第17話
眩しい日差しの中のテニス。日焼けする。
「秋くーん!」
人気者の金井くんだ。練習試合に申し分もない実力。他校だが、毎回試合に出ている常連で、部活には所属していない。他校との交流試合にも出て知り合いにはなったが…顧問の先生も彼のことはよく知らないようだ。
しかし、途中中断する騒ぎに。いつも温厚な金井くんが青ざめた表情をしていた。
それから試合に戻ったが、いまいち振るわなかった。
「弟さんが見に来てくれて緊張したかな」
試合も終わって、片付けも終わってみんな帰ったのに、ベンチに座ったままの金井くん。うっかり声をかけていた。
「いえ…」
どうやら落ち込んでいる。隣に座っても動かない。
「金井くん、部活好きなのになんで入らないのかな」
「先生、弟が、心配なんです。今日先生がすぐ声を上げてくれて…ほんとに、よかった」
その目には涙が浮かんでいた。
「もし、弟になにかあったら…俺、怖いです」
「…なんでそんなに怖いのかな」
「冬が、…もう誰も信じられなくて、なんでも自分のせいにして…そんなの嫌だ」
思い詰めた金井くんは、いつもと違った。
心配になり、一応顧問に(所属してないけど)連絡先を聞いていて得た電話番号にかける。その場にいるのに、金井くんは反応しない。
「金井さんのお宅ですか?」
「はい。金井ですが」
携帯は奪われていた。
「おー冬!もう帰ってたのか?」
「え、秋?誰の携帯?」
「あー先生の。ほら、今日会ったじゃん」
「おーそうか。お礼言っといて。んで、なんで電話?」
「あー、携帯どっかやってさ。ちょっと探してから帰るから」
「わかった」
電話は切られて、返された。
「すみませんでした」
この子は…
「俺は平気です。最近嫌なことあって。薬飲むから大丈夫です」
「金井くんは、持病があるのかな」
「あー、事故の後遺症で。疲れたら感情が抑えられなくなるんです。…でも、そういうとき誰かに話せてよかったです。迷惑かけてすみません」
ぺこりと頭を下げた金井くんは、立ち去って行った。彼はスポーツをしてると、気が紛れるのかな。他の部活の助っ人もしてるらしいから。
彼は、よほど弟さんに気をかけているようだ。
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