第10話 初めてみる姿
お昼休憩が終わり、言葉通りガンガン外回りをした。
「株式会社Sultanの河口と申します。」
私は事務職だったので、営業の仕事でハキハキと喋っている巽の頼もしさに思わず息を呑んだ。
(身内目だからかもだけど、めちゃくちゃカッコいい…。)
コツっと肩で促されるまで見惚れてた私は、ハッとなって挨拶をする。
その後はホントにあっという間だった。
資料を見ながら説明していく姿や、終わった後にニコニコと顧客と談笑する姿や、寄り添う姿に惚れ直すだけで1日が終わった気がした。
(…あたいの彼氏サイコー。)
浮気疑惑はさておき、どんな世代の人にも好かれている彼氏を見るのは正直めちゃくちゃ嬉しい。
(人たらし過ぎて怖い。)
目的が鑑賞にすり変わりつつあることにようやく気付き、我に返った。
「戻りましたー。」
「どうだった?」
「既存は3社プラン通りで大丈夫そうです。新規は2社獲得しました!」
「いいじゃないか~。よきよき。」
(社長に誉められている…。)
頑張ってたのは知ってたけど、ここまでとは…と感心通り越して呆気に取られて開いた口が塞がらないでいた。
(ここから、何があってん。)
「いぇーい。」
「後は案を制作にまわすだけね。」
「うちらに任せろ。」
(フツーに仲いいじゃん…。)
こっちが混乱して、訳が分からなくなってきた。
結末を知っている私はただ今の状況に混乱するしかない。
「…戻りましたぁ~。」
(あ、田中さん。)
ちょっと不機嫌そうな予感を察知して、周りの空気が少し変わった。巽や他の人も察したように自分の机に戻って作業をし始める。
(お茶…準備しなきゃ。)
私もそそくさと何かしようと動いたとき、巽から手を掴まれて(机に戻れ)と目配せをされる。
「…おぉ、田中どうだった?」
「…いや、もうダメダメですよ…。どいつもコイツも我が儘ばっかで「これは通せ」「こんな広告で目につく分けねぇだろ」って言いたい放題…」
「…まぁ、そういう所ばっかだよウチは。なんせ出来たばっかの子会社だし、Webやらアプリの制作やってる所なんて何処もシビアだって!」
(田中さん、荒れてるなー。)
「お前は良くやってる」「一番頑張ってるのはお前だって全員知ってるから」と繰り返し、社長は田中さんを慰め励ましていた。
私は少しその光景が必死に機嫌を取っているようにも見えた。
「…間宮さん、ちょっと来れる?」
「…あ、はい…。」
ただただ眺める事しか出来ない私に見かねた女性の先輩社員が声をかけてテラスに連れ出してくれた。
そこで、私は1つ疑問に思っていた事を聞き出すことが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます