11監獄

 その日の深夜、部屋で待機していたルネは王城内が騒がしくなったことで寝間着を脱いだ。そして、漆黒のローブを身につける。月のない日だと、長い黒髪とローブは夜と一緒になる。闇に溶けてなくなってしまえば良いのにと思ってしまう。


 その時、部屋の扉が強めに三回ノックされた。


「ヴァイス様! 起きていらっしゃいますか!」


 ルネは今一度身なりを確認して、扉の向こうに声を掛ける


「起きていますよ」


 扉を開けたルネは、自分を呼びに来た衛兵に「呼びに来て下さってありがとうございました」と礼を言ってから、部屋を後にした。鍵など掛けなくても良い。もうこの部屋に戻ってくることなどないのだから。




 部屋を後にしたルネは、王城で一番高い所に来ていた。ここは役職持ち以外は立ち入り禁止となっている。そこかしこに魔術を刻まれた特別な部屋だ。


 そこでは、宰相がルネを待っていた。


「ルネ・ヴァイス、来ましたか」

「はい。このための命ですから」

「貴方を宮廷魔導師にして良かった。今はまだ被害は軽微ですから、待機していてください」

「……あの、一つ質問しても良いですか?」

「なんでしょう?」

「六代目はどのような気持ちで、この国を守ったのでしょう?」

「私にはわかりません。ただ、アドラーが平和に暮らせる世界を願っていたようです」

「そう、ですか」


 それなら、私は両親のためにこの命を懸けよう。ルネはそう思って気持ちを落ち着ける。


「では、精神が乱れてはいけませんので私は外で控えております。貴方の力が必要になったときは、声を掛けます」


「わかりました」


 部屋を出て行く宰相を見送って、ルネは部屋の床に座り込む。家具も何もないこの部屋は、まるで牢獄だった。

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