悲しい話が好き

 夢を見た。なんだかよくわからないファンタジーな夢だったけれど、元彼がでてきて、恐らく好き合っているような、そんな雰囲気だった。

 元彼は定期的に私の夢にでてきて、その度に2人共幸せそうなのが、現実の私には重しになる。付き合っていた期間に幸せな瞬間がなかったのかと聞かれれば、それは確かにあったのだが、もっと幸せでいたかったと、過去の自分を救ってあげたいと思ってしまう。

 今日も、夢にでてくるまでは良かった。目が覚めたら、2人で旅行にでかけた時の、それはもう幸せな瞬間を思い出してしまって、辛い。それが今まで忘れていた記憶であったから、尚更。なんで今日に限って思い出したんだろう。

 私はその幸せな数十分を、何度も何度も思い返した。ビデオテープだったら擦り切れていただろうね。

 たまに、いや、しばしば、雑に抱かれたいと思う。私のことを好きだと微塵も感じないような、そんな風に。

 それでしか得られない、絶望感があるんだよ。私のことを本当はどうとも思っていないのに、身体本能が求めている。それがね、堪らなくぞくぞくするんだよ。なんて言えば良いのかな……。うーん、私の中身には価値がないのに、私の身体にはまだ価値が残っている、ていうのが、生きる価値を失っても、まだこの世に存在できるのが嬉しい、嬉しい?のかな……。まぁ、今は昔よりも太ってしまって、身体にも価値は残ってないと思うが。

 閑話休題。

 私は、絶望したくて堪らないんだろうね。絶望に打ちのめされて、私は生きてる価値がない人間だと実感したいのさ。私はキラキラした理想の自分になりたくて頑張っているけど、頑張って立ち上がるほど、足元にある生きてる価値がないという事実暗闇が、私を地べたに引きずり下ろすのだ。私はいつもそれに負ける。絶望は、誰よりも優しい。本当はその優しさに包まれて、いつまでもぷかぷか漂っていたいのさ。そうしたら、傷つくこともない。頑張らなくていい。そもそも生きてる価値がないのに、何故頑張っているんだ。どんなに頑張っても、生きてる価値がないのには変わらないのにね。

 ん? あぁ、私が生きてる価値がないと理解した出来事についてはまだ話していなかったね。でもそれは、また今度にしよう。今は自分の貞操観念について考えるのでいっぱいいっぱいなんだ。

 たぶん私は、貞操観念がめちゃくちゃに低い。自分を大切にしろとどこかの漫画のキャラが言っていたが……自分の存在を大切にするためには、自分の身体を差し出すしかなかったんだよ。いや、傍から見れば、私は恋人と少しエッチなことをしてるだけのように見えるんだろうけど、私にとっては、唯一生きることを許された時間だったのだよ。……優しくしないでくれ。




 えぇと、なんだったかな。すまない。ぼーっとしていたよ。それで、そう、貞操観念だね。貞操観念をどうしたら高くなるかを考えたかったんだよ。

 んー……どうだろなんだろうね。結局、自分に生きてる価値があると思えない限り、自分の身体も大事にできないのか? いや、今の私には旦那さんと子どもがいて、それがストッパーになっている。本当に? わかんないけど。旦那さんは私のことを愛してくれている。これは本当だ。でも、私は自分のことを愛せない。この差が辛い。昔は、旦那さんの愛に溺れているだけでよかった。ずっと、溺れていればよかったのだ。それなのに、海から出て、一人でも立とうとするからこうなったのだ。一度陸に上がってしまえば、もう海の中では呼吸できないのに。

 はぁ。何がしたいのかわからなくなってしまったよ。とりあえず私は、旦那さんに雑に抱かれたら良いということか。自分を傷つけられれば何でも良いんだろうな。どんだけ被害者ぶりたいんだよ。何もしないくせに、しようとしないくせに、泣くな。

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