第10話 過去と未来

???年前

シスターside

私はいつも周りから否定されていました

何をやっても

何を頑張っても

否定されました

親にも期待なんてなにもありませんでした

お前は何をやってもダメだ

あんたなんて産まなければよかった

暴力も育児放棄も

それが日常

学校も何も楽しめない

みんなから憎き魔女だの悪魔だの言われる始末

ロッカーの落書き、教科書やノートも破かれゴミ箱に捨てられる

私には幸せという感情も言葉もありません

勉強は簡単でした

授業を聞いていれば何となく理解できる

友達なんて仮の関係でしかない

先生からも相談しなさいと言われましたが、正直誰も信用なんてありません

だって、彼らはいつも偽ってる私と関わっているのですから

それは元気な私や、優しい私でしょう

私は一人がいい

ただ近くにある川を眺める

自然が大好きな私にとって唯一の静かな場所です

誰もいない、静かな場所で息絶えたい

そう思うようになりました

誰もいない静かな空間に閉じこもる

それが一番落ち着くのかもしれません

そして時は過ぎていき、私はメタバースという世界が気になりました

PCで入り、彼らと関わって行くうちに、いつの間にか心を許していました

特にゲールという彼

初めて会った時は、謙虚な人だと思っていましたがアスレチックする時はドジしてましたし、バトロワでも直ぐに負けてしまう

しかしいつも謎解きは得意でいつも凄いと思っていました

いつしか彼に相談したことが1度だけ

その時に言われた言葉

「人間は…失敗することなんて当たり前です。僕なんかいつも失敗してますし…それでも頑張って乗り越えて行って、色んなことをチャレンジするのがいいのではと僕は思います。シスターさんもカインくん達もみんな凄いんです…」

