第39話 アルニルとアランの模擬戦 その1

「さ、始めましょう」


アルニルは強制的にアランとの模擬戦を行います。


「通常の模擬戦と一緒で参った言うか、立会人が負けと認めたラ終了ですが

はっきりいいますと、アラン君はわたしには勝てません。

この身体は前世よりも体力と力はありませんが、しなやかで身軽なのでむしろ動きは良くなっています」


アルニルはアランにこう言いますが、アランも事実なので何も言えません。


「なので、普通に模擬戦をしたらわたしの勝ちです。

しかし、それでは面白くありません。なので、わたしは手加減をしますので

わたしに一撃でも当てたアラン君の勝ちです。

ただ、アラン君が一撃も与えれれないとわたしが判断した時、容赦なく攻撃をしますのでよろしですか?」


アランは一瞬の沈黙の後


「はい、それで構いません」


と答えたのでありました。


「わかりました。では、始めてください」


立会人が初めの合図を出し、模擬戦が始まります。

アランは剣を構えますが、アルニルは剣を抜きません。


「アルニルさん、剣を抜かいなんていくら何でも余裕すぎませんか?」

「余裕なのは確かですが、アラン君から剣を抜かせる覇気がないからです」


アルニルはすまし顔で言いますが、アルニルが言うとおり

アランからは攻撃をする意思がない事は、わたしが見てもわかります。


「勝てないとわかっている相手ですからね」

「だとしても、ここまではっきりわかったらダメですよ。

ここのまでですと、魔族に簡単に殺されてしまいますね」


アルニルは首を横に振りますが、今のアランでは魔族と戦っても正直勝てません。


 魔族と言うのは魔王の部下であるので、魔族と呼ばれています。

本来の姿は人間と差異はあまりませんでしたが、自ら人間と区別するためと

異形の者という恐怖心与えるために角など尻尾などを付けた言われています。

ただ、元から肉体的にも魔力的にも人間を圧倒的に上回っていたそうです。


 どうあれまともに戦ったらアランは勝つところか、一瞬にして負ける可能性が高いです。

もっとも、アランでなくても人間が魔族と正面からぶつかり合ったら勝てません。

勝つには数で押すか、神に選ばれし者……つまり、神から力を与えれた者でないと勝ち目はありません。


 なので、アルニルに勝った所でアランが魔族に勝てると言う訳でありませんが

アルニルに勝てなければ、そもそも魔族と戦えないとも言えます。

あとアルニルもこれから旅をするのに、アランに自信を付けたいいともあると思います。


「フローラ様をお守りできるのならば、この身と命が無くなろうと構いません」

「騎士らしいを言いますが、魔族は1人でありませんから早々に居なくなっては困るのです」

「しかし、自分が居なくてもアルニルさんたちが居れば戦えますよね?」

「はっきりといいますが、わたしたちでも十分です。

しかし、フローラ様とイザベラがアラン君を選びましたかし、わずかでありますが

あのファーガスの血が流れている子孫ですから、ちょっとだけ楽しみなのです。

あ、楽しみなだけで、期待はしてないですけどね」


アルニルは意地悪そうに言いますが、その表情は少し楽し気ではあります。


「ここまで言われましたら、やるだけやってみます」

「といいますか、やってもらわないといけません」

「わかりました、では、行きます!」


アランはそう言って、剣を構えてアルニルに向かっていきますが

それと同時にアルニルが模擬の剣を抜きます。

アルニルが剣を抜いたと言う事は……そう言う事なのでしょうか。


 アランは剣を振り上げますが、その動きはあまりのも単調で大きなものなので

アルニルも動きをすぐに読み、簡単にかわします。


「先程も言いましたが、右重心がずれますので右側で踏み込むのがすぐにわかりますよ。

それに、左側が弱いので左に降ると剣がぶれています。

これでは剣の威力が落ちてしまいますよ」


アルニルは先程の指摘した点をアランにいいますが、言われたからと言ってすぐに改める事は出来ません。

ただ、右に重心がぶれる事によって右側の踏み込みは力強く、剣の振りも早いです。

そして、何度か剣を振っているうちに、予想以上に強い振りが来たため

アルニルはとっさに模擬の剣を抜いて、それを受け止めます。


「今のは思わず剣を抜いてしまいましたが、抜いてなかったら決着がついていましたね」


寸前のアルニルは剣を防ぎましたが、あのままアルニルが剣を抜かなければアランの勝ちでした。


「狙ったわけではないですが……アルニルさんに剣を抜かしただけでも褒めてくださいますか?」

「ここは正直に言わなくてもいいんですよ。嘘でも強がってください」

「す、すいません」

「あと、すぐに謝らない事です。敵に謝る方はいませんよ」

「わかりました!では、次こそは決めてみます」

「そうです、その意気ですよ」


アルニルそういって模擬の剣を抜きますが、その表情はとても楽しげでありました。

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