第18話

先生と話して気が紛れたかな、と思ったけどだめだ。


「トラジ!…どこいるの?」


「おー秋仕事だ。どうした?」


「話、してもいい?」


「なんだ?」


「嫌なことがあった…すごいイライラして、抑えられなくて。自分じゃなくなってるような気がする…俺は秋?」


「秋は秋だ。どうした」


「明日病院行く」


「いいぞ。冬は?」


「明日は、たぶん家で勉強じゃないかな」


「おし、公園で待ち合わせな?」


「わかった…ねぇトラジ、冬は今は元気だけど…また冬じゃなくなったら嫌だ。ねぇトラジ、病院…」


「ごめんな、秋。無理やり連れて行けない。冬が、その気にならないと…できない」


「わかってる。先生と明日また話してみるね」


「おう、早く寝ろよな」


はー。トラジはいつもと一緒だ。変わらずいてくれて、安心した。


「秋おかえり、携帯やっと見つかった?」


「おーそうなんだよ」


「秋ったら、暗い中よく探したねー」


「うん」


晩ご飯はできていた。母さんもいて、いつも通りだ。


「尚巳にもう話したから。もう探さないよ。秋に迷惑かけてごめん」


「いやいいよ。尚巳ちゃんに頼まれたなら」


「冬が応援したんでしょ?よかったね、秋」


「まー俺は下手で負けたけどね」


「いや秋やる気全然なかったでしょ。投げやりだった」


「まーね。飽きるよねー長引くと」


「あら。長引いてたのね。それは疲れそう」


「まじで?俺が途中止めたから?」


「いやいや、その前から長引いてたんだよなー」


「秋大変だな。よし、課題やるかな」


冬は茶碗を片付けて自室へ。


「…母さん、明日トラジと病院行く」


「秋?どうしたの?」


「なんか、イライラして、怖かった」


「…もう、なんで二郎くんに先に言っちゃうの?」


「だって、トラジ好きだもん」


「羨ましい」


母さんに抱きしめられた。もう子供じゃないのに。トラジと一緒のことするもんな。

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