第7話 地獄の始まり

???side

ここはメタバースの世界

幻想的な世界もあればみんなで楽しく遊べるアスレチックワールドもある

そこで色んな人たちと出会い楽しく過ごす

そんな中、突如として地獄へと変わった出来事が起きたのだ


セカンドゲーム───ホラーダンジョンにて


廃墟の学校で僕はロッカーの中に隠れていた

暗闇の中でカタカタと震えながらその場に留まる

僕はウルボ

145cmという低身長のアバターを使っています

黄緑に染ったショートヘアの髪に少しダボッとしたゆるりと感じる雰囲気のニットを着て、黄色の瞳

これが、僕のこだわったアバターだ

なぜ僕は生き残ってしまったのか…

ファーストゲームはロシアンルーレット

ルーレットで選ばれた人が2回づつ手元のボタンを押し、ハズレを引けばその場で他の人が殺されるというもの

僕は…ただ運が良かっただけ……


コツッ……コツッ…


足音が聞こえてくる

もしかして、人を食べる化け物なのだろうか

僕は心の中で来るなと連呼する


次の瞬間、ロッカーの扉が開かれた


「ひっ…!!」

僕は強く目を閉じて、体を丸くする

「え…?!すまん。驚かせてしまったかな?」

優しい男性の声が聞こえる

……食べられ……ない?

恐る恐る顔を上げる

そこには銀髪に黄色の瞳をした紳士のような男性が立っていた

僕は驚きのあまり呆然とするだけ

「あれ…?本当に大丈夫?」

彼は僕の目線に合わせるようにしゃがむ

「ん?けけさーん。誰かいたの?」

オレンジ髪の銀メッシュ

サイバーパンクのような服装の男性アバターを使っているプレイヤーさんが後ろから覗いてきた

「……?君、確かどこかでみたような…」


僕は記憶を思い返してみる

ファーストゲームに入る前

慌てすぎて、不意に誰かとぶつかってしまう

「す…すみませんっ……」

僕は顔を一瞬見つめた後、すぐさまそこから離れてしまいました


まさかあの時の人……!!!


そう考えていると少し離れたところから女性の声が響く

「もかちー!けけくーん!こっちには何も無かったよー」

少し離れたところから、女性の声が響く

金髪のロングヘアで、頭に綺麗な花を咲かせている女性アバターのプレイヤーさんが見える

その横で、呆れながら言う1人のパーカーを着ているプレイヤーさん

「ヒナミィ。あんまり大声出さないでもらえる?化け物に食われる」

「え!私声大きかった……?ごめんなさい…」

段々と彼女の声が小さくなる

この人たちは顔見知りだろうか

「君、名前は?」

オレンジ髪のプレイヤーさんが聞いてくる

「え…っと……ウルボ…です………」

僕は静かに返した

これが、このゲーム内で初めて話せる人達だった



もかのすけside

数時間前──

俺はいつの間にか地面に横になっていた

知らない真っ白な天井

目を開いた瞬間、眩しく視界が痛くなる

すぐ目を逸らし体を起こす

少し頭痛するが特に問題は無いだろう

「なんだ…?ここ……」

髪をぐしゃっとしながら周りを見渡す

「あ!もかち起きた?」

後ろから聞きなれた女性の声が聞こえ振り返る

そこにはゲーム仲間のヒナミィとけけさん、メイメイが地面に座っていた

「もかさん起きたんだ。おはよ」

「おはよ。メイメイ」

いつも通りの挨拶

「つーかここどこ……」

俺がそう聞くと、みんな分からないらしい

「気づいたらここにいたんだよね。私が起きた時にはまだみんな寝てたし」

ヒナミィが最初に起きて、不安になったのかけけさんを起こし、その後にメイメイが自力で起きたという

3人で俺が起きるまで周りを探索してたが特に何もなったそう

ただ白い空間が広がっている


何も分からないままここで雑談していた最中に俺が起きたということ

寝る前の記憶を思い返す

「確か俺たちはメタバースで遊んでて……あれ?あの後何してたんだっけ…?」

記憶が飛んでいる

4人で思い出そうとするがなかなか出てこず

「遊んでたことは覚えてるんだけどなあー…他のみんなも居ないし……」

けけさんからそう言われてみれば他に何人かいたはずだ

亜樹さんやいっちーも居てみんなでわちゃわちゃしてた記憶が蘇る

しかし途中からの記憶が一切無い

なぜここにいるのか

それにさっきからものすごく違和感を覚える

なんなのだろう

その疑問はこの後直ぐに分かった

手元にあるはずのコントローラーが無い

それにVRをつけている感覚も無かった

恐る恐る顔に触れてみる

"感覚がある"

