第59話 地球観光初日
「さて、続いてどこに行くか……」
服屋でレイナとアンナの服を買った後、俺は腕を組んでそう言った。ちなみに二人の服は店員さんに見繕ってもらい、レイナはストリートっぽい服装、アンナは清楚っぽい服装になった。とても似合っていて、周囲からの視線はあまり減らなかった。俺の言葉にアンナは慣れない服装に少し戸惑いながらもこう言った。
「私はこの世界ならではのゲームができるところに行きたいぞ~」
アンナの言葉にレイナも同意するように頷いた。
「あー、確かにそれはいいですね! せっかくこっちに来たんですから、本場のゲームを楽しみたいところです!」
なるほど。それは一理ある。一番ゲームにハマっているのはレイナとアンナだからな。エルンはどちらかといえば温泉や映画も楽しんでるし、ロシュやサーラもゲームを楽しんでいるが、彼女たちはそもそもウチに来る頻度は二人ほど高くない。かなりの頻度でウチに来てゲームを楽しんでいるレイナとアンナには、こっちでしかできないようなゲームを楽しんでもらうのもありだろう。まあスキルを使えば向こうでも大抵のものは造れるのだが、その場の空気感までは再現できない。というわけで、ゲーセンがいいだろう。あの暗くて騒がしい感じまでは異世界では再現しにくいからな。
「よしっ! じゃあ秋葉原にでも行こう」
そして俺たちは再び電車に乗り、秋葉原まで。徐々に都心に近づくにつれ背の高くなっていく建物やその密集具合に二人ともとてもワクワクした様子だった。電車の窓から外を眺める瞳が完全にキラキラと輝いている。確かに俺の住んでいたところは首都圏ではあったが、かなり閑散としていたからな。この段階的に都会になっていく様子が、一層高揚感を引き立てるのだろう。
『次は秋葉原~秋葉原~。お降りの方は――』
アナウンスが流れ、俺はレイナたちに声を掛ける。
「次で降りるぞ」
「はーい」
「ようやくか~」
秋葉原に着く頃には少々疲れた様子の二人。まあ人も多くなっていくし、景色から見える情報量も相当多い。慣れていないと少し疲れてしまうのも仕方がない。しかも案外時間かかるしな。大体一時間くらいはかかった。異世界基準だと転移魔法を抜きにすればかなり早い方なのだが、あっちは一時間歩いても全く景色が変わらなかったりするし。この変化の中で一時間過ごすのも大変か。
しかし電気街出口から改札を出てラジ館前に降り立つと二人の疲れは完全に吹き飛び、再び瞳が輝きを放ち始める。運良く今日は平日であまり人が多くない。と言っても、相当多いけどね。二人はキョロキョロと背の高いビル群を見つめ、大々的にビルの壁に貼られている広告に興奮し、思わず口が開きっぱなしだった。
アンナは特に電光掲示板に興味を持ったのか、超巨大なディスプレイで動くアニメキャラを食い入るように見つめていた。俺はそんな二人が満足するまで見させてあげようかと思ったが、一向に動く気配がなかったので、仕方なく肩を叩いて言った。
「つい見てしまうのも分かるが、そろそろ移動しよう」
「おお~、そうだな~! その、ゲーセンとやらも楽しみになってきたぞ!」
「確かに相当長い間立ち止まってしまっていたかもしれません」
そして俺たちは歩き出し、近場のゲーセンへ。大通り沿いの一番大きなところに入る。基本的にゲーセンの一階はクレーンゲームが置いてあることが多いので、まずはそれを見て回ることに。
二人はクレーンゲームの景品に目を輝かせていた。ぬいぐるみやフィギュア、キャンディなど、色とりどりの景品が並んでいるのを見て、特にアンナは「これを取るのは簡単なのか?」と興味津々だった。
「よし、試してみようか」
俺はそう言って、クレーンゲームの機械に100円玉を入れた。
「これはボタンを押すだけでいいんだ」
「おお~、簡単そうだな!」
アンナがクレーンを操作し、見事にぬいぐるみをキャッチすると、二人は歓声を上げた。しかし、クレーンが上昇する途中でぬいぐるみが落ちてしまい、再挑戦することになった。
「くそ〜、落ちるなんて聞いてないぞ~!」
アンナは悔しそうにそう言い、再び挑戦する。何度か挑戦した後、ようやくぬいぐるみをゲットできた。
「取れた~!」
「すごいぞアンナ!」
レイナとアンナは大喜びし、次は音楽ゲームに挑戦することにした。ダンスマットの上で踊るリズムゲームへの挑戦だ。いわゆるダ○スダ○スレボ○ューションってやつだな。二人とも異世界人だから身体能力は日本人とは比べ物にならないと思うが、果たしてどうなることやら。早速コインを入れてプレイを開始する。
「これをこうやって、こうするのか~」
「なるほどなるほど。大体分かってきました」
二人は数回プレイをし、なんとなく感覚を掴んだみたいだ。早速難易度エキスパートを選択する。美少女たちが踊っているということで、たくさんの観客ができていた。観客といっても騒ぎ立てるわけではなく、腕を組み、こいつはできるのかという試すような視線で見られていた。しかし二人はそのことに気がつくことなく曲選択を終える。
「おおっ、なんと……」
「手すりも使わずに踊るなんて……」
異世界人としての身体能力を駆使してマーベラスを叩き出し続ける二人。それを見て思わず唸り声をあげる観客たち。そして二人はそのままフルコンプリートをしてしまった。
「ふむ、なかなかやるな……」
「ふむ、なかなかやるな……」
「ふむ、なかなかやるな……」
観客の音ゲーマーたちは満足げな表情をたたえ、みな同じような言葉を吐きながら自分のゲームへと戻っていった。どうやら二人はこのゲーセンの音ゲーマーたちに少しは認めてもらえたらしかった。
「いやぁ、楽しかったな~このゲーム!」
「なかなか面白いゲームがあるんですね!」
俺のところに戻ってきたアンナとレイナも満足そうだ。
「どうせ一週間あるんだし、まだやりたいならまた戻ってこよう。一旦、他の階のゲームも覗いてみるか」
というわけで、ひとまず音ゲーの階を離れ、今度はレースゲームのある階に足を運ぶのだった。
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