第4話
「俺、もともとは髪の毛に色はあったんだけど、事故にあって、次の日白くなって。白髪しか生えなくなった」
「事故?けがしたの?」
「…俺じゃなくて、俺の兄が。俺たちを守ってくれて、それで…片足なくしたんだ」
「そうなの?」
ずっと言いたかった。秋に言ったら傷つく。でも、トラジにも言えない。
「…うん、どうしてにーちゃんなんだって何回も思った。俺が代わりになれたらいいのにってずっと思ってる。それでもこの状況は変わらない。今まで簡単にできてたことができなくなって、悔しそうにしてるにーちゃんを、俺は見てることしか、できない」
どうしたらいいかわからない。俺も前の俺じゃなくなってる。
「ねぇ冬。ぎゅーってしてあげる」
突然尚巳は立ち上がったと思ったら、抱きしめられた。
「なに、え」
しかし、座ってるから首を抱きしめられた形になって、尚巳の胸に顔を埋めてる。
「おばちゃんがしてくれるんだぁ。寂しいときに」
「おばちゃんってどこの誰だよ…」
「冬もお兄ちゃん大好きなんだね」
「もって…うん、まあそっか」
「尚巳のお兄ちゃんはね、頭が良くてね、それにかわいい彼女いるんだよー?」
「…」
「でね、尚巳がバカなこと言ってたら怒ってくれるの」
「尚巳、俺はお兄ちゃんと一緒になれそう」
「なーにそれ?」
尚巳は俺から離れて顔を覗き込む。
「同じじゃん俺と」
「えー?そうかな?」
「頭いいでしょ?かわいい彼女はいるでしょ?」
「えー?」
「尚巳のこと怒ってやるし?」
ほっぺを触るとぷにぷにとしていた。
顔近いとキスしたくなるのだろうか?
「ん」
「俺のことも大好き?」
「大好き?んーと」
「ご飯は大好きってすぐ言っただろ?」
「冬は大好きって言ってほしい?」
「言ってよ」
「大好き」
「…く、かわいい」
正面から言われたら恥ずかしくなる。
「ねー冬はなんでいきなりちゅーしたの?」
「なんとなく…」
「急にしたからぜーんぜんわかんなかった!冬近いなーと思ってたらぶつかったーって感じ?」
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