第38話 アランの評価

わたしは先程の模擬戦の様子をアランに話します。


「先程の模擬戦の事ですが、気になった事がありますので話してもよろしいですか?」

「も、もちろんです。アルニルさんがどのように評価してか聞きたいです……」


アランはアルニルが話をすると思っていますので


「いえ、わたしがします」


と言いますと


「フローラ様がですか!?」


と驚いています。


「驚くのはわかりますが、わたしはファーガスの生まれ変わりですので

相手の剣の腕前や弱点などは見ればわかりますよ」

「そ、そうでした。大変失礼いたしました」


アランは跪いて謝罪をしますが、わたしは気にしてはいません。


「気にしていませんから、大丈夫です。それに、わたしは剣の腕自体はまったくですので

実際に剣を振る事は出来ませんが、助言は出来ますので」

「そうでしたが、ありがとうございます」

「お話をしますので、楽な姿勢でよろしですよ」

「わかりました」


アランは楽な姿勢で座り直しますと、わたくしの助言を聞きます。


「アランの剣は基本はしっかり出来ていまので、これについては言う事はありません」

「ありがとうございます」


アラン少し喜びます。


「ただ、基本は出来ていても重心が右にずれる癖がありません」

「わかりますか……」


「アランも自覚しているようですが、ずれると言ってもほんの僅かです。

しかし、そのほんの僅かなずれが影響し、剣の筋がぶれているのです」

「そこまでわかるのですが……」


「並の相手ならば問題ですが、少しでも経験を積んだ相手となりますと

それが癖と見破れ対応されてしまいます」

「確かに……先輩の騎士や隊長などは剣の筋に癖があり、単調とも言われます」


「また、少しでも押されますとすぐに引いてしまう所がありますが

これは引いた方が良い場合もありますので、すべて悪いとは言いません。

ただ、これ以上は無理だと思うと、戦うこと自体を辞めてしまいます。

これが一番、アランの悪い所です」


わたくしがそう言うと、アランは黙って頷きました。

アランは精神的に的に弱い所があるそうですが、実戦ではアルニルと戦い

精神的に弱い部分はでなかったのですが、訓練では命がかかっていないせいなのか

その精神的に弱い部分がはっきりと出ていました。


「自分でわかっていますが……」

「すぐに改めるのは難しいですが、実戦ではそうでもありませんでしたよね?」

「あの時はフローラ様をお守りすると言う任務がありましたし、アルニルさんと

戦える安心感と、自分も生き残るとため必死でした」


わたしへの忠誠とアルニルがいる安心感、そして単に必死だっただけですが

つまり集中が精神的な弱さを上回ればよいと言う事でしょうか。


「つまり、わたしに忠誠心があるという事ですね?」

「もちろんであります。フローラ様だけでなく国王陛下……いえ、この国に忠誠を誓ています」

「それを聞いて安心しました。直属の騎士にした者が王国を裏切らなくて良かったです」

「裏切り事はございません。もし、裏切るのでしたら前回の旅の時に寝首を切っています」

「そうですね、旅の途中はわたしは気を抜いていましたので、襲う所はいくらでもありからね」

「もちろん、そのような事はたいしません。フローラ様が自分を指名していたい抱いたので、この命果てよとフローラ様をお護りします」


この言葉を聞いて、やはりアランを直属の部下にしたのは正解ですね。


「この言葉を聞いてアランを直属の部下にしたのは正解でした」

「ありがたき幸せ」

「ただ、言葉だけでなく行動でも示さないといけません。

前回の旅である程度は示したのでが、これから本番ですから」

「も、もちろん、お役に立つようにします」

「期待をしていますが……やはり、もっと鍛えた方が良いですよね、アルニル」


わたしがアルニルに言いますと


「そうですね、模擬戦でわたしに1撃でも与えれるぐらいでないと

フローラ様が認めてもわたしが認めません」


と言いますが、これを聞いたアランは戸惑っています。


「あ、あの、アルニルさん、それは一体……」

「一緒に戦うのですから、信頼がないといけません。つまり、安心して背中を任せられると言うことと、わたしがフローラ様を裏切った時、わたしと戦えるかです」

「背中を任せられるはわかりますが……アルニルさんが裏切るとは思いません……」

「仮定の話です。魔族は魔法で精神を操りますので、わたしがもし精神を操られた時、わたしと戦い勝つ事が出来ないといけません」


「そ、その時は……トリシャ様の魔法で何とかできないのですか?」

「トリシャだって出来ないは事ありますし、エルフと魔族の魔法は違うらしいです。

ただ、トリシャの事ですからこのような状態になったら、容赦なく魔法で消し去るとは思いますが」

「……そうなのですね」


アランがトリシャ様がアルニルを魔法で消し去るとは信じていませんが

ファーガスがトリシャ様に『自分が魔族に操られて自我をなくしたどうするのか』

と聞いた時、トリシャ様は『魔法で肉片も残らないぐらい消し去るから安心して』

と答えていますので、アルニルが言う事は間違っていません。


「色々いましたが、要はわたしと模擬戦をして、勝てるぐらいでないと

フローラ様の騎士としてつまらないと言う事なので、これから模擬戦をしましょう」

「ほ、本当にするのでか!?」


アランは再び驚きますが、驚いているアランをしり目にあるには模擬戦の準備をし始めたのでありました。

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