王都はすごいです
ルナは息を飲んでいるし、エレナも驚愕と言った具合だ。俺もこれだけ街を流れる水路がの水が綺麗だとは思わなかった。水の都という冠がふさわしい都市だな。
「ここまではとは思わなかった。筆舌に尽くし難いというのはこういう光景のことを言うんだろうな」
「そうですね。すごいとしか言いようがないです。他の言葉が浮かんでいきませんよ」
「エレナに至っては完全に固まっているからな」
周囲を見渡すでもなく、巨大な城の尖塔だけを見ている。何か城に思い入れでもあるのだろうか。
「大丈夫かエレナ」
「あ、ああ、いやあの尖塔がすごく大きくてな。王都の宮殿はもう少し異なるものを想像していたからギャップに驚いたんだ」
「綺麗な城だもんな」
「まったくだ。離れたここからでも本当に綺麗で、優雅で雄大な至上の城だと思うよ」
同意見だ。俺的には尖塔のある城のイメージではなかった。ヴェルサイユ宮殿のようなまさしく『宮殿』というような建物を想像していたのだ。尖塔があるというと、何だか軍事的な要塞も兼ねているものと認識している。なので、もしかするとこの都市全体が軍事的にも効果があるように設計されているのかしれないな。何だか面白そうだ。街の中を散策していれば、何か見つけることができるかもしれない。一人の時にでもやってみよう。
門を入ってすぐにある広場でずっと立ち止まっているわけにもいかないから、そろそろ行かないと。
「二人ともそろそろ行こうか。ギルドに行って、エレナの冒険者登録をしないと」
「そうか、そうだな。私が望んでいることだからな」
エレナも尖塔から目をようやく離して俺の方に目を向けた。
「ここからギルドは近いんですか?」
「そういえば場所が分からないな。ちょっと門で聞いてくる」
うっかりしていた。場所も分からないのにどうやってギルドに行けばいいんだ。まったくもう、恥ずかしい。門の衛兵は嫌な顔一つせずに教えてくれた。これで場所が分かったから何とかなる。というか、非常に分かりやすい位置にあるようだ。
「聞いてきたよ。この道の通りにあるみたいで、ひときわ大きい建物だとのことだ。そこまで歩くことはないと言っていたから、進めば分かるんじゃないかな」
「ざっくりとした説明ではあるが、このまっすぐ進むだけなら確かに分かりやすいのか。特徴などもないのか?」
「大きいということ以外には言っていなかったな」
大きいとかいう、単純な伝え方をするくらいだから、それが最大の特徴とも言えるだろう。ギルドの建物だし、この王国内のギルドの統括をしているわけだから小さいなんてこともあり得ない、前にいた街のも大規模だったが、それ以上であることは間違いないだろう。ありえないけど、高層ビルのギルドがあっても驚かないぞ。
とりあえず、そのわずかな手掛かりをもとにして道を進んでいくと、大通りということもあってか人通りも多くて活気がある。よく見ると冒険者のような恰好をした者も沢山歩いていた。店も多いしこれは楽しめそうだ。
「色々なものが買えそうですね」
「ルナは何か買いたいものとかある?」
店も多いのでルナの欲しいモノはきっとあるだろうから、この答えは今度何かプレゼントをするときの参考にしたい。
「そうですね……今は思い浮かばないです。でも、また欲しくなるものがあるかもしれないですね。ご主人様が紹介状をもらったお店の系列店にも行ってみたいですし」
「紹介状って……ああ、そういうことか。機会があったら行ってみよう。せっかく紹介状を書いてくれているわけだから行かないと失礼になるし」
奴隷商の系列店ということはそういうことだ。年齢制限待ったなしのショップに行きたいと言っているのだ。確かに折を見て奴隷商に行くべきなのは当然だけど、それに付随するものをエレナがいる前で言うかね。どこまでも純粋な変態だ。俺も人のことをまったく言えないけど。だからエレナにはまともであってほしいと願うばかりである。もちろん一時的な関係とも言えるし、そのようなことをする間柄でもないので、ルナとの遊びをエレナの前ですることなど、絶対にない。したら俺が恥ずかしくて憤死してしまう。
「楽しみにしてますからね、ご主人様」
ルナによる期待の眼差しが眩しくてしかたがない。
「二人とも何の話をしているんだ」
幸いにもエレナにはまったく伝わっていないようだ。今ので理解されたらそれはそれで恐怖体験だけど。
「いや何てことはないよ。前に奴隷商で王都にも支店があるってこと紹介状をもらったから礼儀的にも行っておかないとなと思って話をしていただけ」
「確かにそれは落ち着いたら足を運んだほうがいいな」
エレナについてはこれで誤魔化すことが出来ただろう。あとはギルドの建物を探すだけだが……。
「おい、あれじゃないか?」
エレナが御者台から指さしたのは確かに一際大きな建物だ。
「まあ、これだろうな。明らかに大きいとか言っていたから」
高さもあるし、間口も周囲の建物の数倍ではきかないす、奥も大分広がっていそうだ。それに高さだって、4階ではきかなさそうだからかなり大きいと言える。ギルドの影響力の大きさがこれだけでもうかがい知れるな。馬車を適当なところに停めておく。あとで置き場所とかを聞かないといけないが、今はこれでいいだろう。
馬車を降りて、建物を改めて見てみると圧倒的に大きいことがよくわかる。出入り口からは冒険者や商人たちが出入りしている。
「入ってみよう。明らかに冒険者ギルドだし」
「そうか。では先に行ってくれ」
エレナは若干ビビっているようで、腰が引けているので俺とルナで先に入った。
「大きいな」
「あの町の何倍も広いですよ」
受付の数も多いし、横に目をやって依頼の張ってあるボードを見れば、そこにはってある紙の枚数も桁が違う。大都市ってすごいな。とりあえず、今はエレナの冒険者登録をしていい宿屋のことも教えてもらわないと。
「ここにいるエレナの冒険者登録をしたのだが」
「かしこまりました。ではこちらに記入をお願いします。お二人はよろしいのですか?」
「俺たちは登録をしている。登録をしていないのはそこで記入をしているエレナだけなんだ」
受付嬢はかしこまりましたといって作業を進める。街の受付嬢よりも淡白で事務的な感じがする。これくらいでないと王都ではやっていけないということなのか。
「問題ありません。登録は完了となります。こちらがギルドカードになります。冒険者の仕組みなどについて説明はいたしますか?」
「いや良い。俺の方から伝えておくから」
「かしこまりました。それではお二人のギルドカードもお願いします」
なぜかを聞いてみると、ランクに応じた依頼の斡旋を行う関係で把握しておきたいのだという。
「翔太さんの方は高ランクだったのですね。それにご活躍は伝わっております。王都でご活躍を期待します。それからルナさんは、特例でギルド登録をされたのですね。あなた方のパーティーは当ギルドでもすぐにトップ層になれると思いますので頑張ってください。こちらに来ていただければ依頼の斡旋もさせていただきますので」
やはり王都という冒険者の数が多い場所であっても高ランクの冒険者として扱われるらしい。それになんだかこの前の戦闘が伝わっているようだ。面はゆいし、どう伝わっているのか気になる。
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