第5話【伝説】

車が停まった…どうやら到着したらしい。


「到着致しました。こちらへ。」


グラサン男が車のドアを開き、私を乗降させては屋敷の中へ案内する。

窓から見ても思ったけど土地も凄く広いし大きくて豪華すぎる建物…まるでヴェルサイユ宮殿みたい。


私は男達に囲まれて大旦那様とやらが居るという部屋に案内させられた。


「大旦那様、羽闇様をお迎え致しました。」


?「うむ、入るがよい。」


少し高めの老人の声…。


グラサン男が扉を開くと部屋の向こうには70後半〜80代前半位の小さい老人が椅子に座っていた。


?「お主が月光羽闇じゃな?」


「ええ、そうよ。貴方は大旦那様…とやらで間違いなかったかしら。」


?「如何にも。よく此処まで来てくれたな、我が孫よ。」


キッと睨みつける私に全く動じず無表情で歓迎の言葉を口にする。

…歓迎なんて1ミリも感じないけどね。


「勘違いしているのではないですか?私には親戚は誰も居ない。身寄りのない私を引き取ってくれたのは母の友人です。」


「…そう思っていても仕方が無いな。何故なら月光家との縁を切っていたのは―お前の母親と交わした契約じゃからな。」


「…は?」


お母さんとの契約…?

この人は一体何を言っているの?


「お前の持っているペンダント…それは少しある特殊な力を宿しており我が代々伝わる家宝でもあってな。もしその石が月白色と変色した時お前を【月の姫】として月光家に迎え入れる。そうお前の母親―月羽(つきは)との交わした契約じゃ。」


このペンダントが関係しているの…?


「その…なんでお母さんはそんな契約を?この家に迎え入れて貰えると何か良い事でもあるんですか?」


「【月の姫】として迎え入れて貰えればじゃがな。まず月光家の女達は25歳までに月の姫の力を発揮出来ない場合死に至る。それだけではない、周囲にいる月光家の者までもが感染したかの様に次々と死んでしまうのじゃ。」


そういえば…お母さんが死んだのも25歳だった。


「そして月羽は月の姫になれば自分も周囲も死なずにすむ―そう思いお前を宿した頃、私にこう言った。【自分が月の姫の力を発揮するまでは月光家とは縁を切る。但し自分か娘が月の力を発揮した場合には月の姫として月光家に迎え入れて欲しい】とな。」


「力を発揮…このペンダントの変色がその証だとでも?」


「間違いなくな、力を発揮した者はその石が月白色と染まる―そう代々伝わっている。さっきも言った様にそのペンダントは特殊な力を宿していてな…短命や感染死の呪いは解除され力を発揮した者は逆に長命となるらしい。そしてもう1つ―歌じゃ。」


歌…?


「月光家には歌も代々伝わる伝説があってな、歌で様々な能力を使う事が出来るらしい。月の姫の歌う歌は、ある時は相手の傷を癒す…またある時は相手に攻撃を食らわせる―等歌により様々な能力を発揮するとか。月の姫は月光家には200年に1度生まれるかどうかだから私は真実かどうかなどわからんがな。」


私は歌が大好きだ、将来は歌手になる事が夢と思う位。

お母さんも歌が大好きだった…。

そういえばペンダントの変色以降歌う機会がなかった…この人も真実かわからないって言ってるし本当にそんな力があるか少し試してみたさはある。

けどそれよりも―。


「力が発揮された以上月の姫に選ばれたという事は分かりました。話を戻しますが、この家に迎え入れられて私に良い事でもあるんですか?復縁は別に問題はありません。でも迎え入れるって…私もこの家に住むって事ですよね?」


「そうじゃ。月の姫の力を宿した者は花嫁として狙われやすい。その力を利用したい―そう思う者も多すぎるのじゃ。」


「でも200年に1度生まれるかどうかなんでしょ!?伝説って言われてる位なんだから今はそんな奴…」


?「これは裏情報ですが、既に羽闇様は狙われているようですよ。」


部屋の入口辺りから声が聞こえたので後ろを振り返るとそこには―執事服を身に纏った美しい男性が立っていた。

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