第30話 もしかして:これがざまぁ?
「そもそも、こんな精巧なゴーレムを作れるはずがない! 何か仕掛けがあるはずだ!」
必死になってそう喚き散らすおっさん。う〜ん、困った。そこまで信じてもらいたいとは思わないが、ここまで頭越しに否定されるとちょっと凹む。そう思っていると俺の作った美少女メイドゴーレムがおっさんの前まで淡々とした表情で近づいた。
「なっ、何だね……」
「いえ、私がゴーレムだと信じられないみたいなので」
彼女はそう言うと、自分の頭を両手で挟んで。
——スポッ。
そのまま自分の頭を取り外した。
「ぎゃぁああああああああああああああ! あた、あた、頭が取れたぁああああああああああ!」
おっさんはそう叫びながら白目を剥いてぶっ倒れる。ええと……確かにメンテナンスがしやすいように関節部分は意図的に取り外せるようにしておいたんだけど、こんな使い方があるとは。これではどちらかといえばゴーレムよりかは妖怪とか幽霊の類だろう。
ひっくり返ったカエルみたいに両足をピクピクさせながら気絶しているおっさんは、カイトが呼び出した部下らしき人たちに引きずられてどこかに連れられていった。これから何をされるんだろうか。ナムナム。
「叡智の大賢者様」
それからカイトは俺の前まで来ると恭しく頭を下げてそう話しかけてきた。やっぱり俺は叡智の大賢者とやらになってしまったらしい。どうしたもんか、本当に違うんだけどな……。
「叡智の大賢者様、一つお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん、そう。ボクたちにご教授願いたいんだ。もちろん対価に対して相応の支払いはするよ」
ご教授か。その内容が何かにもよるが、そもそも教えられることって少ないと思うんだけど……。そう思っていたが続けて言われた言葉で俺は脱力してしまう。
「どうやらアンナによると、あのゲームで一番強いのは大賢者様らしいじゃないか。今度、うちの国で盛大に大会が行われるんだけど、ボクたちの顧問になってくれれば勝ち確だと思うんだ」
——って、ゲームかい! 思わず心の中で盛大に突っ込んでしまった。
「ええと、魔道具に関する話だと思ったんだけど……」
「ああ、魔道具も気になるけどね。それに関しては自分たちで模索するのが楽しいんじゃないか。それに今は魔道具よりもゲームだよ、ゲーム!」
前半と後半でだいぶ印象が違うが!? 魔道具に真摯に向き合っていると思ったら、ただゲームをやりたいだけにしか見えなくなったんだけど!?
「頼む! ボクたちと一緒にゲームをしてくれないか!?」
「そ、それくらいなら構わないけど……」
「やった! みんな、ボクはちゃんと成し遂げたぞ! これで優勝は決まったようなものだ!」
そして大盛り上がりを見せる学会の重鎮たち。……本当にこの国は大丈夫なのだろうか?
+++
——叡智の大賢者(本物)視点——
「……ハッ!? 危ない危ない、もう少しで睡眠時間が三百年目に突入するところだったわい」
地下深くにある遺跡のさらに奥。そこで叡智の大賢者と呼ばれていた老人が目を覚ました。彼は三百年もの間眠り続けていたが、ようやく起き上がると不思議そうに首を傾げた。
「ふむ……少し魔素に変化が見られるが……。これはどういうことかね?」
しかしその問いに答える人はいない。三百年も古い遺跡に篭り続けたのだ。周囲に人がいるわけなかった。それは寂しさゆえか、はたまたボケてしまっただけか、どちらにせよ客観的に見れば独り言をブツブツ言っているヤバめの人だった。
「しかし三百年も眠りにつけばやはり変化は起こるか。儂はそれを目論んで眠りについたのだからな」
誰に説明しているのか分からない言葉を発し、老人は遺跡のさらに奥に歩き出した。そこにはどうやら転移用の魔法陣があるらしく、それを使って外に出ようという魂胆らしい。
「楽しみじゃのぉ。どれだけ世界が進歩していて、儂の好奇心をどれだけ刺激してくれるか……ワクワクするわい」
自分の発している言葉がどれだけ酔狂か理解できていない老人は、気味悪い笑みを浮かべると魔法陣の上に立ち魔力を通した。すると一瞬で景色が切り替わり、地上へ出ることに成功する。それから老人は歳不相応の厨二臭い痛々しいセリフを時々口にしながら、一番近くの街——王都アルカナに足を伸ばそうとするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。