第5話 SECONDGAME

アナウンスが鳴り響く

彼女はそのまま話を続けた

『申し遅れました…私は案内人を努めさせていただきます……黒と申します…以後お見知り置きを…』

軽く自己紹介をした

そうすると周りのヤツらがぎゃーぎゃーと騒ぎだす

早くここから出せという声が多数だった

そりゃそうなるのも分かるが、言ったって何も変わらないと思う

最初からあんなゲームをするのだ

ろくでもないやつなんだろうと察しは着く

『静粛にしてください。でなければ…』

黒という案内人がそう言うと1発の発砲音が聞こえた

音のする方に目線をやるとそこには

『1人ずつ排除するまでです』

彼女はそう一言

周りは、またもや空気が凍りつく

『それではルール説明をさせていただきます。SECONDGAMEでは、とある廃墟の学校で行います。少女からの願い事を叶えてください』


そして、ルールの説明をされた


ルール概要

・少女の願いを聞いて目的を達成させる

・人喰いの化け物が存在

・チームを組んでもよし、個人での行動も可

・目的を達成し出口から出れば成功とする

・ゲーム中での相手の妨害など可だが殺す手前までなどは強制退場とする

・武器など配置されていますがたったの2つ、プレイヤーの方への攻撃は禁ずる

・武器のひとつは銃系、もうひとつは爆弾、なおプレイヤーには効果ありません


ざっくりまとめるとこうなる


『ルール説明は以上です。それでは準備できた方から扉の向こうへとお進み下さい』

彼女がそう言うと大きい木造の扉が現れ、ゆっくりと開かれる

そこには暗い森の中に包まれていた

きっと奥に行けば廃墟された学校があるのだろう

「なんかワクワクしますね」

シスターさんは満面の笑みを浮かべる

そういえば…彼女はホラー好きだったな

「き…肝試しみたいなものですか……正直僕は早々に立ち去りたいんですが」

ゲールさんはザペルの後ろにこっそりと移動し、少し震えながら話す

彼は元からこういうのは苦手な部類だ

俺やザペルは平気だし、大丈夫だろう

「そんなこと言ってたら先に進めないっすよ?それにそんな怖がらなくても大丈夫ですってw」

ザペルは軽くケラケラと笑い、ゲールさんの肩を叩きながら言う

そう話していると向こうからギャーギャーと騒いでいるのが聞こえた

「早く行こうっっって!!!!そうしたらカインさん達を見つけられるかもなんだよっっっっ!!」

全身獣で白く毛深い狼

そしてアメジストのような紫の瞳にナチュラルワンピースを着ている

もう1人はてるてる坊主アバター

「嫌だァァァァ!!無理なものは無理なのぉぉぉぉ!!」

そうてるてる坊主が言いながら獣に首元を肉球で捕まれじたばたとしている姿が目に入る

彼女は泣きながら引っ張られるが全力で抵抗し、逆方向へと前へ進む

「何をしておるんでしょうな……あちらは…」

レーアさんがそう言うと白狐さんは首を傾げる


俺はため息をした後、そいつらの所へと近づき声をかけた


「何してんだ……テテル。モフテル。」

2人が驚き、俺の方に目線をやる

「「カイン!!!」」

息ぴったりなのか同時に言った直後、俺のふところへと飛びつく

「おいっ…!がっっつくなよっ……お前らっっ……」

俺は2人を引き剥がそうとするが、馬鹿力のせいか離れない

しばらくして、2人は満足したのか俺の体から離れる

もうこれだけでも疲れた

「あら?テテルさんにモフテルさんではありませんか。おふたりもご無事だったのですね」

シスターさんがニコッとしながら言うとゲールさんもははっと軽く笑う

「相変わらず仲がたいいね。2人とも」

そんなこんなで話をし、レーアさんと白狐さんの自己紹介等を済ませ、いざ扉へと向かう

扉の先へ行くと当たりは霧に覆われていた

地面の道をザクザクと足音を立てながら廃墟へと向かう

学校の正門に着くと霧が薄くなりはっきりとその建物が見えるようになった

先に行ったプレイヤーたちは見当たらない

もう既に中に入ったのだろうか

俺たちは下駄箱へと足を踏み入れる

懐中電灯が人数分、目の前から突然現れた

『運営からの配布です。皆様お気をつけて』

