第16話 蠍の毒
「久しぶりだな。こうして全員揃うのは。」
「スミス副隊長がいませんが……。」
交渉が成立し、囚われていた者達は全員開放された。
これまで反乱を起こされないように限られた者としか接することが出来なかった為、全員が久々に顔を合わせることが出来た。
「……それについては後で、だ。今は感覚を取り戻す事に集中しろ。」
と言っても長年の経験は簡単に忘れられるものではない。
今は、感覚を取り戻すため実弾装備での演習の準備中だ。
相手等はいないが一時的に演習場を借りている。
そして、勿論監視や盗聴もされている。
恐らく、鎮圧用の部隊も準備されている筈だ。
俺達がこの武器で反乱を起こそうものならすぐに鎮圧されるだろう。
「よし、では作戦を開始する。」
数時間後。
所定の訓練を終了し、再集結する。
「次は陣地防御の訓練だ。想定としては包囲されている状況で味方の救援が来るまで持ち堪える。といった感じだ。」
俺は土嚢が積まれた場所を指差す。
「既に陣地の用意は出来ている。一時間の休憩の後、訓練を再開する。」
さて、ここからが本題だ。
ここは俺達が囚われていた所から遠くない。
つまりは近くにティムがおり、今もこの状況を見ているのだろう。
後は知らせが来るのを待つのみだ。
すると、一羽の鳩が飛んでくる。
足には手紙が結ばれていた。
それを取り、読む。
「総員!状況開始!」
号令をかけると全員が即座に陣地防御の陣形を取る。
「射撃開始!」
そして、監視のカメラを撃ち抜き、盗聴器を捨て、壊す。
すると、間を置かずして即座に敵が現れる。
囲まれた。
が、攻撃はしてこない。
「どういうつもりだ!返答によっては……。」
が、その言葉を最後まで聞くことは無い。
俺は全員に敵は全て撃てと指示を出している。
そして、反撃が来る。
「くそっ!やっぱり裏があった!」
「畜生!裏切り者が!」
敵の声が聞こえる。
そもそも、
お前達の味方になったつもりは微塵もない。
そして、間を置かずしてヘリの音が聞こえてくる。
「隊長!ヘリです!」
「分かってる!」
敵の戦闘ヘリだ。
が、想定通り。
戦闘ヘリはこちらに銃口を向けない。
そのまま敵に対し射撃を開始する。
「助かった!」
『誘導する!付いて来い!』
すると、他にも数機のヘリが現れる。
全て味方である。
手筈通りだ
俺達は陣地を出る。
「総員付いて来い!スミスの、柏木の……仲間達の仇をとるぞ!蠍の毒を味あわせてやれ!」
ヘリの誘導の下、刑務所へ向かう。
あそこにはティムが、俺達の復讐相手がいる。
まずは奴を殺し、復讐を。
柏木の最後の依頼はそれからだ。
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