第3話 違和感


あの夜を乗り越え、なんとか仕事を終えて、クタクタになりながら3日分の食料が入ったエコバッグを引きずるように歩いた。


(はぁー…職場の人に何て言おう。)


盛大に祝って貰いながら、婚約破棄で、実は男に略奪された。なんて言えるわけがない。


精神的なストレスもあるし、仕事の疲れもあり、人目も気にせずパンプスをかかとで踏んで歩いた。


(案外、普通に仕事に行けたもんだな。)


頭をぶつけた後の事は正直覚えてない。


目が覚めると普通にベッドに寝ていて、若干足首を捻ったせいで痛いくらいだった。


(…あ、そういえば今日、何年か前にやったプレゼンをまたする事になったり、エアコンも古かったような…。


…頭をぶつけたせいで、ちょっと可笑しくなったんだろう。)


楽観的に考えて、気持ちを切り替えることにした。


(よし、今日はやけ食いするぞー!!)


パンッパンに菓子袋も詰まったもう1つの袋とビールも箱で買った私のメンタルは完全に夜更かしコースを欲していた。


お菓子やらアイスやらビールやらを大量に口に詰め込んで、ワンピースみたいに口を大きく開いて大声で泣いてやるんだ。


そう決心し、翌日のむくみを覚悟して部屋の扉を開けた。


「あ、花柰(かな)ー!お帰りなさい!」


お茶目に振り返った私の婚約者(元)に思いっきり菓子袋が詰まったエコバッグを投げた時、私は人間を越えた。


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