第29話

「ねー秋くんは勉強?」


「たぶんゲーム」


「お兄ちゃんは彼女の家で勉強だよ」


「そっか」


尚巳は兄の情報をよくくれる。


「尚巳といるのが一番楽しい」


「公園でアイス食べてるだけだけどー」


「別になんでも。尚巳としゃべってるのが楽しい」


だって、こんなにアイス食べるの嬉しそうだし。


「冬…?」


「あ、にーちゃん?」


公園に、なぜにーちゃん?


「ん!?冬のお兄ちゃん?!」


「…冬の彼女?」


「あ、こんにちは!柴田尚巳です!よろしくお願いします」


尚巳はアイス持ちながらも、ぺこりとお辞儀した。


「うるさいから」


「あーその制服!うちのお兄ちゃんと同じ学校だ!のんちゃんの学校!」


「そうなの?えっと…今から塾?」


「あぁ、うん。冬、テスト勉強は?」


「いや…」


「冬がデートしたいって言ってて!デートしてます!」


「こら。しゃべるなよ」


「冬をよろしくね」


「はーい!冬のお兄ちゃんかっこいいね」


「…そりゃそうだけど…」


「あー!アイス溶けちゃうー!」


「なにやってんだよ」


「じゃ、仲良くな」


恥ずかしい。

なにやってんだよ俺。こうもっと、冷静に?できないのかよー


「あー尚巳のことちゃんと紹介できなかった…」


「自分で紹介ひたよ?」


「そうだな…でも、あーだめだ。気が 動転した!」


「そう?お兄ちゃんは何年生?」


「2年」


「じゃあうちのお兄ちゃんと同じ」


「え?そうなの?知らないなぁ…あ、尚巳こぼれた」


「あーもったいない。また買いに行こうね」


「うん」


「お兄ちゃんにね、冬のこと話したんだけどね」


「え、うん?」


「なおみのなにがいいかわからない!って!ひどいよねー」


お父さんみたいな兄ちゃんなのか?


「そんなもんだろ?尚巳のよさは俺が知ってたらいいや」


「そっかー!ねーなおみのよさは?ねー教えて」


「何回も言ってるけど、かわいいとこかな?」


「ありがと!」


「笑顔もかわいい」


「やったー!あ、手がベタベタだったー」


抱きつかれそうだったけど辞めた。尚巳の手にアイスがついてて…しずくがズボンに落ちた。


「あー制服につけたな」


「ごめーん」


「おしおきしようか?」


「えーなに?ん」


「んーアイスの味」


「んー。冬もアイスの味」


「んなわけない。なおみのでしょ」


あーあ。こんなとこで俺はなんてことしてんだ。でも楽しくて嬉しくて。気分がいい。

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