職人の目はすごいです
店員とも協定を結んだところで俺のローブを観に行くことにする。だけど場所が分からなかった。恥ずかしいな。直前に気が付いてよかった。まだあの店員に聞くことができるからだ。
「それとマントというか、ローブのようなものはどこに売っているだろうか」
「それでしたらあちらになります」
「ありがとう。それではあの二人に合うものを頼むな」
「お任せください。お客様も何かございましたら遠慮なくお声がけください」
二人がどのような服を買うのかに興味があるが、それはまたのお楽しみということにして、自分の欲しいものを見に行く。ローブの色は派手ではないのがいいな。黒の単色だとな何だか痛々しくて嫌だし、だからと言って、派手な色合いも好きではない。暗い色合いのものを探すのが良いだろう。すると黒、青、紫とか濃い緑のあたりになるのかな。黒を基調としていて、少しだけ白色とか赤色とかが入っているようなものもいいかもしれない。何も単色にこだわる必要もないのだから。
「この辺か」
ローブのコーナーにはたくさん置いてあったが、全体的に暗めの色が多いようで、明るめの色合いは白色がメインのようだ。暗めのものについては黒を基調としたものが多い。黒ではない色を探していると、かなり濃いめの青のローブがあった。単色というわけではなくて、白のラインも入っているし、これならば中二病感も払拭できるだろう。これにしよう。冬には暖かいだろうし、それに中に短刀や小物を仕込んでおくことができるから便利だろう。
さて俺のローブはあっという間に決まったけど、二人はどんなものを選んでいるんだろう。会計はまとめたほうが面倒じゃないし、様子を見てみよう。
「どうだ決まったか?」
ルナとエレナの二人は店員と共に普段着を選んでいるようだった。店員の手にはネグリジェが何着かあったのでもう選んだということなのだろう。
「ご主人様!」
俺の声にはルナが気が付いてくれて振り向いてくれた。よく見ると、ルナも手に下着を持っていたので、そちらも、もう選び終わったということだろう。結構スピーディーに選んでいるようだ。
「エレナは結構選ぶのが早いんだな」
「それもあるんですけど、店員さんの持ってくる服が見事にエレナさんに似合っていて、即決という感じなんですよ」
「すごいなあの店員」
「本当にすごいです」
これが王都クオリティということなのか、あるいはこの店員が特殊能力を持っているだけなのか。俺的には後者のような気がしてならない。別に腕が確かならどうでもいいことであるのだが。
「エレナ、いいのは結構あったかな?」
「翔太か。そうだな、店員の勧めてくれるものに狂いがなくて驚いている。今は普段着を選んでいるのだが、これだけ決められなくてな。どちらがいいと思う?」
「そうだな……」
エレナが悩んでいたのは色合いのようだ。どちらもワンピースでデザインそれ自体に異なる点は特にない。これならば上に何か羽織れば冬でも着ることが出来るだろう。色はというと、白を基調とした明るい色か、それとも少し黒を多く含んだ、暗めの色か。このワンピ―ス、ルナと一緒に着たら姉妹みたいで似合うかもしれないな。実際に、エレナはルナのことを可愛がっているしいいかもしれない。いや今はそんなことではなくて、色か。色ね……、どちらも似合うものだから困る。服の値段を店員にこそっと聞いてみると、別に高くはない。
「迷っているなら両方買ってしまえばいいさ。気分によって色を変えればいい」
「それもそうか。なら両方頂くことにしよう」
「いいんじゃないか。それとルナはこういうワンピースは買わないのか? すごく似合うと思うんだけどど」
ルナにも買うことを促すが、私はいいと言ってきているので、店員に似合うワンピースを見繕うように頼んで強制的にお買い上げということにした。文句は言わないだろうし、あとで着てみるだろう。巫女装束もいいけど、それ以外の服だってあっていいのだ。だからメイド服があるわけで、そのレパートリーに一つ加わったにすぎない。
「水着はもう選んでいますので」
「そうか。感謝する。それからメイド服の方は……」
「そちらについては、採寸は出来ていますので、メイド服のカタログから指定を頂ければ数日で完成します」
やはりこの店員できるな。メイド服については俺は少しこだわりがある。メイド喫茶で出てくるようなミニスカメイドは基本的にメイドとしては認めていない。あれはメイドのコスプレにすぎないのだ。だから、ロングスカートのメイド服だけが正当なメイド服という思想の下、ルナのも買ったわけで、当然エレナのもそれにしてしまう。
「カタログについては会計の時に見せてくれ」
「かしこまりました」
服選び自体はもう大半が終わっていたので、ルナのワンピースを選んで会計するだけだった。店員が素早くルナに提示して、気に入っていたようなのでそれを買うことにする。
「ではお会計はこちらです」
少し高くつきそうだが、問題などない。このような可愛い服にお金を拠出できるのは幸せなことだ。俺の財布も喜んでいるに違いない。とは言っても、王都にいる間もそれなりには稼ぐ必要はありそうだな。
「二人は先に外で馬車に準備をしておいてくれ」
「分かった。あとは頼む」
「よろしくお願いします」
二人には馬車のことを口実にしてもらい、店の外に行ってももらう。これでカタログを気が付かれることなく、見ることができるのだ。
「さてどのメイド服にしましょうか?」
「そうだな……ロングスカートの、こんなやつはないか?」
言葉でいうよりも現物を見せたほうが速いと思い、アイテムボックスに入っているルナのメイド服を取り出して見せた。
「なるほど。このようなメイド服でしたらこちらになりますね。数種類ありますよ」
「ふむ……これで頼む。一番上品に見える」
「かしこまりました。では数日でしっかりと仕上げておきます。契約書の方だけ作成しますので少々お待ちください」
店員は奥に行って、書類を取り出してきた。そこに署名をしておけば完了だ。後は数日後に一人で取りにくれば完璧というわけだ。その時にエレナと二人で行って、そのまま着せて帰るのもいいかもしれない。妄想が捗っていかんな。
「では後は頼む。完璧な仕事を期待しているからな」
「おまかせください。最高の逸品を仕上げて見せます」
店員は胸を張った。これならば問題ないだろう。これで今日は宿屋を見つけて夕飯を食べれば終わりかな。そんなことを考えて店を出ると、馬車の準備はすっかり整っている。
「次は宿屋さんですかね」
「そうだな。ギルドで何件か教えてもらっているから行ってみようか」
「はい」
「ここからは近いのか?」
「ギルドからはそんなに離れていないと聞いたから、そこまで遠くはないだおう。それに馬車だからそこまで関係ないさ」
徒歩で移動するならともかく、今回は馬車を使っているので距離は気にしていない。もちろんギルドから遠いか近いかは気にしているけども。
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