それは流星のように美しかった。


風で揺れる髪は日を反射し、私の目を傷めた。


ふと、誰かが嗤った。


「おい、アイツ見惚れてるぞ」


それは伝播しいつしか髪をなびかせた子に伝わった。


その子は僕を睨んだ。


それに相反し僕は微笑んだ。


彼女は僕を気味悪がって数人を連れどこかへ行った。


ふと足音に気づき後ろを振り向く。


それと同時に僕は殴られた。


「やめてやれよ」


この言葉の意味がどちらか、視界を奪われた僕には理解できなかった。


殴るのを「やめてやれ」なのか、


見惚れるのを「やめてやれ」なのか。


が、頭より身体が先に理解した。


また、殴られたから。


ミ人がかりで殴られる僕の身体は立つも苦しい脚になった。


しばらくし、僕の顔面に唾を吐きミ人はどこかへ行った。


地に寝そべり夕日に照らされた空を見た。


さっきの髪より美しかった。


だから僕は彼女を見るのをやめた。


_


生憎、雨だった。


空は曇り、雫を垂らした。


僕は見惚れた。


落ち行く雫は美しく、空に這う雲は拙く。


いつまでもこの時間が続いて欲しくて惜しくて堪らぬ、そんな感情。


憂鬱を感じざるを得ないこの額から落ちゆく雨水は僕の熱った痛みを還す。


服の重さとはまた違う足取りの重さを感じながら、行く。


どこへいく?


あの場所、なんて神聖なものは記憶になく。


場所という概念が危ういこの脳味噌には雨水が詰まっているのかもしれない。


_


程なくして着いた、この駅は厳かな雰囲気を嗜んでいるように見えた。


改札はなく、ただホームと駅名しかなく。


屋根も、ベンチも。


濃厚な霧とひたすらに降る雨ばかりが我の存在を感じさせる。


無に帰した脳が制御する視線の先に、さっきの光景が見えた。


踊る阿呆に見る阿呆、そんな気分だ。


見たくて見ているわけじゃないのに、視線を変えられない。


否、変えるべきではない。そう本能が言っている。


今見れば見惚れたあの彼女は然程綺麗に見えない。


頭を冷やせというのは物事を俯瞰してみるためなのだろうか。


さっきまで雨水しかなかった脳は、正常に戻っていた。


「セーブしますか?」


あぁうるさい、うるさい、うるさい。


ここまで上手くいっただろう?


何がおかしい、笑うな、笑うなよ。


頼むから、笑わないでくれ。

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鷹簸 @tacahishi-13

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