黒の声が響き渡った

それと同時にぐちゃぐちゃと汚い音が聞こえてきた

粘土を水浸しにしたものを踏んだような音

「ァァァ………ア゙ア゙…」

うめき声がかすかに聞こえた

「ひっ……!!か…カイン…!早く行こうよ……」

テテルが俺の袖を軽く引っ張る

「とりあえずみんな、静かに隠れてください」

みんな、それぞれひっそりと隠れる

テテルと白狐さんは下駄箱の中に隠れ、レーアさんやシスターさん、ゲールさんはほうきなどが入っているロッカーの隣に隠れる

俺とモフテル、ザペルは下駄箱の影に隠れた

俺はそっとそいつの姿を確認する

ドロドロしたような黒い液体が廊下をゆっくり移動していた

目は無く、裂けたような口が何個もバラバラに付いる

ドロドロした黒い液体の所々に様々な人間の手足がついていた

さすがに誰が見ても気持ちが悪い

俺は試しに近くに落ちていた上履きをそいつの近くに投げた

ボトッと大きな音を立てそいつの少し離れた

ところに落ちる

それに反応したのか体の下から触手のようなものが伸び、上履きを持ち上げる

「ウウウ……アア?ア゙ア゙ア゙!!」

そう聞こえると怒ったように上履きを投げ捨てた

そしてまた動き出し下駄箱から去っていった

俺たちは居なくなったと確認して全員出てくる

「ひぇぇ……あいつがあの化け物ですよね…めっちゃ怖いんですけど……カイン君は何してるんですかあれ!!バレるところだと思いましたよ!」

ゲールさんがそういいながら俺の肩を掴んで揺する

「確認ですよ……あいつ目がなかったんで音で反応するのかと思って」

「確認の仕方他にもあったでしょ?!」

いや他に試すすべが正直ないんだよな…

するとテテルがすぐさま俺の小さい袋の中に入る

カタカタと体を振るえさせながら怖がっていた

「テテルお前やっぱり怖がりなんじゃねぇかw」

ザペルがケラケラと笑いながら言う

流石にキツかったか

その言葉にも何も応答しない

「はぁ……しばらくそこにいていいからな。テテル」

そういうと安心したのか震えが止まり、こくりと小さく頷いた

「あらあら……ザペルさん。女の子を泣かせてしまうのはいけませんよ?」

シスターさんがため息をしていう

「え?!俺っすか?!」

「あんたこれ終わったら銃撃戦のタイマンしよっかぁ」

モフテルがニッコリと怖い笑顔で言う

ザペルは冷や汗をし、青ざめながら静かに目をそらす

モフテルは銃撃戦のゲームで断トツ1番を誇るほどの実力者だ

怒らせたら終わりだと思った方がいいだろう

「お断りさせてもらいます。すみませんでした」

ザペルはキッパリ断り、謝罪をした

「我が見つからないということは本当に見えないということでしょうな…」

真剣に考えているレーアさん

「そうですね……だってレーアさんのその姿2メートルは超えてますよね…僕の身長より全然上ですし……」

ゲールさんの言う通りだ

この中で1番目立つと言ったらレーアさんだろう

まぁ俺の剣とかザペルの盾も目立つだろうけどな

「さて…先へ進みましょう。早くしなければ早めに終わることなんて出来ませんし」

シスターさんは早く行ってホラーを満喫したいご様子だ

一応デスゲームに参加しているのにその危機感はあるのだろうか……不安だ

その前に少女を探すのが重要

さっさと見つけだして目的を達成させなければ……

すると少女の声が聞こえてきた

〔だーるまさーんが……こーろんだ……だーるまさーんが……こーろんだ〕

廊下中に響き渡る

「ぎゃぁあぁ!なになになに!こわい!!」

モフテルがザペルを盾にしてカタカタと震えながら言う

「おいおい!俺を盾にするんじゃねぇ!」

相変わらずだな

ずっと少女の声が響き渡る

声が聞こえる所へと近づく

「え!!ちょっとカインくん!」

ゲールさんが止めに入る

「少しだけ確認しに行くだけですよ」

俺はそう言ってゆっくりと教室の扉をガラッと開ける

窓側の真ん中の席

そこに純白のワンピースを着た女の子が座っていた

〔だーるまさーんが……こーろんだ……だーるまさーんが……こーろんだ……もーいーかい………おにいちゃーん……まーだぁー…?〕

お兄ちゃんを探しているのか?

