第6話 新兵器

「初弾が着弾したな。」

「分かるんですか?」

 

 スミスがモニターを見ながら喋る。

 その様子が気になったのか、柏木がスミスのモニターを覗く。

 

「……これがあったら前進観測班のいる意味無いんじゃないてすか?」

「このカメラを持っていっているのはその前進観測班だ。」

「成る程。」

 

 通常カメラなどは持っていかないのだが、俺達の部隊は円滑な情報の交換の為使っている。

 無線、有線が死んだ場合の保険として持っていっていたが、途中からこっちのほうが楽だということに気付いた。

 

「ん?」

 

 すると、モニターが突如として砂嵐となり、通信が途絶した。

 

「着弾の衝撃か……。無線は生きてる。効力射の座標を伝えるぞ。」

「あぁ。頼む。」

「効力射?」

 

 柏木が疑問を頭に浮かべているのが分かる。

 

「砲兵は基本的に認識出来ない箇所から攻撃する。つまりはこちらからもどこに落ちたか分からないんだ。その為の前進観測班だ。」

「その前進観測班が弾着地を報告し、もう少し前だの後ろだのを俺達指揮所に伝える。それを聞いた俺達が砲班にそれを伝えるんだ。」

 

 スミスの説明に補足する。

 

「うーん……つまり、前進観測班が目で、ここの指揮所が脳、砲班が手みたいな感じですか?」

 

 柏木のその発言に俺とスミスは顔を見合わせた。

 

「成る程な。それが一番分かり易いかもな。」

「たまには素人目線からの話も聞いておいた方が良いかもな。スミス、今後の新隊員教育に組み込んでおけ。」

「そ、そんなに凄い事言いました?」

 

 そのまま効力射の情報を伝える。

 然程時間を置かずして砲声が鳴り響く。

 無線から弾着の報告が来る。

 そこで、弾着を映していたモニターが砂嵐となったことを思い出す。

 

「さて、砲班は既に陣地変換を行っている。問題は弾着が見えないということだ。昔ながらに無線でやり取りしても良いが、正直面倒臭いな。」

「……じゃああれ使うか。」

 

 俺は他の隊員に目で指示を出す。

 

「スミス。お前も今回アレを使いたかったんだろ?」

「ん?あぁ、まぁな。」

 

 やはり、使いたかったのか。

 だが、少し歯切れが悪い。

 

「アレってなんですか?」

 

 柏木の質問もご尤もだ。

 

「あぁ。付いて来い。」

 

 天幕の外にでると、そこには無人航空機があった。

 

「ドローン、UAV……てすか?」

「あぁ。最新鋭のな。」

「……はぁ。」

 

 初めて見るのか柏木は目を輝かせている。

 しかし、スミスの顔は暗い。

 

「これでまた暫くは貧乏生活を余儀なくされるな……。」

 

 成る程、それでか。

 

「だが、こいつの購入を決定したのはお前だぞ?」

「いや、人件費削減になるかと思ったんだが……。撃ち落とされることを考えたら人間はやはり必要だ……。」

「……ちょっと良いですか?」

 

 悲しむスミスをよそに柏木はパソコンとUAVをいじり始める。

 

「うん、行けそう。」

「おい、UAVに何をしたんだ?」

 

 スミスが聞く。

 こいつは恐らく壊していないか気になっているだけだろう。

 

「いえ、気にしないで下さい。」

「そうか?」

 

 まぁ、通常に使用するなら問題は無いのだろう。

 そろそろ陣地変換も終わりだ。

 さっさと飛ばすとしよう。

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