#23



ーー名前は?


「せ、セランと申します」


ーーいつから冒険者やってるの?


「つい最近……1週間前ぐらいから」


ーーなんで冒険者に?


「ぼく……なにをやってもダメで……それで家族に「このグズ!ノロマ!アンタはホントなんにも出来ないね!役立たずに食わせるメシは無いよ!出ていきな!」って家族に家から追い出されてしまって……それで冒険者になりました」


ーー酷い家族だね。


「いえ……そんなことは……全部ぼくが悪いんです……」


ーー冒険者のランクは?


「ランク……まだ1です。スライムが倒せなくて」


ーーほう?それはつまり薬草採取と下級ポーション調合は出来ると?


「えっ……。あ、はい。それぐらいなら……」


ーー素晴らしいッ!


「えっ、えっ、えぇ……?」


ーーゴホンッ。んで?こういうことをするのは初めて?


「あ、あの……これから何をするんですか……?」


ーー身体で払って貰うって言ったよね?


「は、はい……」


ーー大丈夫。優しくするから。


「あっ、あっ、こんな……!だ、ダメですぅ……!」


ーー抵抗すんじゃねぇよ!グへへへへ!


「きゃーーーー!」




この世界は弱肉強食。弱者は淘汰され、強者のみが生き残る。弱者には人権も尊厳も無い。弱者を守る法など存在してはいないのだ。


弱者が生き残る道はひとつ。強者に媚びへつらい、縋り付き、お情けを恵んで貰う為にこうべを垂れてつくばい、その身を差し出すしかない。





◇◇◇◇





パーティーのランクはパーティー内の1番ランクが高い人を基準とするので、ランク1のセランちゃんが加わってもパーティーとしてのランクは3だ。だからパーティーを組んでいればセランちゃんも上のランクの依頼を受けられる。


とりあえず早々にスライム討伐をこなしてセランちゃんのランクを2に上げてあげる。あとは適当に依頼をこなしてポイントを稼いで、ランクを上げていけばアイアン上限のランク20まで上げることが出来る。


セランちゃんの登場で出鼻をくじかれたが、改めてはじまりの草原第2エリアに3人で向かった。


受けてきた依頼は[赤キノコ採取]だ。


薬草程では無いが赤キノコもそこら中に生えている。本来ならば難しい依頼では無い。本来ならば。



「どっからどう見てもキノコじゃなくて雑草じゃねぇか!バカがッ!」


「ひうっ……!?」



赤キノコの採取だと言ってるのに、得意気に雑草を集めてきたアリル。問答無用で雑草は地面に叩きつけた。



「あ、あの……これ……。赤キノコ、見つけられなくて……ごめんなさい」



大変申し訳なさそうにセランちゃんはおずおずと草の束を差し出してきた。


雑草8割。薬草2割。



「素晴らしいっ!」


「ふぇ……!?」


「凄いぞセランちゃん!セランちゃんは薬草を集めることが出来るんだね!凄い!偉い!賢い!いい子!大好き!愛してる!俺の嫁!」


「ふ、ふわぁ……」



俺は感激のあまりセランちゃんを抱きしめて、わしゃわしゃと頭を撫でくりまわした。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る