第12話 最悪の状況

「カイル!柏木は!?」

 

 俺は首を横に振る。

 応急処置も施したが、遺言を聞くことしか出来なかった。

 致命傷だった。

  

「そうか……。」

「ティムは?」

 

 俺が柏木の最後を看取っている間も、スミス達の追撃の音が聞こえていた。

 激しい銃撃戦場が繰り広げられていた事は想像がつくが結末はわからん。

 

「逃がした。予め用意されていたヘリでな。」

「……そうか。早急に部隊に召集をかけろ。ここを離脱する。」

 

 今活動している奴等で全員ではない。

 他に拠点もある。

 まだまだ仲間はいるのだ。

 

「カイル。これからどうするんだ?」

「……わからん。取り敢えず安全な場所に避難してから……。」

 

 そこまで喋り、不審な音に気付く。

 

「これは……ドローン!」

「ちっ!」

 

 音の方を向くと上空にドローンが飛んでいた。

 すぐさま腰から銃を引き抜き、撃つ。

 が、あの高さでは当たらない。

 

「まさか……。カイル!撤退だ!急げ!奴等は既にAIを……。」


 使っている。

 そう言いたかったのだろうが、その言葉が聞こえてくることは無かった。

 銃声が鳴り響く。

 

「……スミス?」

 

 スミスの居た所を見ると、頭が半分無い状態で倒れている死体があった。

 狙撃だ。

 

「隊長!囲まれ……。」

 

 部下の声に振り返る。

 が、そこにも先程と同じように同じような死体が倒れているだけであった。

 

「隊長!こっちです!」

 

 声のした方を見ると部下が物陰に隠れていた。

 このままここに突っ立っていても死ぬだけだ。

 俺は物陰に走り込んだ。

 

「どうなっている?」

「分かりません。奴等が逃げ、追撃部隊を編成していたらいつの間にか……。」

 

 奴等も俺達を制圧出来るだけの戦力を用意してきた筈だ。

 あの状況なら武力制圧されてもおかしくはない。

 だが、早すぎる。

 包囲の手際が良すぎるのだ。

 

「まさか……。」

「あのAIですか?」

 

 早速使われたのだろう。

 柏木から仔細を聞いているのだ。

 早速使われてもおかしくはない。

 

「どうしますか?このままでは全滅します。」

「……降伏だ。弾倉を抜き、銃を捨てろ。」

 

 部下は少し驚きつつも頷き物陰から言われた通りに投げた。

 無線で他の仲間にも連絡し、同様の行動を取るように指示した。

 すると、暫くすると銃撃は止んだ。

 

「総員。両手を上げて広場に集結だ。無駄な抵抗はせずに降伏する。良いか、命を無駄にするな。お前らにはまだ仕事が残ってる。」

 

 そのまま眼の前の広場に出て行く。

 次第に残っていた仲間も集まって来た。

 それと同時に俺達を包囲していた敵も現れ俺達を拘束し始めた。

 これで良い……。

 スミスの死体を横目にそう思う。

 これ以上仲間を失いたくは無い。

 それに、柏木の最後の依頼を果たすため、死ぬわけには行かないのだ。

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