#28



獣肉ーー骨がついたでっかい生肉だ。


冒険者ギルドでは冒険に役立つ様々な道具をレンタルすることが出来る。


そのひとつに支給品肉焼きセットなるものがある。


火打石、焚き火台、Y字型の棒2本、それとL字に持ち手を付けたハンドル。


Y字型の棒2本を立てて、そこに骨付き肉を橋を渡すように乗っけて、ハンドルを骨に取り付けグルグル回しながら下から炙って肉焼くヤツ。


これで獣肉を焼く訳だが、残念ながら薪はセットに含まれてない。薪が無いと肉焼けない。


というわけで薪拾い。



「どっからどうみても雑草だろうが!バカがっ!」


「ひぅっ……!?」



薪だって言ってるのにアリルが得意気にむしりたてと雑草拾ってきたのはご愛嬌。草だから燃えるじゃんと思うかも知れないが、むしりたては水分多くて燃えづらいのである。


しっかしアリルちゃんはホント雑草大好きね。なんなの?シンパシーでも感じてんの?頑なに雑草しか取らないその姿勢なんなの?可愛いか?


ちなみにセランちゃんはちゃんと薪を拾ってきた。マジで偉すぎる。ホントセランちゃんしゅき。それが1時間かけて両手に1本づつの計2本しか集めて無くても、草むしりしてたポンコツとはえらい違いである。



「肉を焼きマースッ!」



いつものボロ宿の庭を借りて火を起こす。お待ちかねの肉焼きタイムだ。


肉をセットしてくるくる回して直火炙り。


肉焼きのコツは、お馴染みの肉焼きBGMが終わってから「ポンポンポン」のタイミングで肉を火からあげる。すると「上手に焼けましたー!」ってなる。「ポンポンポン」のリズムがとれないリズム音痴はBGM終わってハンドルが左斜め下あたりに来た時タイミングの目押しでも上手に焼ける。それも無理なら猫に生肉渡してよろず焼きしてもらうように。


というわけで獣肉上手に焼けまして、こんがり獣肉になりましたと。



「……楽しそう」



肉を焼いてる俺を見ていたアリルが呟いた。



「ご、ゴホンッ!まったくキミは肉を焼くのも下手くそだね!これだから凡夫は何をやらせてもダメだ!ここはこのボクが肉焼きの手本を見せてあげようじゃないか!ほらっ!ボクに肉を焼かせたまえよ!」



はいはい。肉焼きたいのね。分かった分かった。やらせてあげる。


そんなんでアリルに肉を焼かせてみた。



「う、うわぁぁぁっ!?火がっ、うわぁあ!?肉焦げタァっーー!?!!」



そして、案の定、俺が初めに焼いてみせた獣肉以外の残り全ての獣肉を炭に錬成するのであった。







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