第57話 女神様のおはなし
「異世界、楽しんでますー?」
唐突に現れた女神様はにこやかな笑みを浮かべてそう聞いてきた。まだレイナたちに異世界人だと明言してないのだからいきなり秘密をぶっ込むのはやめて欲しい。まあ別世界の人間だって薄々勘づかれてるとは思うけど。でももしかしたらまだ『叡智の大英雄』的なやつだとまだ思ってくれてるかもしれないし。せっかくミスリードを誘ってたのに。
「いいじゃないですか、別に。みんなタケルさんがこの世界の住人じゃないって分かってますよ」
「……勝手に心を読まないでくれ、心を」
「またまたぁ。実はそこまで嫌がってないくせに~」
……確かにやましいことも無いし、心を読まれたところで別に嫌じゃない。逆に会話がはしょれて楽だとさえ思うくらいだ。だが一応ここは体面を気にして否定しておかないといけない気がしたのだ。
「とまぁ、そんなことはどうでも良くて! タケルさんの行いが神界で好評でして、この度ご褒美を差し上げることが決定したのです!」
「ご褒美? てか、俺何かした覚えないけど」
「転生させるとき言ったじゃないですか! タケルさんの魂はこの下位世界の発展を助けるために転生させるって」
確かにそんなこと言われたような。そう考えるとこっちに色々な文化を伝えてるから、発展を助けてるとも言えるのか……? 少なくとも神様たちはそう考えてくれたみたいだ。
「そうです! タケルさんの行いが少しづつこの世界を変えていっています!」
そう言われても実感はわかない。でも俺の適当な行動が世界を変えていってると言われると不思議な気分だった。
「てか、ご褒美って結局なんなんだ?」
「ああ、ご褒美ですよね! タケルさん、元の世界に帰りたいですか?」
元の世界? もしかして地球のことか? まあ少し帰りたいとも思うけど、そこまで執着はないかな~。ただみんなで地球に行けたら、それはそれで楽しいかもな。
「というわけで、皆さんで地球に旅行できるチケットをお送り致します! 是非、好きな時に使ってください!」
そう言ってこの場にいるみんなにチケットが配られた。おお、みんなで行けるのか! それなら楽しくなるかもな。
「それでは私はこれにて~。お花見、楽しんでくださいね~!」
そう言うと、再び辺りが光に包まれて女神様は消えていった。ポカンとしていたみんなみんながようやく再起動を始める。
「め、女神様ですか、あれ……」
「凄かったな~。神々しかったな~」
「妾、神と会ってしまったのだ!」
「ロシュ様。また自慢しすぎると、みんなから呆れられますよ」
「いっ、いいだろ少しくらいなら!」
「少しなら良いんですけどね」
「綺麗な人でした! 私のグラマラスボディもまだまだですね……!」
レイナ、アンナ、ロシュ、サーラ、エルンの順でそれぞれ反応していく。てか俺が異世界人だったことがカミングアウトされた訳だが、みんなそこには驚いてなさそうだった。……本気で以前から勘づかれてたみたいだな。まあいいか。別にそれで関係性が変わるわけでもあるまい。
「てか異世界いつ行きましょう?」
「そうだな~。早く行ってみたいけどな~」
「妾も早く行きたいのだ!」
「では近めで予定を決めましょうか」
レイナの問いにアンナとロシュが答える。みんな適応力高すぎない? てかすぐ行くの? 俺は構わないけどみんなは大丈夫なのだろうか? ……いや、無駄な心配かもしれないな。俺の家に来る時も大体唐突だし。
「じゃあ、異世界旅行の予定は後日決めるとして! 今日はもっと飲みましょう!」
こうして俺たちは満開の木々の下で夜まで飲み明かし、次の日には久しぶりの二日酔いを体験するのだった。
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