第46話 大人気のスイーツ店

「めちゃくちゃ並んでるね!」


 放課後、友人と大通りにやってきた。一つだけ異様に待機客が長蛇の列を成している店があり、それが噂のスイーツ店だと言うのが分かった。私はそれを見ただけでウンザリしてしまうが、友人は逆にワクワクしているみたいで、私の手を引っ張ると列に並んだ。


「ホントに並ぶの? 面倒なんだけど」

「せっかくここまできたんじゃん! 並ばない手はないよ!」

「そうかなぁ……? そこまで美味しいのかなぁ?」


 そもそもそのスイーツとやらが美味しい保証なんてないし、みんな浮かれて言ってるだけだと半信半疑の私は、この一時間は待たされそうな列に並ぶメリットがない。しかし現在は楽しそうなこの友人が、帰り道で不平不満を垂らし私に文句を言ってくるところまで想像して、ようやく溜飲を下す。


 そこで私は『ほらね、やっぱり美味しくなかったでしょ?』と言ってやるのだ。結局、第二王女様だろうが叡智の大賢者様だろうが、見せかけのハリボテに過ぎないはず。みんな意図的に持ち上げられた人物像に流されて無駄なお金を払っているに過ぎないのだ。


 そんなことを考えていたら、なんとなく元気が出てきた。この長蛇の列も並ぼうと思える。そのスイーツとやらを一口食べて、この世の中の闇を暴いてやろう。


「……なんか悪い顔してるけど大丈夫?」

「そんな悪い顔してるかな? 別にそんなつもりないけど」


 この世の中の闇を暴いてしまう自分を想像してクツクツと笑っていたら、友人が引き攣った表情でこちらを見ていた。そんな表情を向けられるのは少し不服だが、まあ彼女もすぐに手のひらを返す。今だけの辛抱だ。


「次のお客様~!」


 それから小一時間ほど、ようやく私たちが呼ばれた。店内に入ると、小綺麗に装飾された見た目で、雰囲気は良かった。案内された席に座り、メニュー表を眺める。


「何がいいのかな?」

「う~ん、私もわかんない!」


 私が尋ねるとそんな無責任な答えが返ってきた。仕方がないので、店員さんを呼ぶ。


「ええと、この店のおすすめって何かありますか?」

「おすすめですか? それでしたら、このパフェが一押しでございます」


 ほう、パフェか。確かにメニュー表にも店長である第二王女様リンが一押ししてると書いてある。それだったらこのパフェで見極めて見せようじゃないか。


「それじゃあパフェをお願いします」

「あっ、じゃあ私も!」


 友人も同じくパフェを頼み、十数分後、私たちの前にパフェというものが並んでいた。


「おおっ! なんか凄い綺麗だね!」

「……うん、そうだね」


 見た目は確かに凄い。色とりどりで存在感を放っている。匂いも甘い香りが漂ってきて、食欲をそそる。しかし問題は味だ。味が美味しくなければ結局見掛け倒しってことになる。


「じゃあいただきま〜す!」


 私が覚悟を決めている間に、ささっと友人がパフェを食べ始めた。彼女がパフェを口に含んだ瞬間、その瞳は大きく開き、今にも立ち上がりそうなくらい落ち着きを失った。


「な、何これ!? 美味しすぎる! やっぱり来て正解だったよ!」


 口の中のものを飲み込むと、友人はそう叫んだ。……本当かと思う反面、自分の説が揺らぎ始めて動揺してしまう。しかし私は自分の説を実証すべく、そのパフェとやらを口に運んで──。


「プイギュゥウウウウウ……」


 私は衝撃的に美味しすぎて、そのまま気を失ってしまうのだった。

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