第9話【朝】
眩しい…身体がポカポカする…
これは日差し…?
?「―ちゃん。羽闇ちゃんってば。」
それに何処からか私を呼ぶ声がする…
「んうぅ…」
うっすらと瞼を開くと目の前にはドアップされた華弦の顔があった。
「おはよ、羽闇ちゃん♪」
「うひゃあぁぁ!?あだっ!」
慌てて飛び起きてしまいベッドから転げ落ちてしまう。
転げ落ちた私を見てきょとんとしていたがこらえる様にくつくつと笑い始めた。
「かわいー反応♪」
「な、何で華弦が私の部屋に…同じベッドに入っているのよ!?」
「中々起きてこないと思って寝顔を眺めるついでにモーニングコールしに来たんだ♪」
華弦は胡座をかいて楽しそうに自分のスマホを取り出して撮影していた私の寝顔の写真を見せびらかす。
こいつ…勝手に撮りやがって。
「勝手に撮ってるのよ!消しな、さいっ!」
「アハハッ、やーだよ♪待受にしちゃおー」
「こらっ!」
私の写真を削除しようとスマホをぶん取ってやろうとするが華弦は奪われないようにとスマホを持った片手を上に挙げてしまい背の低い私には全く手が届かない。
兎のようにぴょんぴょんと跳ねていると扉の向こうからノックが聞こえた。
「羽闇様、おはようございます。…やはり私が起こしに来た方が良かったでしょうか。」
扉が開くと丁寧にお辞儀をした壱月が現れ、現状を把握したらしく呆れたような表情を浮かべている。
「いや、僕に任せてくれてありがとね萱くん。おかげで羽闇ちゃんてば元気に起きてたよ、そりゃあもう可愛く声をあげる位に♪」
誤解を招くような言い方を…!
「ただの悲鳴!これからは壱月が起こしに来てよね。」
「畏まりました、お召し物をお持ち致しましたので準備が整いましたら食堂へどうぞ。朝食が出来ております。藤鷹様は先に戻られた方が宜しいかと…。」
「おっけ。後でね羽闇ちゃん♪」
華弦はひらひらと手を振って踵を返した。
私も早々に支度を済ませて朝食へと向かっていく。
朝食はどれも豪華なものでいつもなら食欲がそそるのだが、大旦那様や婚約者全員を囲んだ食事は思っより緊張してしまい結局味は殆ど覚えていない。
今日は日曜日。のんびりと過ごしたいところではあるが既に大旦那様に婚約者の誰か1人を選んでデートをする予定を入れられていた。
しかし全員予定が空いているわけではなかったようで唯一オフだったのが1人だけいた。
今、私は運転手を務めてくれる壱月と大広間でその相手が来るのを待っていた。
その相手というのは―
「お待たせ。羽闇ちゃん」
そう、夜空君だ。
壱月のおかげで化粧もお洋服のバッチリきまっている。襟に桜色の小さなリボンの付いた水色のシンプルなワンピースにストラップの付きの白いパンプス、髪は下ろしたままで後ろには白のリボン着けて貰い清楚系な女子へと仕上がった。
お洒落はあまり興味がなくどちらかというと見る方が好きだったけどいつもとは違う自分に生まれ変わった様な気がして少し楽しくなる。
「わぁ、凄く似合っていて可愛いね。」
「えへへ…そうかな。よかった!」
まじまじと私の姿を見ていた星宮君にも気に入って貰えた様で良かった。
「では星宮様もいらっしゃいました事ですし、参りましょうか。」
「はい。2人共今日はよろしくお願いします。」
「そういえばデートって言ってるけど何処に行くか決めているの?」
「勿論。」
「何処?」
私の問いに星宮君がそれはね…と言って小さく笑いこう告げた。
「水族館だよ。」
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