第3話

「あらまー!冬!」


今日はなぜか母さんが居間にいる。休みだったのか?


「こんにちはー!柴田尚巳しばたなおみです」


「秋は今日出かけてたよね?」


「そうだけど…?この間会ったかわいいこちゃんね~」


珍しく母さんは尚巳にかけよる。そして、その手を握って見つめていた。


「お母さんもかわいいです!」


「もってなんだよ」


「わー嬉しい。もー冬、いじわる言わないの!」


母さんは楽しそうにしてる。尚巳のこと気に入ってる?だって兄ちゃんの彼女の手なんか握ってなかった。


「尚巳ちゃん、かわいい」


「えへへ。ねー冬のお部屋は?あるの?」


母さんを無視してしゃべる尚巳はマイペースだ。


「あるよ。秋と同じ部屋」


「冬、ねぇお母さん尚巳ちゃんとお話できて嬉しい!尚巳ちゃんすごいかわいい!お人形さんみたい」


母さんは尚巳を相当気に入ってるようだ。嬉しいけど、うるさい。ここから移動せねば…


「母さんもうだめ。ほら尚巳こっち」


「うん」


手を勝手に剥がして、尚巳を引き連れて部屋に連れて行く。母さんは名残惜しそうにしていた。


「ここ」


「わーお兄ちゃんみたいに本いっぱい」


「参考書とかね」


暑いからエアコンをつける。その間尚巳はキョロキョロして部屋中見てる。


「こっちの机は?ゲームとか雑誌いっぱいあるー」


勉強全然してない物置のような机である。


「それは秋の。俺もゲームやったりする」


「へー!」


「尚巳、とりあえず座れ。いっぱい歩いたし」


尚巳に秋の机の椅子を勧める。俺は隣の自分の席。


「失礼!飲み物お持ちしましたー」


突然ノックなしで、母さんが乱入してきた。


「わー!ありがとうございまーす」


「いいのに」


「いいから。ごめんね、麦茶しかなくて」


尚巳をじっくり眺めて麦茶を置いた。


「大丈夫でーす」


「ごゆっくりー」


にこにこした母さんが出て行く。まったく、しつこいな。でも、なんだか話せる気がしてきた。


「尚巳、この前の写真覚えてる?」


「うん?髪の毛白いの?」


「それ」


「うん。それが?」

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