頬をつねると痛みが走った

本当にこの世界に入っているかのように

「なんだこれ……」

そう言った瞬間、突然天井からモニターが降ろされる

「え?!なになになに?!」

ヒナミィがそう言いながら驚く

『はいはーい!皆様〜!ようこそいらっしゃいました〜!』

モニター越しから聞こえてくるのは少女の声

しかし画面は真っ暗なままで何も映っていない

『ちょっと〜?早く撮してってば〜』

砂嵐がちょくちょく起こったが少し待つとしっかりと少女の姿が見えた

カメラに顔をドアップで近ずけ片目だけを見せる

赤黒い瞳は少し不気味に感じた

『おー?やっと映ったかな?じゃあ始めるよー!』

そう言いながらカメラから離れ、後ろにあった大きな黒い椅子に座る

大切そうに持っているピエロの人形を片手で抑えながらもう片手でひらひらと手を振りながらニコリと笑顔で話し始めた

『皆様初めまして!私はここのゲームマスターを務めるカルメでーす!!よろしくね〜』

見た目の年齢だとまだ13ら辺だろうか

髪色はピンクのショートヘア

赤黒い瞳の色に水色の線が斜めに入っている

身長は140~150くらいだろうか

黒イメージのゴスロリファッションでピエロの人形が好きなようだった

何ともまぁ元気な少女

『皆様にはこのゲームに強制参加していただきまーす!拒否権はありませーん!』

「「「は??」」」

男性陣が全員キレる

何を言っているのだろうこの少女

そんなこともお構い無しに彼女は話を進める

『このゲームにはまだ何個かステージがあるから皆様頑張ってくださいね〜!とりあえずどっかしらの壁が開くのでそこから移動お願いしまーす』

「いや雑……」

メイメイの言う通り、雑な説明だ

訳の分からぬまま、目の前に扉が開かれる

俺たちはそれを見て立ち上がり扉の前へと移動しようとしたその瞬間

聞いてはいけない言葉を彼女が言い始める

『生きていれば……ね?』


"生きていれば?"


一瞬の疑問が、すぐさま恐怖へと変わった

ガタンと後ろから不吉な音が鳴り響く

同時にカサカサという聞きたくもない音まで聞こえてきた

ゆっくりと後ろを振り返る

そこには、壁の隙間から勢いよくそれが飛び出してきた

ムカデやアリなどの虫たちが大量に襲いかかってくる

……見るだけでも気持ち悪い

それも物凄いスピードでだ

アリ達が通っていた地面が段々と溶けてゆくのが見える

あれに巻き込まれたら即死なのは確かであろう

俺は心の中で悲鳴を上げ、すぐさま扉をあけ中に入る

けけさんは呆然と立ち尽くすヒナミィの腕を引っ張り、一緒に扉の先へ入って避難

メイメイが最後に入り扉を閉める

ギリギリのところで回避出来た

もう二度と見たくない光景だ

全員が少しだけ息を切らす

「な……何今の…めっちゃ気持ち悪かったんだけど………」

メイメイが壁に寄り掛かりながら言う

俺も反対側の壁に寄り掛かり座り込む

「ヒナミィなんで呆然としてたんだ?けけさんに助けてもらったからいいものの…あのままだったら終わって……ヒナミィ?」

ヒナミィは何かを考えている様子で全然俺の話など聞いて無い

「ヒナミィ?もかちの話聞いてる?」

メイメイがそう言うとけけさんもヒナミィさんに話しかける

「ヒナミィ…?ヒナミィ!」

少し大きな声で言うとヒナミィがビクッとしてけけさんの顔を見た

「え??なに?どうしたの?」

「さっきから呼んでるのに返事無かったからどうしたのかと…」

「あぁ…少し考え事してただけ。けけくんさっきはありがとうね」

色々引っかかるがとりあえず先に進む事にした

壁の上にある浮いている炎が怪しく灯り、長い廊下が続いている

俺たちはどんどん進んでゆき、セカンドステージに向かった

そしてそこで出会った1人の少年

ウルボくんと遭遇したのだ


これから、一体どうなる事やら…


しかし、彼らの不幸はまだ序の口に過ぎない

静かにその人はニヤリと笑みを浮かべている

彼女はモニター越しに彼らの画面を見つめていた


──上層部モニター室


「"こっちも"楽しみだねぇ……どんな地獄を見せてくれるのかな?」

玉座に座り、楽しそうに見ている

彼女は椅子を優雅にくるりと回す

「にしても……あの女なんなのぉ?変な感じがして気持ち悪いんだけどぉ〜」

モニターには、先程の映像が流れている

「……例の精霊ですか?それとも………」

黒が聞くと、彼女はそうそうと嬉しそうに頷いた

「たまたま居たからここに連れ込んだのは良かったんだけどさぁぁ……勘づかれそうなんだよねぇ………」

そう言いながら、大事そうに持っていたピエロのぬいぐるみを強く抱きしめる

それも壊れそうな程に

「…………どう致しましょうか」

「そうだねぇ……でも、ギリギリまで使いたいしなぁ…あ!そうだ!!」

マスターはハッと思いついたのか、急に立ち上がり、モニター前まで歩き始めた

「"さっきの子"にも伝えたけど、この子の心も潰しちゃおう!」

勢いよく言って、"彼女"を指さす

「この子達を使えば……もっといいもの見れそうだし……ね?」

その笑顔は、まるで悪魔のようだった

「承知しました……」

黒は了承し、その場から立ち去る



後にその部屋は、狂った笑い声がしばらく響いたのだとか


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