第6話 神託

学院で授業を受けていましたら、突然


「みなさん、これから国王陛下が魔術通信で重大な発表がありますのでお聞きになて下さい」


と校内魔術放送を使って学院長が告げたのでありました。


魔術通信というのは、魔術を使って遠くに姿や声を届ける魔術です。

どの国も使っている魔術でありますが、やや高度な魔術なので

他の国では限られた一部の層しか使っていません。

しかし、わが王国はお爺様が魔術の有用性をみいだして、平民にも

使用できるように尽力し、山奥の小さな集落にも魔術通信を使えるよう整備しました。


「フリーラ様、国王陛下が重大発表とはなんでしょう」

「なんでしょうね、わたくしもわかりません」


わたしは知らない振りしますが、アルテイル様の神託があったという発表でしょう。

魔術通信でお父様の発表が始まりましたが、話が長いです。

簡単にまとめますと、アルテイル様からのご神託があり

ファーガスの死後から200年、魔王マオが倒されて280年経ちましたので

マオが再び復活することとなるが、その復活の阻止はできない。

しかし、同時に勇者ファーガスも生まれか変りもいるので安心して欲しいということです。


『その勇者ファーガスの生まれ変わりは何を隠そう、我が娘フローラである!

フローラは女神アルテイルに力を授けれ、勇者として魔王と戦うのである!』


え、ちょっと待ってください、わたしは確かにファーガスの魂の一部が

ありますが、勇者の能力どころか剣の腕さえもありませんよ?


