第2話 二人してコミュ障 そして始まり


偏見は無いつもりだが、浮気相手?が男だったからか割りと冷静だった。


というか、(お前、夜中に何してん)という感情しかなかった。

てか、ホントにどういうテンションで見ればいいのよ、これ。


ジリジリと気付かれないように距離を近付ける。


「…た、巽?」


後ろ姿でも分かる見覚えのある髪色と夜でも分かるプリン加減…間違いなく、巽だ。


「あっ。なっ…えっ!???」


ジャリっという音に驚くように振り返った元?婚約者。


(壊れかけのロボットかよ、。)


キョドり過ぎてロボットみたいにガチャンガチャン動く男は、今まで見た中で一番死ぬほど情けなかった。


(ここは、私が一言バシッと言っちゃる。)


そう決心して、口を開けた瞬間に浮気相手かもしれない男の顔面を見て時が止まった。


(……え、くそイケメンじゃん。)


どう見てもハイスペックそうなイケメン君を見て怯んだが、ここで止まるわけにはいかねぇ。


謎の使命感で突っ走る私。


「……にゃにしてじゃっ……よぉ……。」


「あっ…。」


(序盤で噛んだんだけどぉ!!…なにこの激ダサカップル!!穴があったら入りたぃっ…、!!)


しばらく沈黙が流れて、静まり返る空間に冷や汗が出た。


チラッと顔をイケメンからそらすと、気まずそうに婚約者(元)が俯いたので何となくイラッとして、顔の下から覗き込むように睨み付ける。


(…てか、おめーも釣られて「あっ」て言うな気まずいだろ!!ふざけんな!恥ずかしいだろ!!)


付き合いは長いので、大体のテレパシーは伝わってるはず。


案の定、私の思っている事を視線で瞬時に理解した巽はビチッと体が固まった。


(ボク等はいつも以心伝心⭐…じゃねぇのよほんとに!)



「…………あっえっと……帰るね(?)」


流石に空気に耐えきれず、逃げようと後ずさると、急に視界が反転した。


…ちょっとした段差があったらしい。


(今日ほど、恥ずかしくて惨めな日はないや…)


スローモーションのようにこれまでの思い出を振り返った。


ゆっくりと流れる時間のなかで、受け身を取るとこを諦めた私は全てを受け入れて着陸態勢に入る。


気分は下妻で主人公が軽トラにひかれて、回想にふけっているシーンと同じ気持ちだ。


(さようなら、イケメンさん。

さようなら、くそヒモニート)


ドサッ


「……えぇぇ。」


引き気味のリアクションにイライラしつつ、駆け寄る巽は私の後頭部を支えて血の気を引いた。


ドロリとした感触が頭からでも分かったが、この期に及んでなんで私が血を出して、アイツが血の気引いてんだよ。逆だろ、フツー。お前がダセ、フツーにと思うとイラットシタ。


てか、浮気相手なんでここまでノーリアクションなの、、。


そんな事を考えながら、私は意識を手放した。








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