勇者の葬儀に参加したモブ爺さんの会話

広畝 K

第1話

一つの時代が終わった。


魔王を討伐した勇者の訃報。


大往生だってよ。


七十年も生きたんだ。


この時世では十分な長生きだろうさ。


葬儀には勇者の仲間も参列していたな。



人間の司教。


ドワーフの戦士。


エルフの魔法使い。



三人とも涙を流していなかったが、薄情だとは思わない。


あの生臭坊主は、アレだ。


あいつは、なにしろ勇者の幼馴染だ。


他の二人だって十年も一緒に旅をしている。


十年だぞ?


魔王を倒すために、十年間を共に行動している。


その旅路を生きて越えるのに、どれだけの苦難があったか想像できるか?


まあ、あいつはクソみたいな思い出ばかりの楽しい旅だと笑っていたがね。


んなわけねぇだろ……。


どれだけ死んだと思ってやがる。


あいつらが、どれだけ背負ってるのか……俺らが想像できないとでも思ってんのか?


クソが、なんで俺たちはこんなに弱いんだ……。



あ? 飲み過ぎだって?


俺も長くはないしな。


院長先生も亡くなったし、未練なんてねぇよ。



うわ、こいつ、いきなり泣き出す奴があるか。


あーもう、涙と鼻水でぐっちゃぐちゃじゃねぇかよ。ったくよ……。


ほら、これで顔を拭け。


拭けない? 拭いてくれ?


クソ、なんで俺がこんなことを。


あーもう、分かった。分かりましたよ。


もう飲まない。オーケー?


だから泣くな。な?


おい、なに笑ってんだマスター。


まだまだ死ねませんね、じゃねーんだわ!


お前も泣きながら笑ってんじゃねーよ!

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