第14話 とある王子の事情
「くっそ〜! どうして勝てないんだ〜!」
「わん!」
現在、三人でコントローラーを握りしめてゲームをしていた。プレイしているのは前にもやったス◯ブラ風対戦ゲームだ。
ちなみにトキはアンナの膝の上が気に入ったのか、最近ずっとそこにいる。もちろん大きさは小さくなってもらっている。アンナがトキを最初に見た時は驚いていたが、もうすっかり慣れたみたいだ。
ゲームの方は既に数戦やっていたがアンナはいまだに一度も勝てていない。俺とレイナは結構練習したからな。当然といえば当然だった。
「まあまあ、これで簡単に勝たれても困りますからね」
なぜかドヤ顔でレイナは言う。彼女は帰ってから相当練習したみたいで、かなり強くなっていた。
「むう〜、ズルいぞレイナだけ」
「アンナにも貸してあげたじゃないですか。こっそり練習しておけば良かったのに」
「その時は、こんな面白いものだとは思わなかったんだ〜!」
悲鳴に近いアンナの声が響き渡る。それからムキになって何度もプレイしたが、ついぞアンナが勝つことはなかった。
それから一週間ほど、二人はゲームをしたり温泉に入ったりして楽しんでいたが、業務などが溜まってきているだろうということで、街に帰ることになった。
「一応、アンナにも渡しておくよ」
そう言って俺は彼女に転移用の指輪をあんなに手渡した。
「これは……?」
「転移用の魔道具だよ」
「ああ、レイナがここに来る時に使ったやつか〜。でもいいのか? 私にも渡しちゃって」
「もちろん。アンナも気が向いたらまた来てくれよな」
俺が頷いて言うと、彼女は嬉しそうに指輪をはめる。これならおもてなしは成功みたいだな。
「それじゃあまた〜」
「また来ますね、タケルさん」
そう言って二人は街に帰っていった。また寂しくなるな。次来るまでに何するかな〜。
+++
——第三王子ベリアル視点——
最近レイナが酷く冷たい。いつも冷たかったが、ここ最近は特にだ。
第三王子であるこの俺、ベリアル・アルカイアの求婚を毎回断り続ける時点で極刑ものなのだが、生憎レイナはS級冒険者である。しかも筆頭宮廷魔法使いのアンナと仲がいい。処罰するなんてできるわけなかった。
しかし前々から取り付く島がなかったが、最近はそもそも顔すら合わせてもらえない。挨拶すらおざなりになっている始末だ。
これは何かある、そう考えた俺はレイナの後を追って調査することにした。
そしてその後の調査で分かったのが、レイナとアンナの二人はレイナの家に篭り何かをやっているということだった。何をやっているのか分からないが、ほとんど丸一日篭りっきりの時もあるくらいだ。
レイナの家にはアンナの作った結界が張ってあるから中の様子までは分からない。音すらも届かないから一切の情報が入ってこなかった。
しかし一日中篭りっきりなのは異常だった。食事のために外に出たり、仕事だってしなければならないはず。まあ二人は相当稼いでいるはずなので、お金に困っているとは思えないが。
「何かあるぞ、絶対に何かある!」
そう確信した俺は、更なる調査に乗り出した。
運良くレイナが家から出てきたところにバッタリ遭遇した(ように見せている)俺は、彼女にジャブで求婚した。
「おっ、偶然だなレイナ。それで俺と結婚しないか?」
「うわっ。……はあ、今日は運が悪いですね。アンナにもとうとう負けてしまいましたし」
何だか落ち込んでいる様子のレイナ。しかし負けてしまった……? 何か勝負事でもしているのか。
「負けたって何にだ?」
「……あっ。いや、別に何でもないですよ」
しまった、という感じでレイナの表情が固まった。どうやら口を滑らせてしまったみたいだ。ってことは普通じゃない勝負のようだ。しかし一切想像がつかん。
「何だ、教えてくれないと凄いことになるぞ」
「凄いことって何ですか?」
「う〜んと、え〜っと、凄いことは凄いことだ!」
俺の言葉に心底馬鹿にするような視線を向けてくるレイナ。しかしふと何か思ったのか、何かを企むような表情になると彼女は言った。
「分かりました。何をしているのか教えましょう」
「本当か!?」
「ええ。しかし二つ条件があります」
条件。どんな条件をふっかけられるのか、思わず固唾を飲む。
「条件とは……一つ、絶対に外には口外しないこと」
「ああ、それくらいはもちろんだ。こう見えても俺は王族だからな」
「そして二つ目。この勝負事で貴方が勝てば私は貴方の求婚を受け入れます。しかし私が勝てば金輪際私に求婚しないでください」
……なるほど。そういうことか。それで俺からの求婚を回避しようという魂胆らしい。
「その勝負事の内容は?」
「それは勝負するってなったらお教えします」
マズイな。これはおそらく罠。受けてしまったら最後、ボコボコにされ、求婚できなくなってしまうかもしれない。
しかしッ! 俺は必ずレイナと結婚するんだ! ここで日和るような俺ではない!
「受ける。受けるぞ、俺はッ!!」
天に拳を掲げ、俺は言った。するとニヤリと笑みを浮かべてレイナは言った。
「それじゃあ三日後、うちにきてください。その時にどんな勝負かお教えします」
どんな勝負だろうと絶対に勝つ! そう心に決めて、俺はその三日間、ありとあらゆる特訓を続けるのだった。
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