時をかけるアラサー
@66yy000
第1話 そんな事ある?
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頭を打った後に広がる鈍い痛みと、視界に入る彼氏と謎のイケメン。
泣き叫び私の手を握る彼氏と、その"彼氏"の肩を寄せ"彼氏"に寄り添うイケメン。
(え、何これ?)
この日の事を私は一生忘れない。
ーーーー
ほぼ朝に近い深夜、この日は会社の飲み会で死にかけだった。
いつも何かと理由を付けて断っていたが、この日はどうしても参加しないといけなかった。
…なぜなら、この飲み会は結婚を控えた私を祝う為だったからだ。
その証拠に私の肩には「本日の主役」のたすきが掛かったまま。
ちょいちょい見られたが、もうそんなのどうでもいいくらいに疲れていた。
(今日も疲れたな~…。)
クタクタになりながらも、(今頃心配してるのかな?)と同居している彼氏(婚約者)の顔が頭を過った。
(そういえば、ライン返してないや…。)
スマホを取り出すと、案の定心配のLINE。
(今頃、「マテ」状態の子犬みたいな顔して待ってるんだろうな~。)
なんだが罰の悪い気持ちになって、家に帰る足を早めた時…
「うわ、あれホモじゃね!?」
「…きっしょー!!」
耳障りなモスキート音に顔を歪めながら、チンパンジー達の指を指した方向を見ると公園で男同士が抱き合っていた。
意味深な光景に一瞬BL漫画が過って見入ってしまったが、すぐに目線はさっきのチンパンジーに移った。
(てか、こいつら制服じゃん。)
明らかに高校生だった事に気付き、
テメーらのがやべぇだろ。
深夜に何してんねん。
親心配してるだろ、早く帰れ。
と脳内をフル回転させてツッコミまくった。
「あぁなると人生終わりだよなw」
「ホモとか人権ねぇだろ。
…てか、お前もホモじゃね?」
どうしてあの年頃の男は馬鹿なんだろ。
疲れていた脳みそに3年分のストレスが堪ってタメ息が出た。
笑いながら去っていくゲテモノ達の非常識な言葉に他人ながらイライラした。
ついでに後退った片割れの襟足が長めのガキから、パンプスをガッツリ踏まれ謝られなかったことも2倍イライラした。
(あのくそみたいな生命体の60年後が、パチンカスであります様に…。)
(バチが当たれ。パチだけに。)と訳の分からない事を願い、止めていた足を進めた時、私は違和感を覚えて再び足を止めた。
(あの鞄って…。)
公園の男達に目線を戻すと、最初にチラッと視界に入った鞄がどうしても気になってしまう。
(やっぱり、巽(たつみ)の鞄に似てる…。)
半信半疑になりながら、そんな事はないと祈った。
酔いとさっきのイライラが一気に冷めて、パーっと顔色が青色に変わった気がした。
キラッと光って微かに見えたイニシャルの刺繍は間違えようがない。
私が巽の誕生日の日に追加で入れて貰った物だった。
「まじかぁー。」
力なく呟いて、ポトッと何か落としてしまった。
(あ、ケーキ…。)
今日は遅くなったからと機嫌取りで買ってきた駅前のケーキの箱がベコッと潰れた。
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