夜は遊ばないといけません

「王都ってどんなところなんだろうな」

「私も行ったことないので分からないですけど、きっとすごくキラキラしているんじゃないかなって思います」

「だといいな」


 大都市ほど、キラキラしている部分があることは事実だが、それは一部でしかないという現実がある。これは人間が社会を作って暮らしている以上、変わらないだろう。まして、この国は、身分社会でもあるんだ。キラキラしている、おとぎ話に出てくるような世界を見られはしないだろう。でも楽しめることはいっぱいあると思うから期待が膨らむのは変わらないが、あえてルナにそのようなことを言って、夢や憧れを壊してしまうのは酷というものだろう。


「王都には何で移動するんですか? 魔法、ではないでしょうし、徒歩か馬車になると思いますが、どっちを使うんですか」

「あー、そうかそれも考えないといけないのか。徒歩でもいいのかもしれないけど、時間もかかるし馬車を使ってもいいかもしれないな。ほかにいい手段があればいいんだけどなあ」


 俺にその手の知識があれば車とかそういったのも作れるのかもしれないけど、生憎と俺にそんな能力はない。チートでそういうのを簡単に作れる能力をもらっておけばよかったと今になって思う。今この生活が出来ていることに関しては神様に感謝しなくてはいけないが、もう少し冷静になって選べばよかったとこういう時には思ってしまうのはいけないことなのだろうか。心の中で神様に聞いてみるが、当然返事はない。あったら逆にびっくりする。神様の声が地上でも聞こえるというのなら性別を偽っても聖女になれるかもしれない。


 移動手段か……どうしよう。


「そこらへんはゆっくりと考えよう。でも馬車が有力かな。明日、馬車も観に行って、それで気に入ったのがあれば馬車で行って、泣ければ徒歩で行こう。荷物自体は俺のアイテムボックスもあるし問題なく運べるだろうし」

「どちらにしてものんびりとした移動になりそうですね」

「そうやってのんびりと移動するのも旅感があっていいじゃないか。さ、そろそろ部屋に戻ろう」


 夕飯も食べ終わっていたし、いつまでも食堂にいたのでは宿屋のオヤジに申し訳ない。オヤジに美味かったと礼を言って、ルナと部屋に戻った。風呂にはもう入ってるので、あとは寝るだけだが、何もないというのに、簡単には寝かせないぞルナよ。


「ご主人様、私とっても寂しいんです。そろそろ我慢できないかもしれません」

「俺を襲うつもりかな。それならこっちだって相応の態度をとらないといけないけど」

「私は何も言っていませんよ。ただ寂しいって言っているだけじゃないですか」


 何をしようか考えていたら、ルナの方から何か仕掛けようとしているな。これは俺もそれに乗じてみるか。この前みたいにルナの奴隷紋が発動したら興ざめだから、発動しない程度には気を付けないとな。


「それで寂しいって俺はどうしたらルナの寂しさを解消できるのかな」


 ルナはどういうことをしたいのかな。楽しみでしかたない。ブツはもう手元に用意している。これも何か面白いそうなもの明日に買いたそうかな。そういうショップがあるのかは定かじゃないけど、最悪奴隷商でも売っているだろう。


「ご主人様ぁ、私をここに縛り付けて肌のぬくもりをください」

「ほう。そんなことでいいのか? ルナはそれだけで満足なのか?」


 ルナは顔を赤くしている。いや、ここにきて恥ずかしがることないだろう。そもそも自分から縛ってくださいなんて顔赤くして、主人にお願いしている奴隷という時点で大分すごい癖だからな。


「その、きつくしてください」


 ルナはきつくしてほしいらしいが、それはダメだ。だって、俺の嗜好から逸れてしまうから。俺は基本的に縄よりも枷の方が甘美な拘束であると認識している。


「ダメだよ。縄なんて君には似合わない。だから今日は違う感じにしてあげる」

「そ、そんなこと言って私のことどうするつもりなんですか……」


 耳元でささやく。ルナの耳は一瞬ピンと立ち上がって、すぐにしおれた。顔を近づけたら分かるが、ルナからはすごくいい匂いがする。いつまでも嗅いでいたい。でも永遠にできないことは分かっている。ならせめて一夜でも。


「どうもしない。ただ二人で気持ちいいことするだけ」

「だからそれが何かと聞いているんです。やっぱりご主人様は変態さんですね」

「ルナだって同じなんだ」


 そろそろお互い、頭の中が溶けてきている。やっぱり雰囲気って大事だ。


「さあ、そこにあるのを俺に取ってくれないか」

「……はい。私、これからどうなっちゃうんでしょう」

「そんなこと聞く割には嬉しそうだな」

「わざわざ言わないでください。私、すっごく胸が高鳴っているんですよ」


 ルナは俺に静かに様々なものを渡した。出してあったのを持ってくるように言ったのだ。いつもは手を前にしているが、今日は趣を変える。


「さあ、手を出して。縄じゃないけど、ルナの望み通りにきつくしてあげるから」


 ルナはゆっくりと手を俺の前に差し出す。やはり前で拘束されるものと思っているらしい。


「今日は変えよう」

「え?」


 ルナの右腕をもって枷をつけ、それを後ろに回して、左手にも枷をつけて後ろ手で固定する。ルナの困惑した表情がたまらなくいい。鎖も短くしているし、これで縄とまではいかないが動くことは難しいだろう。


「どうだ、ぜんぜん動けないだろう」

「すごい。全然後ろになっただけでこんなに動かせないんですね。私、後ろで手枷つけられるの初めてかもしれないです。初めてはご主人様です」

「それは光栄だね」


 ある意味ではルナの処女を奪ったと言えなくもないのか。


「ああ、綺麗だよルナ」

「ご主人様もかっこいいです」


 ルナが輝いている。それに後ろ手に拘束している手枷には鎖をつけて少し動かせるようにしている。鎖のない手枷もあるがそれは前につけるからこそ映えるのだ。後ろ手は短い鎖がついていて、可動域がなければダメだ。それ以外はあまり認めたくない。


「ありがとうルナ。すごく嬉しいよ」


 ルナの目はトロンとしてきているが、まだまだ夜は長いのだ。さらには明日は休日だしこれだけで済ませるつもりなど毛頭ない。

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