第32話

「おじゃまします」


「みんなまだいないよ」


「秋くんは?」


「部活かな?」


「そーなの?」


「だから、2人きりだよ。おいで、リビングのソファー空いてる」


俺のお気に入りである。


「わーい!いいねーこれ」


「はー尚巳のこと悪く言うのまじむかつく。ねぇ癒して」


「冬?疲れた?」


「ごめん。ちょっとだけ抱きついていい?」


「うん!いいよ、おいでー」


これじゃトラジとか母さんと同じような感じだけど…ま、いっか。


「俺のことガリ勉だって。そんな風に思うやついるんだな。なんか、勉強しちゃまずいみたいじゃん」


「冬は勉強好き?」


「普通かな?」


「尚巳は勉強やろうと思うけど、うーん、難しい」


「嫌ならしなくていいよ」


ふわふわしてて、あったかくて。落ち着く。


「冬。大好き」


「くっそ、かわいい。なんだこの髪は!柔らかくてつやつやしてる」


「そうかなぁ?」


「うん、いい匂い…ごめん、テスト訂正するのに」


うかれて脱線してた。


「ううん」


「あ、ごめん。髪の毛ぼさぼさにしちゃった」


「冬は結ぶの得意?」


「え?やったことない」


「尚巳できなくて」


「そうなの?結ぶの持ってないの?」


「あるよ?のんちゃんにもらったりする」


尚巳はかばんをごそごそして、うさぎのついたゴムを取り出した。ちょっと尚巳には幼稚かな?


「ほら!のんちゃんの」


「そっか。俺にできるかな」


「のんちゃんは上手だよ」


「そういや結んでたような…のんちゃんは教えてくれなかった?」


「教えてもらったけど、ひとりじゃできなくて」


「そう。のんちゃんに習おうかな」


「冬がしてくれるの?」


「するよ?尚巳がしたいならね」


「わーい」


男の俺にできるか謎だけど。結んでもかわいいと思うな。

さて、ワチャワチゃして、テスト訂正とかできねー。尚巳を送って帰って、リビングで自分のテスト訂正を終わらせる。


「ただいまー」


「お帰り」


「なん?冬はリビングで勉強してるのか?」


「まぁ、そんな気分だから」


「ん?これなに?」


秋の持ってるのはヘアゴムかな。うさぎがついてる。


「…忘れ物」


「…尚巳ちゃんか。2人で勉強?」


「いや、しゃべって終わった」


「冬、尚巳ちゃんにはよく話すよな」


「うるさ。よくしゃべるのは尚巳」


「あー俺も彼女作ろっ」


「勝手にしろ。早く作れよ」


秋はモテるんだからな。

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