第15話 蜂起

「おい、聞いてるんだろ?」

 

 俺は朝飯を食いつつ喋る。

 どうせ盗聴されているのだ、確認する必要もないのだが。


「そろそろこの生活にも飽きた。協力してやる。」

「隊長!?」

 

 マイクも良い演技だ。

 前々から計画は進めていた。

 奴等に悟られぬよう慎重に進めていた。

 

「良いから、黙ってろ。」

 

 すると、足音が近付いてくる。

 聞いたことのない足音だ。

 

「……出ろ。」

 

 見たこともない人物に出るように指示される。

 

「た、隊長……。」

「任せろ。」

 

 心配するマイクを他所にその場を後にする。

 しかし、マイクにも役目がある。

 しっかり果たしてもらわねば。

 

「一体どういう事だ?」

「何がだ?」

 

 廊下を歩きつつ話す。

 見たことのない廊下だ。

 俺達は優遇され、ある程度の自由が利いていたがここは始めて見る。

 

「頑なに協力を拒んだお前が、何故だ。」

「……あの生活にも飽きたんだ。」

 

 そう話しつつ、周囲の情報を頭の中に入れていく。

 

「流石にあのAIも混乱しているぞ。」

「そうか。」

 

 やはり、こういう突飛な事はエラーを引き起こしやすいようだ。

 検証は済んだな。

 

「入れ。」

「……。」

 

 そう言われて、扉の中へ入る。

 そこは、司令部のようになっており、多くの者がヘッドホンに耳を傾けていた。

 俺達の部屋を聞いているやつもいるのだろう。

 俺を誘導したやつは椅子に座っている男の隣に立った。

 どうやら副官のようだ。

 

「ティム……。」

「久しぶりだな。と言っても俺はずっと見ていたが。」

 

 そこにはティムがいた。

 どうやら、ずっと監視していたらしい。

 

「趣味が悪いな。」

「まぁそう言うな。で、どういう心境の変化だ?」

 

 少し考える。

 慎重に言葉を選ばなければこの疑い深い男は騙せない。

 

「新聞で世界情勢は把握している。そろそろきな臭いんじゃないか?」

「……そうだな。その通りだ。」

 

 ここ数年のアメリカの行動は世界を恐怖に陥れていた。

 核抑止もあるお陰で大国同士の大規模な戦闘は、ほぼほぼ発生していない。

 中国が核を使おうとしたが、アイによる落下地点予測をアメリカが中国より早く公開したことにより、中国は核を使えなかった。

 だが、他国がアメリカの一強を許すわけはなく最近は何やら騒がしいようだ。

 アメリカも流石に複数国に対し軍事的圧力を強めることは難しく手を出せないでいた。

 ほぼ全ての民間軍事会社もアメリカにはつかいていない。

 そして、有力な国と契約することでアメリカの制裁を免れている。

 

「俺の依頼者は平和を望んでいた。どんな形であれそれが叶った今、それを崩させるわけには行かん。」

「そうか。」

 

 勿論、建前だ。

 なんとかこいつらに取り入らなければ作戦は成功しない。

 

「全員釈放しろ。全員で、全力でお前に協力してやる。」

「……分かった。」

 

 取り敢えず、これで良い。

 疑われているのは百も承知だ。

 だが、そんな事はどうでも良い。

 やってやる。

 柏木の最後の依頼を、仇を果たして見せる。

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