夜はとっても長いです

「さあルナ、俺の手、握ってくれよ」

「動かせないですよ」


 ルナに無茶振りをしてみる。これ以上動けない中で、俺をもっと見てほしかったけど、鎖に阻まれている。ああ、その抵抗しようとしても何もできない姿、なんて官能的なんだろう。


この景色は、今ここで起こっている出来事は俺だけのものだ。誰にも渡したくないし見せたくもない。ただひたすらに独占したいのだ。


「ご主人様、まだ私に着けていないのありますよね。それも、お願いします」


 ルナには手枷を後ろ手で付けて、首輪には鎖をつけて、その先は俺の手の中にある。この前は部屋に固定したが、そんなつまらないこと、ここではしない。俺が持って、その動きを直接制限する。楽しくて、興奮して頭がどうかしてしまいそうだ。


 ルナの拘束に付け足すことが今の手持ちでできるのは足枷だけだ。もっと道具があれば色々と遊べるのかもしれないが、今は持っていない。


クソッ、すぐにでも並べたいけど仕方がない。絶対に買い足そう。これは俺とルナが健全な遊びを楽しくして行く上での義務に等しいな。


「お願いするならもっと態度があるだろう?」


 ルナに強要してみる。これでどうやってお願いしてくれるのかな。


「ご、ご主人様、いけない奴隷の私にどうか足枷をもつけて教育してくださいませんか?」

「承った。ルナのこと、この一晩、きちんと教育してあげよう」

「ありがとうございます。この足にしっかりと嵌めてください。よろしくお願いします」


遜って半ば土下座のような形になっている。手こそ使えていないが、服従させている感じがあって堪らない。


普通に過ごしている時には、こういったアブノーマルなことをするのは難しいのでルナをこの意味合いで屈服させることができるのは快楽でしかない。



 足枷を持って、丁寧に装着する。これでルナは自由に走り回ることも出来ない状態になった。これで俺が何かしても足を使った抵抗もすることはできなくなった。


「全然動けません」

「ルナは淫乱な子だな。こんな姿にされて興奮するなんて」

「ご主人様もです。私をこんな格好にして喜んでいるなんて、本当にすっごい変態なんですね」


 そう、俺たち二人は変態でしかない。でもやめられないんだこれがな。この欲望を満たすために、何か密室が欲しいかもしれないな。


「もっと乱暴にしてください。ご主人様ぁ」


 シチュエーションをルナの方から指定してきた。どうしてくれるんだ、俺のオレは暴発してしまうかもしれないのだぞ。これは俺にも縛りは必要かもしれないな。そういうグッズあるだろうこの世界にも。


「そんなにぐちゃぐちゃにしてほしいならやってやるよ。俺は今日だけは狼になる」


 手に持っている鎖を思い切り引っ張り、ルナの顔を思い切り近づける。ひゃっという声を上げていたが、そんな声出したって止めないぞ。ルナは耳をしおれさせているが、尻尾は正直でわなわなと動いている。ふさふさの尻尾だ。これだけ感情が豊かなことは分かるけど、その尻尾を動かしている頭の中を覗いきこんで今の気落ちを直接知りたい。


 だが、ルナの顔をずっと近づけておくのは俺の精神衛生上よろしくない。暴れてしまうからだ。そして乱雑に扱うという趣旨の下それで立ち上がらせてベッドの上に押し倒した。鎖のじゃらじゃらという音とルナの嬌声が楽器となって部屋に響きわたる。


しかしながら、その嬌声を恥ずかしがっているのか、抑えめな声量から織りなされている。そんな喘ぎを出しているルナの声帯はこの世のどんなものにも負けることのない最高の楽器だ。


 ルナを仰向けにしてその首輪から伸びる鎖を持って視線をこちらに向かせて、俺はルナの身体にまたがった。ルナの積極的な姿勢と共に、そのどこか恐怖におののいている姿は二面性を感じさせる。


その恐怖の感情がなくなることは喜ばしいことだが、こういう時のふとした表情を見られなくなるのは残念だ。というか痛みでもそうなるなら、奴隷紋の威力をもう少し調整してこういったことに使えるようには出来ないのだろうか。あとで奴隷商に聞いてみよう。


 ここからどうしようか。こんなところで童貞である弊害がでてしまうなんて。いい雰囲気ってなんだろう。手探りでやっていくしかないのか……

 少し考える間にもルナの期待に沿えるように、というか俺がやりたかったから、わき腹に手を当てていく。そして指でつーっとお腹をなぞる。


「ああぁ、ご主人様くすぐ、ったい、んっ……」

「ルナはここが気持ちいんだな」

「やめ、……」

「やめないよ。ルナが乱暴にしてほしいって言ったんだから。それにこれはすごく優しくさわっているよ」

「優し過ぎるんです……。もっといいですよ」


 ルナはもっといいらしい。でもこのいいというのはもっと違う意味で言っているのだろうが、俺はここでヤるつもりはない。そういうことにはもっとちゃんと味わいたい。こんなよくわからん状況に流されてやっていいことじゃない。


「だーめ。それはもっと違うときにしたいかな。今日は俺がルナをいじめる日なんだよ。だからルナのお願いはあんまり聞きたくない」

「そ、そんなぁ」


 ルナに焦らしプレイをしていく。これだけでも楽しい。ルナも表情は柔らかいし、なんだかんだ楽しんでいるだろう。というか、楽しんでいないとこんなことしないと、望むこともないだろう。


「お願いはまた今度な」

「絶対にですか」


 涙目になって聞いてくる。


「絶対だよ。俺は約束を破らないんだ」

「その言葉忘れないでくださいね」


 ルナに言質を取られてしまった。でも、いい言質なのかもしれない。


「ルナ!」


 手に持つ鎖をベッドに放り投げてルナのことを優しく抱きしめる。少し困惑したルナも手で俺のことを抱擁したいようだが、後ろ手に拘束されているのでできずにもどかしそうだ。


「これからもずっと一緒だ」

「そうですね」


 まだまだ夜は長い。

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