第8話 陽翔とアオ
(何がどーしてこんなことになったんだっけ?)
勉強も大事だけれど、睡眠も大事だ。
きちんと七時間は眠ろうとしたのだけれど、夢見が悪かったせいか途中で目が覚めてしまい、寝ようとしたけれど眠れなくて、ベランダに出て頭を冷やして、いたはず、なのだけれど。
(もしかしてまだ夢の中、なのか?)
そうだそうに違いない。
陽翔は納得した。
夢でなければ、あのモデルと一緒に公園の砂場に佇んでいるはずがない。
あのモデルがせっせと砂で何かを作っているはずがない。
(また変な夢を見ているな。安眠について調べなければいけないな)
しかし、妙に現実感のある夢だな。
夜の冷たく澄んだ空気も。
砂の冷たさも粒々した感触も。
数多くの星々がきらめくとてもきれいなはずなのにぼやけて見える夜空も。
(うわ。風がないのに寒い)
陽翔が寒さを耐え忍ぼうと両腕をさすろうとした時だった。
モデルが言ったのだ。
一緒にこれ、壊すぞ。
明かりがないのに、その凶悪な顔が見えたことにげんなりしつつ、モデルが指さす方向へと視線を向けると、そこには砂の山があった。
「おら。やれ」
「やりませんよ」
「………わかった」
引き下がるのが早いなもっと粘ると思っていたのに、流石は自分の夢だと安心していると。
「は?」
浮遊感に襲われたと思ったら、足が地面から離れていることに気づいて、次に身体がぶらぶら前後に大きく揺れるなと思ったら。
「はあ?」
空がやけに近いなと思った。
風が吹いたなと思った。
飛んでいるなと思った。
落ちているなと思った。
落ちたと思った。
背中から砂の山へと。
「どうだ?壊した気分は?」
見下ろしてくるモデルの凶悪な笑顔を逆さに見た陽翔は、イカレているとモデルに一言飛ばして、意識を失ったのであった。
(2023.10.27)
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