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 流水で顔を洗う。こんなみっともなく泣いたままじゃあ、みんなの所に戻れない。顔を上げて鏡を見ると、涙でボロボロの私が居た。


 でも、笑ってる。嬉しさが溢れてきて、笑ってしまう。ニヤニヤと変な顔。


 私はずっと居場所が欲しかった。ここに居て良いんだよっって、誰かに言ってほしかった。認めてほしかった。


 居場所なんて、ここだって自分で決めればいいのは知っている。色々な歌詞やドラマの台詞でも聞いた。自己啓発本でも何回も読んだ。でも、弱い私は居場所の決定権を他人に委ねていた。


 だから、誰からも嫌われないように独りで頑張って、でもそんな器用でもなく、能力もない私は空回り。


 誰かに認めてほしいくせに、誰も傍に寄せ付けようとしない。なんて空虚な空回り。


 そんな私をシズナたちは認めてくれた。居場所をくれた。シズナは私にお礼を言っていたけど、本当にお礼を言いたいのはこちら。


 私はずっと居場所を探していたんだから。


 ……ずっと?


 自分の言葉に違和感を覚えた。


 ずっと、ずっと、いつから?


 今、私はシワシワの服を着ている。仕事に行けずに寝転がっていたから。昨日も、同じ。どうして昨日、私は仕事を休んで寝ていたの? 最後に仕事に行ったのはいつ? 今日は何月何日? 


 色々な疑問がブワッと溢れ出てきて、答えが見つからない。考えれば考えるほど、思考の纏まりが無くなっていくようで、ぼうっとしてしまう。


 私? 私は?


 ――ぴちょん


 ふいに洗面所の奥、浴室から水音が聞こえた。明かりがついていなくて、真っ暗な浴室。その扉がほんの隙間だけ開いている。


 そういえば、私はいつからお風呂に入っていないんだろう。


 心臓が嫌に早く動く。なぜだか恐ろしい何かが潜んでいるような予感がして、身体が震えてしまう。それなのに、開けなければいけないと、心の奥がざわめいている。

ううん。大丈夫。だって、幽霊や妖精や髪の伸びる人形とだって仲良くなれたんだから。もう何が出たって怖くない。


 恐る恐る、私は浴室の扉を開いた。

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