【月の婚約者】誰を選べばいいかわかりません!!

第2話【変色】

「おはよー」

「あ、羽闇おはよう。ねぇねぇ、あんた昨日告白されたんだって！？」

教室の扉を開けると私に気付き、腰くらいまである茶髪のポニーテールを揺らしながら駆け寄ってきたのは私の親友の1人―日向 向日葵（ひゅうが ひまわり）。

明るくて元気ハツラツ、背も高くナイスバディ（いわゆるボンキュッボンってやつ）、おまけにスポーツ万能で1年生なのに陸上部のエースとまで言われてる女の子。

実は女の子のファンが沢山いるとか何とか。

「ひまちゃん、落ち着いて。やみちゃん困ってるよ〜。おはよう、やみちゃん」

向日葵の後ろから駆け寄ってきたこの女の子は、もう1人の私の親友・望月 陽葉（もちづき ようは）。美しい銀髪は肩くらいまでありその後頭部には細い赤色のリボンを揺らしている。

おっとりとした性格で読書が趣味という一見地味な感じだが、思いやりがありしっかりとしていて男女問わず人気がある。演劇部と生徒会（会計）も両立しているのよ。

「陽葉もおはよ。てか2人とも何処でそんな情報を…」

「ふっふふ〜♪だって噂だもん。【月光羽闇があの2年の草原（そうばら）先輩を振った】ってね！」

…成る程。そういえば校舎が見えた辺りからやたら女子からの視線を感じた。

早く聞かせろと言わんばかりに楽しそうに圧をかけてくる向日葵。

「まぁ確かにお断りさせて貰ったのは確かだけど…何でそんな噂に…」

「結構モテる先輩だからだと思う。妬んでいる子もきっと多いと思うから私としては少し心配で…何かされたりしたら相談してね？」

「うん、ありがとね陽葉。」

女子の嫉妬は怖いからねー。

嬉しいハプニングっていうのを期待してたけどやっぱり何事も起きないと良いかな。平和が1番。

「でも何で断ったの？結構見た目も良い方だし性格もいい人って聞くよ？そういや羽闇から恋バナとか一度も聞いたことないし…恋愛に興味ないとか？」

「いや…実は…」

向日葵の問いに答えようとするが口にするだけでも緊張してしまうのか思う様に言葉が出ない。

でも理由はちゃんとあるのだ。

私が告白を断った理由は―…

？「月光さん、日向さん、望月さん。おはよう。」

「ほっ…！星宮君、おっ、おはよう…！」

…素っ頓狂な声になってしまった。

「おはー、ほっしー☆」

「おはよう、星宮君。」

私達が話に夢中で教室の入口前を塞いでいたものだから邪魔になっちゃったかな。

私達に挨拶を交わした檸檬髪の柔らかな髪を揺らした月草色の瞳の彼はニコニコと穏やかに笑って自分の席である窓際の席に向かいだす。

「（朝から星宮君に挨拶して貰えるなんて…！うぅやっぱ今日もカッコいいなぁ…！）」

私が草原先輩の告白を断った理由は2つある。

1つ目は【私のタイプではないから】。

2つ目の理由はこの人―【星宮 夜空（ほしみや よぞら）君の事が好きだから】だ。

星宮君は容姿端麗で頭脳明晰、陽葉同様おっとりとした穏やかな性格の持ち主で現役のモデルさんだったりする。

勿論、星宮君の事を好きなのは私だけではない―学園でも草原先輩の人気とは比べ物にならない位とてつもなく女子に人気でここ花咲紅（はなさきべに）学園では【学園の王子様】と呼ばれている。

毎日ファンの女の子たちに囲まれていて中々お近づきになれなかったりする。

ほら、今も。星宮君が席についた途端にあちこちから沢山女の子たちが駆け寄ってきた。

他のクラスの子まで…。

「いやー今日もキラキラだねーほっしーは！」

「あの笑顔癒されるよね〜、流石王子様。」

向日葵と陽葉は星宮君を恋愛対象としては見ていないらしく、【普通に目の保養になる星宮君】というような視線を彼に注いでいた。

私は星宮君の事を恋愛対象として見ているわけでいつもの様に星宮君を遠くから見ていると―

あれ…いつもより何だか…

「私お手洗い行ってくるね。」

星宮君を見てからのドキドキが止まらなく、私は教室を出て女子トイレへと駆け込んだ。

星宮君の事でドキドキしていたのはしょっちゅうあったのに今回は何故かいつもより心拍数がヤバい。

なんで…？

「ふぅ…大分落ち着いきた。あれ…？」

大分落ち着いてきて胸を撫で下ろすと首にかけているペンダントの異変に気付いた。

「石が光っている…？なんで…？」

石がぼんやりと白く光っているー

優しい…温かい光。

だんだんと光が失くなりはじめ、いつも通りの石に戻ったかと思いきや―私はまだ驚きを隠せないでいた。

美しい紫色だった石が―

月白色へと変色していたのだ。