『しかし、ファーガスも1人で魔王マオを倒したのではなく、3人の仲間の協力があたったからだ。

その仲間もファーガスと共に生まれ変わり、既にこの世にいる。

その生まれ変わった仲間たちと、偉大なるエルフの魔法使いトリシャと共に

我が娘フローラは復活した魔王マオを倒すため再び手を取り合うのだ』


ファーガスの3人の仲間は戦士アンディ、エルフの魔法使いトリシャ、聖職者のダニエルですが

アンディもダニエルももちろん既に亡くなっています。

アンディの生まれ変わりはアルニルなので既に会っております。

エルフの魔法使いのトリシャ様は故郷のエルフの森で暮らしてるそうですが

ダニエルの生まれ変わりは聞いていませんし居場所がわかりません。

それに、マオはどこで復活するのでしょうか。


『魔王マオは西の山脈に復活する。

西の山脈はかつて魔族の住処であったが、魔王マオ討伐後は残党の魔族も討伐され平和であった。

しかし、すべてを討伐した訳でなく、生き残った魔族が魔王復活を機に再び活動を再開している。

情報では魔王城を再建が開始され、魔王の復活を待ち戦いの準備を始めている。

可愛い我が娘フローラを旅経たせるのは親としては辛いが、私はこの国王。

国の民を守るため、フローラを旅経つのを見送らなければならない。

旅たちの時はまだ未定であるが、その時が来たら皆で見送って欲しい。

私からは以上である』


お父様の発表が終わり、魔術通信が切れましたが、西の山脈はエルフの森のさらに先で馬車では行けない場所です。

それでもエルフの森まで馬車で1か月、そこから徒歩で1か月なので、2か月かかります。

ファーガスの時代は魔族や配下の魔物や沢山の砦がありましたので、

これらを突破しながら進んだため2年かかったそうです。

まだ旅たちの時は未定でありますが、旅立ったらマオを倒すまでは帰る事が出来ません。

そして、クラスの皆様の視線とアリスの視線がわたくしに注がれますが視線が痛いです……。


*******


発表の後はわたしがファーガスの生まれ変わりとわかって、学院は大騒ぎ。

一時は囲まれてあれこれ聞かれましたが、勇者の力がないとは言えず

まだまだ修行不足で発現してないと言って誤魔化したが……どうしたら良いのしょう。


 どこか人がいない場所にいって、アルテイル様と話したいのですが

学院内は先ほどの発表でわたしの姿を見かけますと、すぐ囲まれしまいます。

やっと解放されても、授業になりますので結局学院ではアルテイル様とお話が出来ず

城の自室で1人に慣れた時にやっと話ができました。


「アルテイル様、お父様にわたしが勇者の力がない事をお話したのですか?」


わたくしが聞きまと、アルテイル様は


『えーと、フローラがファーガスの生まれ変わりという事と

マオの復活場所とファーガスの3人の仲間の事だけだよ』

「ということは、わたしが勇者の力がない事はお話していないのですね?」

『だ、だって勇者の生まれ変わりだけど、勇者の力は持っていませんなんて言えないでしょ?』

「確かにそうですが……もっと言い方があったと思います」

『いかにもすごい力があるって言って、実はないですってなったら期待外れだし~』

「現時点でもかなり期待されていますが……」

『かなり盛り上がってたね~♪』


アルテイル様は楽し気にいいますが、勇者の力が使えると思われているこちらは辛いです。


「期待差ているこちらとしては困ります。それに、勇者の力を使えなのなら

マオと戦って勝てるのでしょうか?」

『大丈夫、そのためにファーガスの仲も生まれ変わったから。

性別は変わってるけど、力は前世と同じだから安心しね♪

それに、マオは王国軍でも倒せる相手だからなんとかなるよ~』

「それなら良いのですが……」


マオは王国軍の総力を上げれば勝てる相手なので、決して弱くはないのですが

わたし自身が勇者の力を使えなくても、仲間たちの力を使えば勝てるようです。


「ところで、ファーガスの仲間の事ですが、アンディとトリシャ様は居場所がわかっておりますが

もう1人のダニエルの生まれ変わりの方は、どこにいらっしゃるのですか?」

『あー、それなんだけど、居場所が掴めないんだよね』

「そうなのですか?」


アンディの生まれであるアルニルはアルテイル様から教えていただきましたし

トリシャ様はエルフの森に居る事がわかっています。

なので、ダニエルの生まれ変りもわかっていると思ったのですが

アルテイル様も居場所がわからないそうです。


『生まれ変わった後も21歳までは居場所がわかったんだけど、22歳になったら

突然居場所がわからなくなったんだ。勇者の仲間も神の加護があるから

居場所は常にわかるんだけど、突然わからなくなって困ってるんだ』

「そうなんですね。原因はわかりますか?」

『居場所がわからない原因は死んでる事が多いけど、死んだら魂が天界に来るから

わかるから、死んではないかも。あとは神の加護がなくなったか、何らかの形で

神の加護が届かない場所にいるかかな』


神の加護が無くなるのは、魔族に魂を売ったり魔族と契約した場合になるそうです。

ただ、魔族と接触すればわかるので、これはないと思われます。

そうなると、神の加護が届かない場所ですが、結界の中にいると届かないそうです。


『ダニエルクラスの聖職者になると、神の加護を遮断できるぐらいの結界が張れるからね。

だから、結界を張って修行でもしてるかな。掴めなくなったのはレンゼ山だからね』


レンゼ山とは聖職者と言いますか、修験者が籠って修行をする場所です。

山に籠って自然の厳しさをしりって己を鍛えるのと、神に近づくための修行だそうです。

そして、自らに試練や苦痛を与えるためあえて神の加護を遮断するそうです。

なので、修行中は神でさえ存在を掴む事が出来なくるそうです。


『レンゼ山自体、神の力が通りにくい場所かだから、ここに籠るとこちらから探しにくいんだ』

「そうなんですね」

『でも……でも、レンゼ山は女人禁制だから、入山出来ないはずだけどねー』


アルテイル様がこうおっしゃりますが、ダニエルの生まれ変わりも女性なのですね。

しかし、レンゼ山は女人禁制の修行の山。いくら修行のためと言っても女性は入山できません。

なのでレゼン山に行っても修行はできないのです。


『なんでだろうね。行って確かめるしかないかな。行ったのは1週間前だし』

「そんなに最近ですか?」

『うん。22歳になったのは1週間前だからね』


アルテイル様の言い方では、何年も居場所がわからないようでしたが、1週間前の事でした。

そういえば、レンゼ山の麓には温泉街があり、そこは女性ももちろん行けます。

その温泉は病気やケガに効果がありますし、疲労回復のために1~2週間ほど

休暇で行く事もあります。


「あの……もしかしたら、温泉に行ったのではないのでしょうか?」

『あ……』


アルテイル様はわたくしに言われて温泉にいった事に気づきました。


「もしかして、温泉に行ってた事を忘れていましかな」

『えーと、神様と言ってもプライベートまで見てはいないよ。

でも、休暇を取って温泉に行くって言ってたかもね、はははは~」


アルテイル様は笑って誤魔化しますが、やはり温泉に行った事を忘れてたようですね。


「忘れてたのですね?」

『ほ、ほら、マオの事もあって忙しかったからね。それに、さっきも言ったけど

レンゼ山麓の温泉街も神の加護が届きにくい場所だからね!』


アルテイル様はさらに誤魔化すよう力いっぱいにいいますか、居場所がわかり無事なら良いでしょう。


「居場所がわかり、無事ならば良いですよ」

『そうだよね。ダニエルの生まれ変わりは、イザベルって言うけどシスターなんだ。

王都の教会にいるからその内温泉から戻ってくるし、本人もダニエルの生まれ変わりと言う事はわかってるから、さっきの話を聞いて戻ってくるよ』

「なら良いのですが」


ダニエルの生まれ変わりであるイザベルは 王都の教会のシスターと言う事なので

こちらから出向くのはトリシャ様だけになりそうですが、エルフの森は

西の山脈への通り道なのでトリシャ様の元へは旅立った後に行けばよいでしょう。

なので、仲間探しはかなり楽なようですね。

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