#24



「パン美味しいっー!」



上機嫌でパンを食べるアリル。今日もいっぱい草むしりして、薬草無駄にして、スライムと戯れたんもんね。お疲れ様だね。たんとお食べ。


カツアゲ借金のカタにセランちゃんの身柄を確保してから、しばらくが経った。


最近ではパーティーの収入も安定してきた。まぁ、アリルの収入は安定してマイナスだけど、セランちゃんの収入はちょっとだけある。セランちゃんは凄いぞ。5分の1の確率で薬草を集められるし、5分の1の確率で下級ポーションも作れる。スライムには勝てんけど。おかげさまで3人揃って3食パンが食べられて、ボロ宿の一室に3人1緒に毎日寝泊まり出来ている。


一人一部屋借りられないこともないが、俺が全力でアリル様を言いくるめて継続中。女の子との同室寝泊まりは全力死守だ。深夜にはセランちゃんとチョメチョメ、朝はアリルのおはちゅっちゅっ。こんな素敵な生活手放すつもりは毛頭ない。


今日も今日とてパンが美味いぜ。


このパン。安い割にはそこそこ美味い。いつも助かる。



「…………」


「……?セランちゃんどうかした?そんなパンをジッと見つめて。食べないの?」



口いっぱいにパンを含んでリスみたいくなってるアリルとは裏腹に、セランちゃんは自分のパンに手を付けずボケッとしていた。



「あ、あの……その……。なんか思ってたのと違くて……」


「なにが?」


「もっと、その、ぼくのことはボロ雑巾のように扱われるのかと思ってました。それなのにちゃんと3食パン食べさせてもらって……ホントにいいんでしょうか?」


「なんで?セランちゃんのパンなんだから食べなよ」


「ぼく……役立たずだから、今まで3食ちゃんと食べることって無くて……。役立たずなのは何も変わってないのに、こうして食べてていいのかなって……」



どんよりと辛気臭い雰囲気を漂わせながらセランちゃんはポツリポツリと語っていく。



「1人だったら、1日にパン一個も食べられてなかったのに、それなのに今はこうして3食パンが食べられて……これ、殆どがカラサワさんが稼いでくれたものですよね……?」


「いや、パーティーとして稼いだ金で買ったものだ。だからパーティーメンバーであるセランちゃんもちゃんとパンを食べる権利がある」


「で、でも……!ぼく、ほとんど役に立ってませんし……」


「それを言うならアリルの方がクソの役にもたってない。そのアリルがさも当然の様にパン食ってるからね。セランちゃんも気にしなくていい。セランちゃんは頑張ってる。薬草集められるし、お薬だって作れる。ちゃんと貢献してくれてる」


「でも……!ぼく1人だけだったら、こんな3食パン食べられてませんし……。ぼくら無しでカラサワさんがひとりの方がもっとパンを食べられるんじゃ……!」


「いや、ひとりでもこれ以上パンは食わんわ。他の食う」


「へ?」


「えっ?」


「…………」


「…………」



今更だけど、なんでパンばっか食ってんだろうね。









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