、次のエリアに繋がる扉が出現した

ラケルタ殿、コルニクス殿、ダンテ殿、フロア殿、レーア殿、白殿……

全員入ったのを確認し、妾も扉や先へ行こうとした

「……イグニスさん」

妾は後ろを振り返る

声の主は、ゼルであった

「ありがとうございます」

「キシシ!大したことはしておらぬ。ではの」

妾は扉の向こうへ向かい、その場を後にした







……To be continued

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メタバースデスゲーム 琴望(ことの) @kotonoignisu

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