第7話トリシャ

「まさか姫様だったとはね」


あたしは昼ごはんの野菜のスープを飲みながら、携帯魔石で魔術通信をみながらつぶやく。

今から1か月以上前に『ファーガスが生れ変わりが王都にいる』という夢をみて

150年ぶりぐらいに森をでて王都に向かってたけど、まさか姫様がファーガスの生まれ変わりとはね。

でも、ファーガスが女の子に生まれ変わるは嫌がりそうなんだけどな。

もしかしてたら、王様が勝手に言ってるかもね。


 あ、でも、姫様を危険な目に合わせるとも思わないから、本当にファーガスの生まれ変りなのかな。

姫様の姿は見た事ないけど、ファーガスをそのまま女の子になったような

筋肉モリモリな姫様だったらどうしよう。

しかも、魔王を倒した頃のファーガスみたく脳筋だったらいやだな~。


 あ、でも、そいえばこの前姫様が17歳になったとき魔術通信でやってたな。

筋肉モリモリじゃなくて、とってもかわいい姫様だったか。

あのファーガスが可愛い姫になったと思うと、笑っちゃうな。


あたしは周りがマオの復活や姫様がファーガスの生まれ変わりと

盛り上がってる中、ファーガスが可愛い姫様になったので1人ニコニコ笑ってるのだった。


――そして翌日


昨日、魔術通信を見た王都すぐ近くの宿場を朝早くでて、夕方に王都に到着。


「150年も経つと色々かわちゃったけど、王都も変わったな~」


150年も経つと王都も変わりすぎて、自分がどこいるのか全くわからないけど

王城だけは150年前と見えてる姿は同じ。

もっとも王都だけでなく、途中で寄った街も以前より大きくなってたし

150年前は小さな村だった所が、街になってから人間は150年で変わりすだよ。


「うーん、これからどうしよう」


王都が150年前と変わりすぎて、はっきり言えば迷子。

そして、エルフが王都に居るのは珍しいからみんな見てる。


「エルフがいるが……もしかして、トリシャ様ではないのか?」

「法衣を着ているから……トリシャ様なのか?」


あたしをみてひそひそ話してる人間の男たちがいるけど、着ていく服がないから

150年前にもらった法衣を引っ張り出したけど、法術がかかってるらしくて150年経っても

虫食いどろこか、糸のほつれも全くないから驚きだよ。

ただ、法衣を着ててもなぜかあたしって気づかれないけど

150年も森に引き込まってたから、あたしを知ってる人間がいないから仕方がないか


でも、法衣であたしと気づいてるみたいだから、あの人間の男2人に道案内でもしもらおう。


「我は勇者ファーガスと共に魔王を倒した魔法使いトリシャじゃ~」


男2人の前であたしがこう言うと


「エルフのお嬢ちゃん、俺たちがトリシャ様を見た事ないからってトリシャ様を語るのはだめだぞ」

「いや、我は本物のトリシャじゃ~」

「伝承ではトリシャ様は背が高くて出るとこが出て、締まるってる所が締まってる美女だ。

お嬢ちゃんみたく、背が低くてぺったんやないぞ」


ちょっとまって、あたしは150年前から背が低くてぺったんだけど。

というか、誰がそんな嘘を伝えたんだ。

しかし、この様子だとあたしが何を言っても駄目っぽいから仕方がない。


「人間のおじちゃん、ごめんさい。トリシャ様に憧れてて、初めて王都にいくから

トリシャ様が魔王退治の時に来ていた服をお母さんにつくってもらったの。

だから、ついついトリシャ様といっちゃったの」


自分でもよくこんな事が言えると思うが、この場は仕方がないかな。


「そうか、そうか。エルフでもやはりトリシャ様に憧れるんだ」

「だって、トリシャ様は偉大な魔王使いからね!」


あたしはニコっと笑うけど、自分で自分を偉大というのはこっぱずかしい。

というか、なんでこんな芝居をしてるんだろう、あたしは。


「俺たちにとっても、トリシャ様は偉大な魔王使いだ。

魔王を倒して勇者ファーガスと王都に凱旋したあとは、故郷の森に帰ったそうだけど、今どうしてるかお嬢ちゃんは知ってるか?」


目の前にいるよ!って言いたけど、さっきの様子から信じないだろうし。


「トリシャ様はエルフの森で誰と共も関わらず静かに暮らしてるよ」

「そうなのか。エルフは気難しいというからな」


本当は単に自堕落にのんびり暮らしてただなんだけどね。


「しかし、エルフが王都に来るなんて珍しい。森からも滅多に出てこないというが」

「トリシャ様に勇者ファーガスが生まれ変わった夢を見たけど、森から出られないから

魔力が強いあたしに確かめてきて欲しいって言われたの」

「そうか、そうだったのか。つまり、トリシャ様の後継者か!」


人間の男がそういうと、他の人間たちもこちらに来てあたしを囲む。


「トリシャ様の後継か!これは急いで王様に伝えないといけない!」

「そうだ!そうだ!」

「誰か衛兵でも役人でも良いから呼んできてくれ!」

「そういしたが、気づいたら人が集まって身動きが出来ないぞ……」


気づいたら、あたしと人間の男の周りには大勢の人が集まっていた。


「さすがトリシャ様、昨日ご神託があったと発表される前に後継者を王都に向けるとは!」

「トリシャ様が認めた後継者ならば、次の大魔法使いって事か」

「トリシャ!トリシャ!トリシャ!」


なんか人間たちが盛り上がってるけど、困ったどうしよう。

ただ、人間というのはこうなるとどうする事ができないから

あたしは人間たちに囲まれながら、ただただ愛想笑いをしているだけだった。

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