第40話 アルニルとアランの模擬戦 その2
「少しは楽しめそうですね」
アルニルは模擬の剣を構えこう言いますが、顔はかなり笑っています。
「アルニルさんにそう言われるとは、光栄です。では、また行きます!」
アランが再びアルニルに斬りかかりますが、アルニルはそれを簡単にいなします。
すると、アランは勢い余ってバランスを崩し、アルニルに背中を向けましたが
アランもすぐさま体勢を整えました。
「そのまま転ぶかと思いましたが、そうでもなかったですね」
「じゃじゃ馬を扱うせいか、バランス感覚はいいようです」
「そのようですね。その割に、重心がやや右に寄ってますが」
「それは……癖の様ですから」
「なるほど。その癖をなおすと、もっと良くなりそうですね」
「自分でも判ってはいますが、なかなかなおりませんね」
アランも癖はわかっていますが、なかなかなおせないようですね。
もっとも、すぐになおせたら指摘はされませんが。
ただ、まっすぐに立つ分には1本芯が通っているようには見えます。
あと、気性の荒い馬を乗りこなしているので、筋肉はしっかりついているようですね。
「癖は簡単になおりません。ただ、相手に気取られないようにできますかね」
「そうですか?」
「もちろん、訓練が必要になります……って、助言をしている場合ではありませんね」
アルニルは剣を構いなおしますが、助言もうっかりでなく故意だと思います。
「今度はこちらかです!」
アランが剣を構え直す前に、アルニルはアランに向かって行きますが
その動きはとても速く、アランが剣を構える暇もなく気づいた時には
アランの目の前に剣を横に振るアルニルが居ました。
「くっ!」
アランが反射的に身体を反りますが、身長差があるためこれが仇になり
模擬の剣はアランの首元に向かっていきます。
アランも片手でかなり強引に剣を逸らそうとしますが、模擬の剣でも
防具がない所に当たれば怪我をします。
流石に首元に当たっても首が飛ぶ事はもちろん、出血をする事もないとは
思いますが……模擬の剣でも重量は普通の剣と同じなので、打ち所が悪いと大変な事になるかもしれません。
出発まであと1週間、ここで怪我をしたら……と思いましたが、アルニルの模擬の剣は
アランに当たる寸前で止まりましたが、アランの方は勢いを抑える事が出来ずに
そのまま後ろに倒れてしまいました。
そして、アランの手から模擬の剣が落ち転がりました。
「待て!」
立会人が一度この場を止め、アランの様子を見ますが幸い鎧と兜が
あったのであまり問題はないようです。
ただ、それでも受け身をちゃんと取れなかったため、痛がってはいます。
「大丈夫かアラン?」
立会人が声を掛けますが
「ダメみたいです……」
と声を上げると
「アランは棄権とする!」
と言って、このままアルニルの勝ちなりました。
「スッキリしない終わり方ですが、楽しめましたよ」
アルニルはそう言って、アランの元により手を差しだしてアラン身を起こそうとします。
「受け身が取れてませんので、しばらくは立ちあがらない方が良いですよ」
「アルニルさん……ありがとうございます。しかし、情けない負け方ですね……」
「確かに情けないですが、楽しめましたよ。これで、一緒に旅が出来ます」
アルニルはそう言うと、満面の笑みを浮かべます。
「えーと……自分も同行しても良いのですか?」
「良いに決まってますよ。といいますか、いつ同行してはいけないと言いましたか?」
確かに、一言も模擬戦に負けたら同行差せないとは言っていませんね。
「確かに……そうですね」
「そんな事は一言も言ってません。ただ、背中はまだ任せられませんが」
アルニルはそう言うと、アランの兜をとると頭を撫でます。
「アルニルさん……やめてください、なんか恥ずかしいですよ」
「身体は22歳ですが、中身は300歳ぐらいですから」
「そんな答えにくい事を言わないでください」
「ま、実際に350歳のエルフがいますけどね」
アルニルはトリシャ様の事言いますが、アランも困っています。
「アルニル、アランからかうのはそれぐらいにた方が良いですよ」
放っておくとアルニルはアランをからかい続けるので、アランとを止めアランの元へ向かいます。
「すみません、アラン君はなんかからかいたくなるのついです」
「アルニル、アランは王女直属の騎士なので、からかってはいけません」
「わかりました」
「あと、アランは24歳でアルニルよりも一応は年上ですよ」
「あくまでも身体の話で、中身はわたしの方が年上ですけどね」
確かに中身に関してはアルニルの方が年上です。
するとわたしも……と思いましたが、わたしの魂は新しく作られたと
アルテイル様はおっしゃっていましたから、中身も年齢通りなのでしょうか。
記憶と知識があるものの、魂としては……ということになるのでしょうか。
考えてもよくわかりませんが。
「年齢の話はよしとしまて、アラン、旅の同行をお願いしますね」
「このような姿勢で無礼ですが、フローラ様、ありがとうございます」
「いえ、構いませんよ。出発までまだ時間がありますのでしっかり治してくださいね」
「これぐらいなら大丈夫です!」
アランはそう言って立ち上がりましたが、ふらついて立会人が慌てて支えました。
「アラン、フローラ様の御前だからって無理をするな」
「す、すみません……」
「アラン、無理をしないでください。では、わたしとアルニルはこれで失礼いたします」
「アラン君、もっと長く模擬戦をしたかったけど楽しかったですよ。
あと片付けはお願いがしますね。では、失礼します」
アルニルが頭を下げると、他の騎士も慌ててわたしたちを見送りました。
「アルニル、楽しんでいましたね」
「ええ、楽しかったです。ただ、あんな終わり方とは思いませんでした」
「確かに拍子抜けですが、アルニルの評価はどのようですか?」
「そうですね、まだまだ不合格です。ただ、わたしに剣を抜かせた事は合格です」
アルニルはニコニコしていいますが、確かにアルニルに剣を抜かせたことは合格ですね。
あと、アルニルには黙っておきますが、もしアランが剣を避けたらきっと……アルニルは負けていたでしょう。
体勢を崩しながらも、アランは片手で剣を振ろうとましたが、あのまま振っていましたら
アランの剣の軌道は確実にアルニルの胴体をとらえていたはずです。
ただ、結局は倒れてしまいましたが、アルニルもこの事に気付いたかわかりませんが
こんなに嬉しそうにしてるので、わたしは黙って置くことにしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます