第6話【歴代】
カッコいい…
紺色のサラサラとした髪―
深い闇を秘めた様な紫色の瞳―
執事服を身に纏ったその男性は薄い笑みを浮かべて私にお辞儀をする。
「初めまして、羽闇様。私はこの屋敷で執事を務めさせて頂いております…壱月 萱(いつき かや)と申します。」
壱月さんは足を進め手に持っていた書類の束を大旦那様の机に置いた。
「大旦那様、現在羽闇様を狙っているという組織達の情報データをお持ち致しました。」
「ご苦労だ、壱月。ふむふむ…さて、どうする羽闇?これだけの組織の者共がお主を血眼で捜索しているみたいだぞ。」
大旦那様は壱月さんから渡されたデータを軽く目を通した後、その紙をひらひらと私に見せびらかす。
「羽闇様、此方に住む事になりましたら我々も全力で貴方をお守りする事が出来ますし日常生活でも何不自由させる事はありません。もし今後あのアパートに住むとなりましたら貴方は確実に組織に誘拐されるでしょうね…そうなると流石の我々でも貴方を探しても見つけられる事が難しい事もあるでしょう。」
「ペンダントのおかげで歌の力を発揮出来るじゃない。」
「あくまで伝説です。それにもしそれが仮に本当だとしても奴等は何十年も訓練をこなしてきた様な連中です。貴方では無理です。」
私と壱月さんはバチバチと火花を散らすも彼らは引き下がるつもりはない様子…どうやら私にはもうこの選択しかないらしい。
「…ハァ。わかったわ、此処で暮らせば良いんでしょ。」
まぁ何処の誰だか知れないチンピラごときの花嫁になんてなりたくないし殺されるなんてまっぴらだもの。
とりあえずお言葉に甘えよう。
「決まりじゃな。ではこれより羽闇をこの月光家に迎え入れる。」
「羽闇様。よろしくお願いいたします。」
「此方こそよろしくお願いします。」
これからは大旦那様や壱月さんにお世話になる事になるんだ―私は2人にお辞儀をする。
「―そうと決まれば羽闇。月の姫に選ばれたお前には婚約者を複数人用意してある。その中から好きな者と結婚し、そして後継者をつくって貰う。」
……………
……………
………………………思考が止まってしまった。
この人今何て言った?
婚約者?後継者だって?
「はあぁ〜〜〜!?ちょっと待って聞いてないわよそんな事!!」
私は大旦那様の机を思い切り叩いた。
バァンと音を響かせると大旦那様が飲んでいたであろう珈琲の入ったカップがゆらゆらと揺れている。
「今言ったばかりじゃからな。」
よくもしれっとした顔で…!ほんとムカつく…!
「先程25歳までに力を発揮出来ない者は死に至る…そう話したな。月の姫に選ばれた者にも呪いが解ける条件がある。」
「その条件って何…?」
「月の姫に選ばれた者はな、25歳となるまでに結婚し後継者をつくらなければ、力の発揮出来なかった者同様―死に至る。」
大旦那様は机に目線をやりながら、静かにその言葉を口にした。
「それも代々伝わる伝説、でしょ?」
「そうじゃ。…しかし歴代の月の姫には想いが通じ合っていたとされる相手がいたのだが、その相手がある日突然姿を消してしまってな。その後、歴代は新たな相手も子を宿すこともできず結局は25歳となった途端死に至った…そう月光家の歴史に刻まれているのは確かじゃ。」
「先々代の月の姫ですね。私も月光家の歴史を色々と調べさせて頂いた事がありますが、失踪の理由というのは確か月光家の情報を入手目的とした組織のスパイだったとか。力を発揮出来なかった者―この家では【欠片】と呼ばれているのですが死因はその欠片たちと同様だったらしいのです。」
もし月光家の歴史に興味がありましたら屋敷にある図書室へどうぞ、と告げながら壱月さんは私に微笑んだ。
「…事情は分かった。でも月光家が選ぶような相手だって結局はその歴代の相手みたいに私達を裏切るかもしれないじゃない…!」
それに手が届かないと分かっていても私には好きな人が…
?「だからこそしっかり見極めて愛を育めるような相手を選べば良いんじゃん♪」
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