第8話

約束の明後日に、尚巳の家に行った。家の場所は知ってたから。


「パパー彼氏来たよ」


うぉ!そんな紹介…照れる。


「なに?うける、なにねらい?」


これが、お父さん?若い…トラジと同じくらいに見える…。髪長いし。


「尚巳ねらい?」


「ちょ、いや、そうじゃなくて、あの、金井友冬かねいともふゆと言います。尚巳さんと仲良くさせ」


「まじかーお前尚巳のなにがいいわけ?」


最後まで言わせてもらえなかった。


「え…」


「こいつまじばかだし?」


「そんなことないです」


「パパもーいーよその話」


「へ、尚巳うける。とりま、うちの家業見れや」


さっさとどこかに行ってしまう。慌てて靴を脱いで、尚巳のお父さんを追いかける。尚巳ももちろん一緒にいる。


「ほら、お前こういうのどーよ?」


追いかけた先の部屋は、水槽がたくさんあり、中にはなにか動いている。


「冬は見れる?」


尚巳は水槽を指差す。じーっと見るとなにか分かった。そういえば尚巳言ってたな。


「爬虫類は、まぁ、平気です」


「なぬ」


尚巳のお父さんは一気にテンションが上がったような気がする。


「尚巳はねぇ、餌やりとか掃除してるんだよ?」


「へぇ。そうなんだ」


「友達には言わないでよ?お兄ちゃんが言ったら嫌われるって。でもね、冬なら話してもいいかなーって」


女子の友達には、誰にも話してないんだろうな…そう考えると家に送ったときから、話してもいいかなって思われて話された?そうだとしたら嬉しい。


「お前名前が冬なわけ?」


友冬ともふゆです」


「ふーん。冬眠の時期だな」


謎に頷くお父さんだ。トラジみたいなピアスが揺れた。


「パパ。もういーでしょ?」


「ったく。お前らの知り合いの出入り多いな」


「冬をおばあちゃんにも紹介するー!」


尚巳はさっさと手を引いてこの部屋から出て行く。でもさっきのドアと違うんだけど。


「え、どこ行くの」


「ここを通ると!リビング!おばあちゃん、ほら冬」


なるほど、ここからもリビングに通じてるのか。誰もいないけど。


「あれー?買い物かも。部屋に行こう!」


連れてかれる。いつもと逆だ。

尚巳の部屋は思ってたより綺麗。おばあちゃんが片付けてんのか?服がたくさんハンガーにかかってる。尚巳がベットの横の足元に座ったから隣に座る。


「パパうるさくて嫌になったでしょ」


「いや…めんどくさいって別の意味かと。それより若い!兄かと思った」


「お兄ちゃんなわけないよー。冬、緊張した?」


「したけど、よくわからなくなった」


喜ばれた気もしたし…?


「よーしよし。冬、いいこ」


また抱きつかれた。今日は隣に座ってたので、ハグという感じか。

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