初めて言われました

凄いだなんて

いつも否定されて、何も期待なんてなかったのに

そんな彼を、どうしていつも目で追ってしまうのでしょう

この気持ちはなんなのかよく分かりません

初めての感情だからでしょうか…

テテルさんに相談しましたら、それは好きという感情だと言われました

これが…愛するという感情

不思議です

好きになってしまえばこれだけ心に影響されるのだから

VRで入ると必ず彼の所に行く

「あ!シスターさん。お疲れ様です」

ゲールさんがニコッとして迎えてくれる

「…お疲れ様です。ゲールさん」

彼がいたから今の私がいます



─────いつか


好きということを、伝えられる日が来るのでしょうか


そう思いながら今日も素敵な日々を過ごします



???年前

ゲールside

まだ僕が幼い頃、唯一1人の幼なじみがいました

彼女はクラスの中でも中心人物で人気者の1人

いつも図書室に行って1人で本を読むのが週間でした

周りからも僕は邪魔者だと言われた事があります

みんなからの嫌われ者

そう言われました

両親は優しくていつも励ましてくれる

しかしそう心の傷は治りません

そんなある日、僕は珍しく静かな木の下でのんびりとお気に入りの本を読んでいた時

奥の方から透き通った歌声が聞こえてきたのです

「…?誰だろう…こんな所で歌声が聞こえるなんてないのに」

気になった僕は本を閉じて声が聞こえる方へと向かう

少しづつ歌声が鮮明に聞こえてきました

そこには大きな木の枝に座り目を瞑り、楽しそうに歌っている彼女がそこにいて──

初めて聞く彼女の歌声

なんて惹き込まれる声なのだろう

僕は彼女を見て呆然としていました

「─♪──♪」

歌声が森の中で響き渡る

近くには綺麗な川が流れ、小さな風が吹き葉っぱ達が空中に舞う

その景色がとても綺麗に見えました

「あれ?こんな所で何してるのー?」

僕に気づき目線を上から下へと変える

「…僕はあそこで本を読んでただけだ。遠くから聞こえたもんだから来てみただけ…」

僕は本を片手に彼女を見ながらそう言った

「へぇーそうなんだ」

僕はため息をしてそろそろ降りたらどう?と尋ねる

そうすると彼女はゆっくりと降りてきた

「そう言えば君どこかで見たことあると思ったら同じクラスの子じゃん!?」

突然の大声で僕は少しびっくりする

「なに…そんな大声出すことじゃないでしょ?」

呆れながらそう聞く

「君、いつも図書室にいる子だよね。みんな噂してたし初めて話したからさー!」

またよからぬ噂だろう

ため息をしながら僕は後ろを振り返り歩き出す

「え?!ちょっとどこ行くの?」

「…僕は忙しいから。それじゃあ」

もうそんな話は聞きたくない

どうせまた僕の侮辱だろう

彼女もそう思ってるはずだ

そうに違いない

「まって!!」

片手をガシッと強く掴まれる

「な…!なにするんだ!」

振り返りそう聞くと笑顔で言ってきた

「もっと話そうよ!!やっと関わり会えたんだから!」

唖然とするしかなかった

言ってることすら理解が出来ない

僕と関われば彼女が何されるかわからない

それなのに何も抵抗出来ずそのまま遊ぶことになった

歌を聴いたり、水遊びをしたり

遊んでいるうちに夕方になった

「ねぇ。君は夢を持ってる?」

帰り道そんなことを聞かれた

「……そんなものないよ。みんなと違って僕は何も出来ない役ただずだ。夢を持って何になるの…」

下を向くことしか出来ないこんな僕だ

しかし彼女はぽかんとしながら言った

「私は君のこと役ただずなんて思ったことないよ?」

「……え?」

予想外だった

みんな必ずそう思っているものだと思っていた

しかし違う

「だって人間誰しも失敗ってあるじゃない。それを乗り越えて行って自分の道を歩むのが人間でしょ?」

その言葉を聞いて僕は唖然とする

「私たちはまだ子供よ?そんな考え持ってたらこの先大変になっちゃうw」

クスッと笑いながら言う彼女

「……そうだな」

俺もニコッとしながら応える

「ああ!やっと笑ってくれたあ!!」

そう言うと僕の懐に抱きつく

「う…うるさい!!笑ってないよ!!」

こんな時間が続くと思っていた

そんな矢先、彼女は学校に来なくなったのだ

親の都合で引っ越してしまったらしい

しかし彼女の出会いがあったからこそ今の自分がいるのだと感謝している

名前の知らないそんな彼女を、今でも覚えている

そんな中、時は過ぎていき友人からメタバースというゲームを勧められた

最初はよく分からないゲームだと思っていたけどテテルさん達に出会えてそこからどんどんハマっていきました

そして僕は彼女に会うのも楽しみの一つになる

いつものように夕焼けが綺麗なワールドにて待ち合わせ

彼女が入ってきたことを確認してリスポーン地点へと急ぐ

「あ!シスターさん。お疲れ様です」

僕は笑顔でそう言う

