第22話 魔道具を作りますか

「さぁて、早速魔道具を作っていくぞぉ」


 俺はアンナ、レイナ、ベリアルを連れて少し離れたところに建てた小屋に来ていた。ここで基本的には魔道具を作ることにしている。と言っても魔道具は『クリエイト・マジックアイテム』で作るからこんな小屋を建てる必要なんてないんだが、気分を変えるためにわざわざ建てたのだ。俺は形から入るタイプだからな。


「おお、タケルさんの魔道具製作の真髄を見られるわけですね!」


 楽しそうにレイナが言う。全部勝手にやってくれるだけなので、真髄も何もないのだが。


「これは見逃せないぞ〜。少しでも見逃したら学会の人たちに怒られる……」


 アンナは不安そうに言った。学会か。やっぱりこの世界にもそういう組織があるみたいだ。アンナもそこの一員みたいな感じなんだろうな。でも勉強することなんてあるのかな?


「よっしゃあ! 俺専用の魔道具!」


 ガッツポーズを決め喜びの舞いを踊るベリアル君。こいつはただの馬鹿だろう。うん、気にしなくて結構。


 とまあ、そんなふうに三者三様の反応を見せながら俺の魔道具製作を楽しみにしてくれている。でもそんな凄いもんじゃないと思うので先に訂正しておいた。


「そんな期待すんなって。別に普通の光景だよ、多分」

「……そうなのか〜」


 疑惑の視線を向けてくるアンナ。いやいや、本当に普通だって。何でそんな信じてないみたいな顔するの。


「ま、まあ、早速始めるか」


 俺はそう言うと魔法スキル『クリエイト・マジックアイテム』のウィンドウを開いた。そこにはこれまで作ってきた数々の魔道具が一覧になって表示されている。俺はその中のネットワークアダプターを選択すると、必要な素材が表示され、全て揃っているのを確認し製作に入った。


 俺の手が勝手に動き始め机の上で魔法陣を描き始める。精密に素早く。


「な、何だあの早さ……」


 呆然とアンナが呟いているのが聞こえた。俺は体が全自動で動いているので、この間は反応できない。そのアンナの言葉にはレイナが反応していた。


「そんなに早いのですか?」

「あの速度は早いってもんじゃない。魔法陣を描くときは基本魔力を込めながらゆっくりと慎重に行うものだ。しかしあれはどう見ても何千年も同じ魔道具を描いてきたとしか思えない速度だ」

「そんななんですね……」


 感心したようにレイナは俺の方を見る。いやいや、何千年ってそんなことはないだろう。確かに全自動でやって貰っているが、もう少し早くならないかなぁって工夫しているところなんだぞ、まだ。


「やっぱり学会の人たちが言っていた『叡智の大賢者』というのは本当か〜……?」


 ボソッとアンナが呟いたがよく聞こえなかった。なんて言ったんだろう、ちょっと気になる。学会の人たちって単語はちょっと聞き取れたけど、内容はさっぱり想像つかん。


 と、そうこうしていると十分ほどで魔法陣を定着化させ、魔道具としての形を整え、完成した。


「ふぅ、完成したな」

「は、早すぎる……。しかしあれをああして、こうすれば私たちにも応用可能か〜……?」


 アンナは放心状態でそう呟いた。そんなもんなのかなぁ? でもレイナもベリアル君もそんな凄いことをしたみたいな反応はしてないけどなぁ。


「じゃあこれはベリアル君に渡すよ」

「おおっ! サンキュー!」


 メチャクチャ口元をニマニマさせながらベリアル君はそれを受け取った。そして彼もボソッと呟いた。


「ふふふっ、これでいつの日かはレイナに勝ち、そして——」


 言いながらクツクツと気持ちの悪い笑みを浮かべるベリアル君。……うん、やっぱり渡さないほうが良かったか?


 そんなこんなでみんなにゲーム機とネットワークアダプターが行き渡り、いつでも一緒に対戦ができるようになるのだった。

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