そこを探すのが今回の目的なのだろうか

この学校は3階まであり、その中であの怪物を避けながら探さなければならない

教室を見回すと掃除ロッカーの近くに小さい金庫があった

その中に呪いの御札のようなものとボロボロの日記帳が入っていた

「すごいボロボロですね…相当昔のものでしょうか…」

シスターさんがまじまじと見る

「まぁ見た感じそうでしょうな…」

後ろに立ち、上から見下ろすレーアさん

ゲールさんが手に取り、ページをめくる


〇月‪‪✕‬日

今日は初めての学校に行った

友達も出来てものすごく楽しかった


楽しそうな1日日記のようだった

しかし読み進めていくと内容がガラッと変わる


×月△日

学校内でケロケロ様という神様が住んでると噂があった

ケロケロ様にお供え物をしたらなんでもお願いを聞いてくれるんだって

どんな願いごとがいいかなぁ

……最近お兄ちゃん見かけないけど、大丈夫なのかな


その後のページはボロボロに破かれていた



その頃、上層部

???side

「やってんねぇやってんねぇ……さっさと混ざりてぇーー…」

狼男が男性の声でケラケラと笑いながら悔しそうに言う

2人はモニターを見ながら全ての試合を見ている

肝試しをしている所、バトロワを初めとする試合をしている所など

壁に血が飛び散り化け物に食われる

どんどん死んでゆく

「でも俺たちの出番はまだだろ?今邪魔したら黒に怒られるし」

ロザリアの姿で腕を組み、モニターを見ながら言う彼

「……楽しそうですね…おふた方」

氷のような水色の髪に黄色の瞳

メイドのような服を着ている

彼女は入口から2人の様子を見ていた

「そりゃあもう。最近だといい骨のあるやつなんか居なかったしなぁ…今回のゲームは楽しめそうだ。パゴニアはどうするんだ?」

ウキウキとしながらそう話し後ろを振り向きながら聞く狼男

彼女は表情を変えない

「……私はまだ仕事が残ってますから…今回は参加しませんよ……」

淡々と静かに答える

「パゴニアは今回出ないんだ。マスターからの命令?」

ロザリアの姿で腕を組み椅子に座ったまま彼女に聞く

彼女は少し黙った後にこくりと頷いた

いつも静かな彼女だが今回は少し様子が変だ

何かありそうではあるが聞かなかった

マスターからの命令とは珍しい

「珍しいなぁ。しっかしアラタたちも出るってなるしそれはそうなるかもな」

狼男が言う

アラタは金髪の人で初期メンバーの1人だ

糸使いのレイ

毒女のロウ

剣使いのアラタとオール

炎使いのカエン

吸血双子のゼロとゼル

感情使いの黒

全員で8名

その中でサポートを担当しているのがパゴニアである

いつもならメンバーの1人と行動しているはずだが今回はなし

こちらとしては異常な程、不思議な事だ

「あいつらには勝てないよ。実績も化け物だしな」

ロザリアの姿でモニターを見ながら言う

初期メンバー達の実力は計り知れない

そう話していると彼女はぺこりとお辞儀する

「……では私はそろそろ処理していかないと行けないので…ここで失礼します」

無表情のまま彼女はそう言い、部屋を出た

「おー!頑張れよー」

狼男が見送る

するとロザリアの姿をした彼は椅子から立ち上がる

「さて…ミルト。俺達も準備しようか」



ミルトの顔を見て、ニコッとしながら言う

「…そうだなりょふ」

そう話したあと、彼らも部屋を後にした

パゴニアは2人が出ていくのを確認したあとまた部屋に入る

ガサゴソと物色すると、とある写真が本の間からぱらりと地面に落ちる

彼女は拾い上げた

「……やはりあの方たちも処理するべきでしょうか…マスター」

インカムに手を当てながら話す

『大丈夫大丈夫〜!あいつらも役に立って貰わないと勿体ないからさぁ〜。記憶が戻っているのだとしたら余計に面白そうじゃない?』

ワクワクとした雰囲気が聞くだけで分かる

「そうですか……ならこの写真をどう致しましょう…」

写真を見つめそう聞くとマスターは楽しそうに答える

『そりゃあもう……』


"楽しくなる瞬間に、壊す他ないよねぇ"


その言葉を聞きながらパゴニアは無表情のまま写真を回収する

『それじゃあ監視は任せたよ?パゴちゃん』


「はい…マスター……仰せのままに」


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