すると彼女は少し間を開けて答えた

「…お疲れ様です。ゲールさん」

ニッコリとした彼女を見て、安心する

「それじゃあまたカインくん達のところに行きましょうか」

僕はポータルを出す準備をしていた

「はい。そうですね。そう言えば今日はザペルさんが居ないんでしたっけ」

「あー…ザペル君は補習地獄だと言ってましたよ」

「あらあら」

彼女はクスクスと笑う



──────いつしか


彼女のことを、好きと言える日が来るのだろうか



そう思いながら今日も素敵な日々を過ごす



現在

上層部───訓練場


ミルトside

俺らは今訓練場に来ていた

やつの目を背ける為でもあるが……

あのランダム処刑、元はなかったはずだ

「……なんで…………おかしいだろ…こんなの…」

りょふはそう言って、壁を片手で拳を作り、叩きつける

どうやら、知り合いが殺されたらしい

俺は何も言えなかった

もどかしい話だが、ウルボが無事だったのだから

1度安堵するも、あいつはその真逆で、絶望している

しかし、俺も少し不安だ

ウルボは優しいやつだからな

そんな中、とある女が入ってくる

「大丈夫…?りょふさん……」

俺が入口を振り向くと、そこにはアリスお嬢が立っていた

白黒のツートン髪に、可愛らしいメイド服のような服を着ている

アリスお嬢は、りょふの顔見知りだったらしく、俺はお嬢なんて呼んでいた

「お嬢か……まぁ、見ての通りだ。お嬢も大丈夫なのか?知り合いなんだろ?」

いつもより顔が真っ青な状態のアリスお嬢

大体察しは着く

「……私は大丈夫」

「そうか」

意地はりやがって

……こいつらが落ち着くまで、時間がかかりそうだな

俺は2人をそっとする為、1度その場から退出する

廊下へ出ると、そこには見知った奴らが次の場所へ向かおうとしていた所だった

「お?ミルトじゃーん。お疲れ〜」

野郎はそう言って、俺に声をかけてくる

「しつこいぞオール。何度も言っているが、お前らと絡むつもりは一切ねぇからな」

そう言って、俺は目を逸らし、呆れていた

「そんなキリキリするなって。俺だってだるいんだから」

金髪の野郎はそう言って、オールから目を逸らす

「え〜?アラタも酷くね???」

アラタは真面目枠であるかもしれねえが、たまに突っかかってくる

正直なところ、こいつらとは関わりたくはない

……って言うのもあるが、こいつらはマスターの言いなり

何かとバレれば、容赦なく殺しに来るだろう

"元はプレイヤーだったのによ"

「あれ?そういえばいつもの相方はどうした?」

この様子だと、りょふを探してんだな

決して、こいつらを敵にしてはならない

上層部の幹部たちは異常なほど、実力が化け物だ

俺からしてみれば、あの吸血鬼の双子の方が恐ろしいんだがな━━━

オールとアラタは人間の中で特に強い

俺も何度か挑んだが、勝てずじまいだ

「そういや、さっきのランダムのやつやばかったなw」

オールがケラケラと笑いながらそう話す

「予想外だったが……ああいうのは先に言って欲しいもんだ」

アラタはそう言って呆れる

そこに関しては俺も同感だった

「そうだな。唐突にやられては困る」

少しため息をついたあと、俺は奴らに忠告しておく

「あ、そうだ。今特訓場に行かないことを勧める」

「え?なんで?」

オールは困惑していると、アラタは察したようだった

「なんだ、またあいつら喧嘩してんのか」

「おう。結構派手にな」

話が作りやすいように、りょふとアリスお嬢には、たまに喧嘩が激しくなる戦闘をさせているのだ

これで訓練場には行かないだろう

「えー…まじか……なら仕方ない。他の場所でやるか」

オールはそう言いながらこの場を去った

アラタも続くようにこの場から立ち去る

正直安心した

「あ!そういえば……」

オールが思い出したかのように聞いてきた

「ミルトぉー。カエン見かけたらマスターが呼んでたって伝えといて」

「はぁ??俺に頼むのかよそれ」

俺は少し呆れながら、分かったと渋々了承する

満足したのか、2人が遠くへ行くのを確認したあと、俺は自室に戻った

椅子に座り、ため息を吐く

「はぁぁ………くそがよ…」

なんでお前がここにいるのかと、苛立ちと不安が押し寄せる

ウルボとはもう4年の付き合いだ

メタバースで初めて出会った時なんか、オドオドしすぎるあいつを見てイライラしていたのを覚えている

危なっかしくて、ドジなやつだ

俺がいなければ何も出来ねぇし、毎回助けを求めてくる

……そんなやつがこんな所にくるんじゃねぇよ

まぁ、あいつの仕込んだことなんだろうがな


ぜってぇぶっ倒す


そう思いながら、机を叩きつけるのだった



何故、こんなにも先が暗く見えるのだろう





to be continued

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