第7話 閃き

「……。」

「さっきからどうした?」

 

 柏木が先程から何か考え込んでいる。

 一通り戦闘の流れは見たのだ。

 実験を開始しても良い筈だ。

 

「これ、もう決着つきますよね?」

「……まぁな。味方の前線が崩壊してきている。俺達が出来るのは撤退を支援することくらいだな。勝利に持っていくのは酷しいだろ。」

 

 それを聞き、柏木は少し考える。

 

「これじゃあ実験なんて……。」

「まぁ、今からでも遅くは無いんじゃないか?やってみよう。」

 

 スミスの言葉を聞き、そそくさと柏木は動き始める。

 パソコンを開くと、何やら入力し始めた。

 すると、モニターには様々な情報が映りだされる。

 

「これは……。」

「この戦場のデータを入力しました。後はAIが最適な行動を示してくれるはずです。」

 

 すると、モニターに映し出された地図上に砲撃するように赤いマークで指示が出た。

 

「この通りにお願いします。」

「分かった。」

 

 これが最適かどうかは知らんが、こっちからも金を分捕らなければならない。

 従うとしよう。

 俺とスミスは指示を出していく。

 

「弾着。」

 

 スミスがドローンの映像を見ながら口を開く。

 

「今!」

 

 それと同時に弾着する。


「次はここです。」


 パソコンのモニターに再度別の座標が表示される。

 今度は敵の前線だ。


「カイル。別の依頼者からだ。」


 スミスから無線を受け取る。


『おい!早く支援砲撃を!このままじゃ全滅するぞ!』

「まぁ待て。」


 俺は気にせず実験を続けるように指示を出す。

 無線の向こうからは激しい銃撃の音が聞こえる。

 前線は崩壊寸前なのだ。

 当たり前だろう。


『ふざけるな!こっちは高い金払ってるんだぞ!』

「まぁ落ち着けって。」 

 

 スミスが指揮を取り準備を進める。

 

「準備完了だ!撃つぞ!」

「あぁ、やれ。」

 

 そして、砲撃が始まる。

 指定された弾数を撃ち終わり、モニターには再度別の座標が表示される。

 

『よ、良くやった!』

「……褒美は期待しておく。」

 

 実際既に契約金はもらっている。

 勝てれば更にもらう手筈だ。

 

「陣地変換は?」

「それも指示されます。でも、やりたいことがあるんですよね……。」

 

 すると、柏木が近付いてくる。

 その手にはパソコンが。

 

「私を砲班のところへ連れて行って下さい。」

「……正気か?」

 

 柏木は頷く。

 

「今はドローンが見た情報を元に最適な射撃場所、目標を判断してここに表示されてます。」

「それを俺達が砲班に伝えてるな。」

 

 スミスの言う通りだ。

 そして、柏木が何をしようとしてるのか分かった。

 

「成る程、砲班に直接指示が表示されるようにするのか?」

「カイルさんの言う通りです。つまり、指揮所の機能をこのAIに一任させます。」

 

 突拍子も無い事を言う。

 しかし、敵の砲撃が来ないところをみると、敵の砲兵も最初のAIの指示の砲撃で仕留めたのだろう。

 

「面白い。連れて行ってやる。スミス!俺が連れて行く間、指揮を任せる!」

「AIの指示はこちらに表示されるようにしておきます。」

「分かった!任せてくれ!」

 

 柏木と護衛を連れ、車に乗る。

 さて、面白くなってきたな。

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