夏休み

第19話

弟の秋は脳を損傷してから、忘れっぽくなった。そして、感情的になりやすい。


冬は心的外傷があり、感情が不安定で、体調にも影響が出ている。そして、考え込みやすい。


俺はというと、片足を失っただけで、心はそのままだ。でも、少し弱気になったかも。


「にーちゃーん!今日、冬がテニスの応援に来た」


ソファーに座ると双子は寄ってくる。俺はいつも挟まれる。


「え、テニス?秋はなんでもやってるな」


「まーねー」

「応援はついでだよ」


「にーちゃんはー今日デートだった?」


「いや、塾のあと友達と遊んでた」


「えーそうなの?ゲーセンとか?」


「まぁそんな感じ」


「にーちゃんの彼女バイト忙しいんじゃない?夏休みだし」


冬は配慮があるなぁ。


「たぶん…」


最近連絡ないし、塾も来ない。きっと忙しいのだろう。高校って大変なのかも?


「で、冬はデートばっかりだよな?最近毎日?」


「…尚巳は友達と遊ぶ予定多いから、毎日ではないけど…」


別に責めてないけど、俺のことを思って大っぴらに喜べないようだ。


「えー毎日遊ぶとかどんだけー!俺とも遊べよ冬!」


「遊んでる!昨日ゲームしたじゃん」


双子は仲良しだ。


「トラジはいつ休みかな?夏休みどっか連れて行ってくれないかな?なぁ、秋聞いてないか?」


「あー、明日は無理って。あとは知らないけどーたぶん暇そう!」


「でも事務所変えたんでしょ?今年は夏休みも忙しいかもよ?」


冬はトラジまで配慮してる。うーん、そこまで考えなくていいのにな。


「ちょとー!二郎くんじゃなくてお父さんに頼んだら?」


母さんから声がかかる。机で仕事しつつ、ちゃっかり話を聞いてる。


「トラジもいてほしい!」


秋はあっさりと言った。だよな、俺もだ。


「あーそーですか。私は行かないから」


相変わらず母は外出嫌いだ。

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